判旨
共謀共同正犯の成立において、共謀および詐欺の意思等の主観的事実が原判決挙示の証拠により肯定できる場合、その認定は適法である。また、公判手続の更新については、裁判所が必要と認める場合にこれを行えば足り、一定期間の休止があったとしても直ちに違法とはならない。
問題の所在(論点)
1. 共謀および詐欺の意思を認定した原審の事実認定に、採証法則違反や論理の矛盾があるか。 2. 裁判が長期間中断した場合における公判手続の更新の要否およびその不実施の違法性。
規範
共謀共同正犯(刑法60条)の成立には、共謀の事実および正犯意思(主観的要件)が認められることを要する。証拠の取捨選択および事実認定は、採証法則に反し、または論理上の齟齬がない限り、事実審裁判所の裁量に属する。また、公判の更新は、裁判所が必要と認める場合に実施されるべき手続である。
重要事実
被告人AおよびBが、共謀の上で詐欺を行ったとされる事案。原審は、提出された証拠に基づき、被告人らによる共謀の事実、詐欺の意思、および詐欺の実行行為(原判示第一・第二の事実)を認定した。これに対し、被告人側は、証拠の取捨選択が不当であること、経験則に反すること、および公判が15日以上開廷されなかったにもかかわらず手続が更新されていないこと等を理由に上告した。
あてはめ
1. 原判決が挙げた証拠を検討すると、被告人らの共謀および詐欺の意思、ならびに詐欺の事案を肯認することが可能である。証拠の取捨選択は裁判所の裁量に属し、原審が特定の尋問調書を採用し他の証拠を採用しなかったとしても、そこに虚無の証拠の採用や経験則違反は認められない。 2. 公判手続の更新に関しては、旧刑事訴訟法下において、15日以上開廷されなかった場合でも、裁判所が必要と認める場合に限り更新すれば足りる。本件において更新が行われなかったとしても、直ちに違法または違憲とはいえない。
結論
本件各上告を棄却する。原判決の事実認定に違法はなく、公判手続の更新に関する手続上の瑕疵も認められない。
事件番号: 昭和23(れ)446 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
原判決には、憲法によつて擁護される基本的人權を侵害した違法があると主張しても、その主張内容が實質において憲法違反を理由とするものでない以上、再上告の適法な理由とならない。補充意見裁判官齋藤悠輔
実務上の射程
共謀共同正犯の成立要件における「共謀」や「意思」の認定が、証拠に基づく裁判所の合理的な裁量判断に委ねられることを示す。また、公判更新の必要性判断について、裁判所の広範な裁量を認めた昭和20年代の初期判例としての意義を持つ。答案上は、共犯の成立における事実認定の合理性を論じる際の補強材料として機能する。
事件番号: 昭和25(れ)1625 / 裁判年月日: 昭和26年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】緊急避難の成否に関し、被告人が主張する林道開発の必要性は、犯行を「やむを得ずしてなされたもの」と認めるに足りる補充性を欠くとし、緊急避難の成立を否定した。 第1 事案の概要:被告人が林道開発を行う過程で何らかの犯罪行為(判決文からは罪名不明)に及んだ事案。被告人側は、当該犯行が林道開発のために必要…
事件番号: 昭和26(れ)1547 / 裁判年月日: 昭和27年2月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法下において認められていた検察官による附帯控訴は、日本国憲法に違反せず合憲である。 第1 事案の概要:被告人が控訴した事件において、検察官が旧刑事訴訟法の規定に基づき附帯控訴を申し立てた。被告人側は、このような附帯控訴の仕組みは憲法に違反し無効であると主張して上告した。 第2 問題の所在…
事件番号: 昭和27(れ)126 / 裁判年月日: 昭和27年12月2日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】被告人から証拠書類の供述者について証人尋問の申請があった場合、裁判所がこれを却下しながら当該書類を証拠として採用することは、被告人の防御権を侵害し刑訴応急措置法12条1項に違反する。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、C通運の係員Eを欺罔して硫酸アンモニヤを騙取したとされる詐欺被告事件において…