一 記録によると原審が所論證人Aの訊問申請を却下したのは、被告人が之を抛棄した爲であり又所論證人Bについては一應之が採否を留保したものの、結局その必要が認められないものとして却下したのであることが窺える。而して憲法第三七條第二項の規定は裁判所において被告人の申請にかゝる證人の總てを取調べなければならないという義務があるものでなく裁判所がその必要を認めて訊問を許可した證人に限られる法意であることは既に大法廷判例(昭和二三年(れ)第八八號、昭和二三年六月二三日大法廷判決)が認めているところである。 二 原審において證人申請を採用しなかつたからと言つて、公平な裁判所の裁判を受ける權利を害するものと言えないことは判例(昭和二二年(れ)第一七一〇號同二三年五月三日大法廷判決、昭和二三年(れ)第九〇四號昭和二三年一二月一六日第一小法廷判決)が示しているところである。
一 憲法第三七條第二項の注意 二 證人申請の却下と憲法第三七條にいわゆる公平な裁判所の裁判」
憲法37條2項,憲法37條
判旨
憲法37条2項は、裁判所に対して被告人が申請したすべての証人を取り調べる義務を課すものではなく、裁判所が必要と認めて採用したものに限られる。また、少年法50条及び9条に基づく調査・審理についても、裁判所が必要な審理を尽くしている限り、憲法違反や少年法違反の問題は生じない。
問題の所在(論点)
被告人が申請した証人の取り調べを裁判所が却下することは、憲法37条2項(証人審問権)および公平な裁判を受ける権利に反するか。また、少年事件において少年法9条等の趣旨に従った審理が行われたといえるか。
規範
憲法37条2項の「すべての証人を審問する機会」を保障する規定は、裁判所において被告人が申請した証人をすべて取り調べなければならないという義務を裁判所に課すものではない。証人の取り調べは、裁判所がその必要を認めて訊問を許可したものに限られると解するのが相当である。
重要事実
被告人は強盗および詐欺の罪で起訴された少年である。原審において、被告人は証人Aの訊問申請を自ら放棄し、証人Bについても原審裁判所が一応採否を留保した後に必要がないとして却下した。被告人側は、これらの証人申請が採用されなかったこと、および少年法50条・9条に基づく家庭環境等の専門的調査が不十分であることを理由に、憲法37条2項違反や公平な裁判を受ける権利の侵害を主張して上告した。
あてはめ
証人Aについては被告人自身が申請を放棄しており、証人Bについては裁判所が審理上の必要性がないと判断して却下したものである。これは裁判所の証拠採否に関する裁量の範囲内であり、憲法が保障する証人審問権や公平な裁判を受ける権利を侵害するものではない。また、少年法上の審理義務についても、記録によれば原審は被告人の保護者の行状や経歴、環境等について必要な審理を尽くしており、同法9条・50条に違反する点は認められない。
結論
裁判所が被告人申請の証人を取り調べないことは、その必要がないと認められる限り憲法37条2項に違反しない。また、本件の少年事件としての審理手続にも違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟における証拠調べの必要性の判断は裁判所の裁量に属することを確認した判例である。答案上は、証人申請却下の違憲性を争う場面で、本規範を引用して「裁判所が必要性を欠くと合理的に判断できる場合には証人尋問を拒絶しても憲法違反とならない」旨の論証に用いる。
事件番号: 昭和24(れ)3201 / 裁判年月日: 昭和27年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は不必要な証人まで喚問することを義務付けるものではなく、裁判所が審理の経過に鑑み証拠調べの必要がないと認めて証人尋問請求を却下することは、裁判所の合理的な裁量の範囲内として許容される。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、原審第一回公判において証人Aの尋問を請求したが、原裁判所はこれ…