当該裁判所の公判廷における被告の人自白は、憲法第三八条第三項の「本人の自白」にあたらないことは当裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一六八号、同年七月二九日大法廷判決、同年(れ)第四五四号同二四年四月六日大法廷判決、同二三年(れ)第一五四四号同二四年四月二〇日大法廷判決参照)従つて、原判決が原審公判廷における被告人の自白のみによつて、原判示第一の犯罪事実を認定したことを以て、所論の如く、違法であるとすることはできない。又、当該裁判所の公判廷における供述を以つて、公判廷外における被告人の自白の補強証拠となし得ることも、また、既に当裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一七四四号昭和二五年一〇月一一日大法廷判決、昭和二四年(れ)第八二九号昭和二五年一一月二九日大法廷判決参照)従つて、原判決が原審公判廷における被告人の判示のごとき供述と、所論司法警察官に対する被告人の自白とを綜合して、判示第二の事実を認定したことを以つて所論のような違法ありとすることはできない。
一 一、当該裁判所の公判廷における自白は憲法第三八条第三項の「本人の自白」にあたらない 二 一、当該裁判所の公判廷における供述は公判廷外における自白の補強証拠となる
憲法38条3項,刑訴応急措置法10条3項
判旨
裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項の「本人の自白」には当たらない。また、公判廷における供述は、公判廷外での自白に対する補強証拠となり得る。
問題の所在(論点)
1. 公判廷における自白のみによる有罪認定は、憲法38条3項(自白のみによる有罪禁止)に違反するか。 2. 公判廷における供述を、公判廷外の自白に対する補強証拠(刑事訴訟法319条2項等)とすることができるか。
規範
1. 憲法38条3項にいう「本人の自白」とは、裁判外(公判廷外)における自白を指し、裁判官の面前でなされる公判廷での自白はこれに含まれない。したがって、公判廷の自白のみで有罪を認定しても同条に違反しない。 2. 公判廷における被告人の供述は、それ自体が直接の証拠となるだけでなく、公判廷外でなされた自白(司法警察官に対する自白等)に対する補強証拠として用いることもできる。
事件番号: 昭和22(れ)14 / 裁判年月日: 昭和23年2月12日 / 結論: 棄却
一 判決における證據摘示の有無は判決書の全面にわたりこれを索むべく必ずしもいわゆる證據説明の部分に限定すべきでない。 二 公判廷における被告人の自白は、憲法第三八條第三項及び刑訴應急措置法第一〇條第三項の自白に含まれない。(なお、公判廷における自白について、裁判官齊藤悠輔の補足意見がある)
重要事実
被告人は窃盗等の罪に問われたが、原審において、犯罪事実の一部については原審公判廷における被告人の自白のみによって認定された。また、他の犯罪事実については、公判廷外(司法警察官に対するもの)での自白と、公判廷での被告人の供述とを総合して事実が認定された。被告人側は、公判廷の自白のみによる有罪認定および、公判廷の供述を補強証拠として用いることの違法性を主張して上告した。
あてはめ
1. 憲法38条3項が「本人の自白」に補強証拠を要求する趣旨は、虚偽の自白による誤判防止と拷問等の不当な取調べの抑止にある。しかし、裁判官の面前でなされる公判廷の自白は、手続的保障が及ぶため、同項の適用外といえる。本件原判決が公判廷の自白のみで事実認定した点は適法である。 2. 証拠の証明力は裁判官の自由な判断に委ねられる。公判廷での被告人の供述は、内容の如何を問わず、公判廷外の自白を補強する証拠として機能し得る。本件で原判決が両者を総合して事実認定した点は適法である。
結論
本件上告を棄却する。公判廷における自白のみによる有罪認定、および公判廷の供述を補強証拠として用いた判断はいずれも正当である。
実務上の射程
司法試験の実務上、本判例の立場(公判廷自白不要説)を前提とすれば、公判廷での自白があれば補強証拠がなくとも有罪認定が可能となる。ただし、現行法(刑訴法319条2項)は「公判廷における自白」にも補強証拠を必要とする明文規定を置いているため、憲法問題としては本判例を引用しつつ、実務上は刑訴法に基づき補強証拠を要すると解するのが一般的である。補強証拠の適格性については、公判廷の供述も含まれるという論理として活用できる。
事件番号: 昭和22(れ)77 / 裁判年月日: 昭和23年2月12日 / 結論: 棄却
憲法第三八條第三項並に刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」には、公判廷における被告人の自白を含まない。