一 所論の刑訴法第四九五条に定める未決勾留日数は判決が確定して本刑の執行される際当然に全部本刑に通算されるべきものであつて、原裁判所には右日数を本刑に通算するか否かの裁量権が委ねられてないのであると解するを相当とするから、原裁判所が右日数を本刑に通算すべき旨言渡さなかつたことは当然であつて、毛頭違法ではない。 二 控訴趣意には所論の点に関して何等主張されていないこと記録上明らかであるから原審が所論の点について判示していないのは当然である。されば、原判決を目して所論の判例(昭和二三年(れ)第九七八号、同年一一月一八日第一小法廷判決参照)に反するとなす論旨は判示にそわない事実を独断し、これを前提とするものであつて、とるをえない。
一 刑訴法第四九五条に定める未決勾留日数の通算の性質 二 控訴趣意として主張されず原審においても判断していない事項について判例違反を主張する上告の適否
刑訴法495条,刑訴法405条2号,刑法21条
判旨
未決勾留日数の本刑通算について、裁判所に裁量権はなく、判決確定後の執行に際して当然に全日数が通算されるため、判決主文で通算を言い渡さなくても違法ではない。また、被告人の勾留期間が不当に長く迅速な裁判の原則に反する場合であっても、それが直ちに原判決の効力に影響を及ぼすものではない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟において、未決勾留日数の本刑通算について裁判所の宣告が必要か、また勾留手続の遅延・不当性が判決の効力(上告理由)に影響を及ぼすか。
規範
刑法及び刑事訴訟法(当時の495条、現行495条に類する規定)に基づく未決勾留日数の本刑通算は、法律上の当然の帰結として行われるものであり、裁判所には通算の是非や日数に関する裁量権は認められない。したがって、判決において通算の言渡しを欠いても適法である。また、勾留の不当な長期化などの手続上の瑕疵は、判決の内容自体に直接の影響を及ぼさない限り、上告理由とはならない。
重要事実
被告人は窃盗、詐欺罪により懲役1年(執行猶予5年)の判決を受け、その猶予期間中に再度罪を犯した。被告人側は、上告審において以下の点を主張した。①被告人の勾留が不当に長く、迅速な裁判を受ける権利(憲法37条1項)や勾留の要件(憲法34条)に違反していること。②原判決が未決勾留日数を本刑に通算する旨を言い渡さなかったことは違法であること。③事実誤認があること。
あてはめ
未決勾留日数の通算については、判決が確定して本刑が執行される際に、法令上当然に全部が通算されるべき性質のものである。原裁判所に裁量の余地はないため、言渡しがないことは何ら違法ではない。また、勾留の長期化が憲法37条1項等に違反する疑いがあるとしても、その手続的事由は判決の判断(有罪認定や量刑)そのものに影響を及ぼすことが明白ではないため、破棄事由には当たらない。
結論
未決勾留日数は執行段階で当然に本刑通算されるため、判決で言い渡す必要はない。また、勾留の長期化等は判決に影響を及ぼさないため、上告を棄却する。
実務上の射程
未決勾留日数の通算という実務上の処理を「当然の帰結」と整理する際の根拠となる。また、刑事手続上の瑕疵が判決に及ぼす影響について、「判決に影響を及ぼすことの明白性」を要求する判例理論の一環として位置づけられる。答案上では、手続違背を理由とする公訴棄却や判決破棄を論じる際の反論・限界設定として活用できる。
事件番号: 昭和59(あ)27 / 裁判年月日: 昭和59年3月29日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】懲役刑の執行と競合する未決勾留日数は、刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。未決勾留日数の算入が許される限度は、他罪の刑の執行が終了した日の翌日から判決言渡の前日までの期間に限られる。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪等で第一審・第二審を通じて勾留されていたが、その勾留期間中に、別罪(住…