一 少年法が少年犯罪者はこれを保護處分に付することを主眼とし刑事處分に付することを寧ろ第二義的とする法意であることは所論のとおりであるが、この法意に適合すべく被告人の性行、境遇その他の資料にもとずき被告人を保護處分に付するかそれとも刑事處分に付するかを決定するのは事實審たる原裁判所の裁量權に屬するところである。 二 原判決は公判請求の日から僅々五月たらずで言渡されているのであるから現時の下級裁判所における刑事々件の輻輳している實状に照して原判決をもつて迅速でない裁判であるとすることはできない。しかのみならず假りに、審判が迅速でなかつたとしても、それを違憲として原判決を破棄して更に審判を求めることの許されないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一〇七一號、同年一二月二二日大法廷事件判決、同年(れ)第一六三三號、同二四年三月二四日第一小法廷事件判決参照)
一 少年犯罪者に對する保護處分若しくは刑事處分の決定と裁判所の自由裁量 二 公判請求の日から判決言渡まで五月を要した審判と憲法第三七條第一項の「迅速な裁判」
少年法66條,憲法37條1項,舊刑訴法411條
判旨
少年法における保護処分と刑事処分の選択、及び未決勾留日数の本刑算入の成否は、事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられる。また、公判請求から判決まで約5か月という期間は迅速な裁判の保障(憲法37条1項)に反しない。
問題の所在(論点)
1. 少年に対する刑事処分の選択が裁量権の逸脱・濫用となるか。2. 公判請求から約5か月での判決が「迅速な裁判」に反するか。3. 未決勾留日数の本刑不通算が違法となるか。
規範
1. 少年法が保護処分を主眼とするとしても、被告人の性行・境遇等に基づき保護処分か刑事処分かを決定するのは事実審の裁量に属する。2. 公判請求から判決までの期間が、裁判所の事件輻輳等の実状に照らして不当に遅延していない限り、迅速な裁判(憲法37条1項)に反しない。3. 未決勾留日数を本刑に通算するか否かは、事実審の自由裁量に属し、その不算入が直ちに憲法の精神に反するものではない。
重要事実
被告人(少年)が窃盗罪に問われた事件において、第一審は刑事処分を選択し、かつ未決勾留日数の算入を行わなかった。被告人側は、少年の保護優先の原則に反すること、審理が迅速でないこと(公判請求から二審判決まで約5か月)、及び未決勾留日数が通算されていないことが憲法や法意に反すると主張して上告した。なお、被告人は勾留後約1か月で自白しており、証拠には自白のほか被害届も存在していた。
あてはめ
1. 被告人の性行、心境、父兄の存在、病状(肺浸潤)等は原審で既に検討されており、これらを踏まえて保護処分ではなく刑事処分を選択した判断は、事実審の裁量権の範囲内である。2. 公判請求(昭和23年6月)から控訴審判決(同年10月)まで5か月足らずであり、当時の裁判所の事件輻輳の実状に照らせば、迅速性を欠くとはいえない。3. 未決勾留日数の算入は、法律上も憲法上も義務付けられたものではなく、裁判所の裁量により決定されるべき事項であるため、通算しなかったことに違法はない。
結論
原審が少年を刑事処分に付し、未決勾留日数を算入しなかった判断はいずれも適法であり、審理期間も憲法に違反しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
少年事件における刑事処分選択の裁量性と、憲法37条1項(迅速な裁判)の具体的判断枠組み(裁判所の実状考慮)を示す。未決勾留日数の算入については現行刑法21条(任意的算入)の解釈指針として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)478 / 裁判年月日: 昭和27年7月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未決勾留日数を本刑に算入するか否かは裁判所の裁量に属し、これを算入しないことが直ちに憲法13条等に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人が昭和24年3月7日から同月25日までの18日間、未決勾留されていたにもかかわらず、第一審判決がこの日数を本刑に算入しなかった。弁護人は、この不通算が刑…