判旨
緊急避難の成否に関し、被告人が主張する林道開発の必要性は、犯行を「やむを得ずしてなされたもの」と認めるに足りる補充性を欠くとし、緊急避難の成立を否定した。
問題の所在(論点)
林道開発のために行われた犯行について、刑法37条1項にいう「自己又は他人の権利に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為」に該当するか。
規範
刑法37条1項前段の緊急避難が成立するためには、現在の危難を避けるために「やむを得ずにした行為」であることを要し、その行為が危難を回避するために必要最小限度のものであること(補充性)を要する。
重要事実
被告人が林道開発を行う過程で何らかの犯罪行為(判決文からは罪名不明)に及んだ事案。被告人側は、当該犯行が林道開発のために必要不可欠であり、やむを得ずなされたものであるとして緊急避難の成立を主張し、量刑の不当を訴えて上告した。
あてはめ
記録を精査しても、被告人の本件犯行が林道開発のために「やむを得ずしてなされたもの」とは認められない。すなわち、林道開発という目的のために当該犯行を回避する他の手段がなかったとはいえず、補充性の要件を満たさないと解される。したがって、本件犯行は緊急避難の要件を欠いている。
結論
被告人の行為は緊急避難には当たらず、原審の量刑は適当であるため、上告は棄却される。
実務上の射程
緊急避難における「やむを得ずにした行為」の判断において、開発行為の必要性等の主観的・経済的な事情のみでは、法益衡量の前提となる補充性を充足しないことを示唆する。答案上は、期待可能性や補充性の検討において、事案の緊急性と代替手段の有無を厳格に評価する際の根拠となり得る。
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