一 判決における證據摘示の有無は判決書の全面にわたりこれを索むべく必ずしもいわゆる證據説明の部分に限定すべきでない。 二 公判廷における被告人の自白は、憲法第三八條第三項及び刑訴應急措置法第一〇條第三項の自白に含まれない。(なお、公判廷における自白について、裁判官齊藤悠輔の補足意見がある)
一 判決に於ける證據摘示の方法 二 公判廷における被告人の自白と憲法第三八條第三項及び刑訴應急措置法第一〇條第三項
刑訴法360條1項,刑訴法336條,憲法38條3項,刑訴應急措置法10條3項
判旨
憲法38条3項にいう「本人の自白」には公判廷における自白は含まれないため、公判廷での自白が唯一の証拠であっても、自由心証により真実と認められる限り、裏付け証拠なしに有罪を認定できる。
問題の所在(論点)
公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項にいう「自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合」の「自白」に含まれるか。すなわち、公判廷での自白のみで有罪判決を下すことができるか。
規範
憲法38条3項及び刑事訴訟法施行に伴う応急的措置法10条3項の趣旨は、強制や拷問等による不当な自白偏重・強要を防止し基本的人権を保障する点にある。しかし、公判廷における自白は、身体の拘束や不当な干渉を受けない自由な状態でなされ、黙秘権等の告知や弁護人の援助も保障されている。したがって、公判廷における被告人の自白は上記規定にいう「本人の自白」には含まれず、これのみで犯罪事実を認定することが可能である。ただし、裁判官は自由心証に基づき、その自白が真実であるとの確信を得た場合にのみ断罪すべきである。
重要事実
被告人は強盗殺人および窃盗の罪で起訴された。第一審および第二審において、被告人は窃盗の事実(白米や衣類等の窃取)について自白した。弁護人は、窃取されたとされる白米の贓品が発見されていないことや、衣類の所有権についても被告人の自白以外に十分な証明がないことを理由に、本人の自白のみをもって有罪とした原判決には、憲法38条3項等に違反する擬律錯誤の違法があると主張して上告した。
事件番号: 昭和22(れ)77 / 裁判年月日: 昭和23年2月12日 / 結論: 棄却
憲法第三八條第三項並に刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」には、公判廷における被告人の自白を含まない。
あてはめ
本件における第一の窃盗事実は、被告人が原審の公判廷において自ら認める供述をしたものである。公判廷での供述は、公判外の自白と異なり、裁判官の面前で自由な意思に基づきなされるため、証拠価値が比較的高いといえる。本件被告人の供述は、自由心証に照らして窃盗事実を肯定するに足りる内容であった。また、本件では自白以外にも、証拠物(白カッターシャツ等)や予審における証人尋問の結果など、自白を補強し得る資料も併せて摘示されており、実質的にも自白のみによる認定とはいえない。
結論
公判廷における自白は憲法38条3項の「自白」に含まれないため、これに基づき有罪を認定した原判決に憲法違反や擬律錯誤はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、公判廷自白に補強証拠が不要であるとする「公判廷自白不要説」を採った。しかし、現行刑事訴訟法319条2項は「公判廷における自白であると否とを問わず」補強証拠を必要とすると明文で規定したため、本判決の法解釈としての射程は失われている。もっとも、自白の真実性担保や人権保障の精神に関する議論としては依然として参照されることがある。
事件番号: 昭和24(れ)37 / 裁判年月日: 昭和26年4月4日 / 結論: 棄却
当該裁判所の公判廷における被告の人自白は、憲法第三八条第三項の「本人の自白」にあたらないことは当裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一六八号、同年七月二九日大法廷判決、同年(れ)第四五四号同二四年四月六日大法廷判決、同二三年(れ)第一五四四号同二四年四月二〇日大法廷判決参照)従つて、原判決が原審公判廷に…