一 原判決が本件強盜罪の構成要件たる「他人の財物」に該當する被害者所有の現金千五百圓及び衣類等一〇數點と判示した以上、更らに衣類等の詳細を判示しなくとも強盜罪の目的物の判示として毫も缺くるところはない。 二 刑の執行猶豫の言渡をしないことが憲法第三六條のいわゆる「殘虐な刑罰」に該らないこと及び刑の執行猶豫の言渡をしないために被告人の家族が生活に困るような場合でもその刑の言渡をした判決が憲法に違反するものでないことは、既に當裁判所の判例とするところである。(昭和二二年(れ)第三二三號、昭和二三年六月二三日大法廷判決、昭和二二年(れ)第二〇一號、昭和二三年三月二四日大法廷判決參照)
一 強盜の目的物判示の程度 二 執行猶豫の言渡のない有罪判決の合憲性
刑法236條,舊刑訴法360條1項,憲法36條,憲法25條1項
判旨
強盗罪における脅迫は、社会通念上、被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要し、深夜に他人の屋内に侵入して刃物を示し金銭を要求する行為はこれに該当する。また、数人間に犯意の連絡がある場合、見張り行為を行った者も他の実行行為者とともに共同正犯としての責任を負う。
問題の所在(論点)
1. 共同正犯の成立要件である「共同して」の意義、および見張り行為者が住居侵入・強盗の共同正犯としての責を負うか。 2. 深夜に屋内に侵入し、庖丁を示して金銭を要求する行為が、強盗罪にいう「反抗を抑圧するに足りる程度の脅迫」に当たるか。
規範
1. 共同正犯(刑法60条)が成立するためには、数人相互の間に犯意の連絡(共同実行の意思)があることを要する。共謀に基づき、一部の者が役割分担として見張りを行った場合であっても、他の実行行為者の行為について共同正犯としての責任を負う。 2. 強盗罪(刑法236条)の構成要件である脅迫は、社会通念上、被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のもの(反抗抑圧程度)であることを要する。
重要事実
被告人4名は、共同してA宅に侵入し財物を強取することを計画した。被告人のうち2名は深夜午前0時30分頃、A宅内に侵入して婦女の寝室に至り、各自菜切庖丁1挺ずつを示して「金を出せ」と要求した。残りの被告人らは、この間見張り行為を行っていた。原判決では、庖丁の形状や新旧等の詳細な認定はなされていなかったが、強盗罪の成立を認めたため、被告人側が不服として上告した。
あてはめ
1. 「四名共同して」という判示は、数人相互の間に犯意の連絡があることを意味し、刑法60条の要件を満たす。犯意の連絡がある以上、そのうちの者が現場で見張りをしたとしても、他の者が住居に侵入し強盗を働いた行為について、共謀共同正犯(または役割分担のある共同正犯)として全責任を負うべきである。 2. 実行行為者が「深夜午前0時30分頃」という心理的に不安な時間帯に、「他人の屋内」に侵入し、「婦女の寝室」という至近距離において、「各自菜切庖丁」という殺傷能力のある凶器を示して金銭を要求した事実は、客観的にみて社会通念上被害者の反抗を無形的に抑圧するに足りる程度の脅迫に当たるといえる。したがって、庖丁の詳細な属性を認定せずとも強盗罪の構成要件を充足する。
結論
被告人らが共同して住居に侵入し、反抗抑圧程度の脅迫を用いて財物を強取したと認められるため、見張り役を含む被告人全員に住居侵入罪および強盗罪の共同正犯が成立する。上告棄却。
実務上の射程
強盗罪の「暴行・脅迫」の程度(反抗抑圧程度)を判断する際、時間的・場所的状況や凶器の提示といった客観的事実から直ちに肯定できることを示した事例。また、見張り行為者の共同正犯責任を認める際の定型的な論法として利用できる。
事件番号: 昭和24(れ)1636 / 裁判年月日: 昭和24年10月29日 / 結論: 棄却
共謀の事實が認められる以上は現場において、被告人が自ら暴行脅迫若しくは財物強取の行爲をしなくても、他の共犯者のした強盜の所爲について、共同正犯の責任を兔れることはできない。
事件番号: 昭和22(れ)41 / 裁判年月日: 昭和22年11月24日 / 結論: 棄却
一 深夜數人兇器を携えて屋内に侵入して判示のような脅迫行爲をしたときは、通常被害者において反抗を抑壓せられる程度の畏怖を感ずることは明瞭であるから、原判決がその行爲を(恐喝ではなく)強盜と認定して之に對し強盜の法條を適用したのは正當であつて何等の違法はない。 二 所論の被害物件が隠退蔵物資なりやは被告人の本件犯行(強盜…
事件番号: 昭和24(れ)1324 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
一 數名の強盜犯人が、事前に明示的に強盜することを謀議していた場合ばかりでなく、豫め暗默のうちに強盜をすることを互ひに了解していた場合であつても、又できることなら窃盜だけに止め、止むを得ないときは強盜をする旨打合せていた場合であつてもなお共謀の上強盜をなしたものといい得るのである。 二 舊刑訴法の下では檢察官が公訴を提…