原判決には、憲法によつて擁護される基本的人權を侵害した違法があると主張しても、その主張内容が實質において憲法違反を理由とするものでない以上、再上告の適法な理由とならない。補充意見裁判官齋藤悠輔
憲法違反を主張するも、その實質が憲法違反を理由としない場合と再上告の理由
刑訴應急措置法17條
判旨
再上告の適法な理由は憲法違反に限定され、実質的に事実誤認や法令適用の誤りを主張するものは、憲法違反を理由とするものとはいえず不適法である。原上告判決に憲法適否の判断が存在し、その判断が不当であることを理由とする場合に限り再上告は許容される。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法応急措置法17条に基づく再上告において、単なる事実誤認や法律適用の誤りを憲法違反の名目で主張することが適法な再上告理由として認められるか。
規範
再上告(刑事訴訟法応急措置法17条)の適法な理由は、憲法違反または憲法解釈の誤りがあることに限定される。形式的に基本的人権の侵害を主張していても、その実質が事実誤認や単なる法令適用の誤り(詐欺罪の成否等)を非難するものである場合は、適法な再上告理由とはなり得ない。
重要事実
被告人は詐欺罪に問われ、原判決(上告審)において有罪とされた。これに対し弁護人は、原判決が「憲法によって擁護される基本的人権を侵害した」と主張して再上告を申し立てた。しかし、その具体的な内容は被告人の行為を詐欺罪としたことに対する非難、すなわち事実認定や法律適用の当否を争うものであった。
あてはめ
被告人の主張は、形式的には「基本的人権の侵害」という言葉を用いているが、その実質は詐欺罪の成否という事実認定および法律適用の誤りを指摘するものである。これは原判決の事実誤認や法令違反を非難するに帰し、憲法自体の適否や解釈を問うものではない。したがって、同法17条が規定する「憲法違反」という再上告の厳格な要件を具備していないといえる。
結論
本件再上告は、適法な再上告理由を欠くため、棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事訴訟における上告・再上告の理由が憲法違反に限定される場合の「実質的判断」の基準を示す。司法試験においては、上告理由の適法性を論じる際、単なる法令違反を憲法違反に「擬装」しても門前払いされるという実務的運用を説明する根拠となる。
事件番号: 昭和26(れ)1223 / 裁判年月日: 昭和26年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、弁護人の主張が単なる訴訟法違反の主張に帰し、刑事訴訟法405条の定める上告理由(憲法違反または判例相反)に該当しない場合は、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:上告人側の弁護人が、原審の判断等について訴訟法上の不備を理由に上告を申し立てた。しかし、その主張内容は憲法違反や最…
事件番号: 昭和26(れ)1547 / 裁判年月日: 昭和27年2月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法下において認められていた検察官による附帯控訴は、日本国憲法に違反せず合憲である。 第1 事案の概要:被告人が控訴した事件において、検察官が旧刑事訴訟法の規定に基づき附帯控訴を申し立てた。被告人側は、このような附帯控訴の仕組みは憲法に違反し無効であると主張して上告した。 第2 問題の所在…