論旨第一點は、原審が本件犯行の核信ともいうべき被告人の犯意を被告人の法廷外における自白のみによつて認定したのは、憲法第三八條第三項および刑訴應急措置法第一〇條第三項違反であると主張する。しかし、自白に補強證據を要するということはその自白が架空のものでないことを證明するに足りるものであることは、當裁判所の判例とするところであつて(昭和二二年(れ)第六八號、同二三年六月二三日大法廷判決)その程度の補強證據は原判決中にも舉げられており、さらに犯意のような犯罪の主観的方面については、補強證據を必要としないという判例もある次第で(昭和二三年(れ)第一九五三號、同二四年四月五日最高裁判所第三小法廷判決参照)原判決には所論のような違法はない。
自白と補強證據−犯意についての補強證據の要否
憲法38條3項,刑訴應急措置法10條3項
判旨
自白の補強証拠は、自白が架空のものでないことを証明するに足りる程度で足りる。また、犯意のような犯罪の主観的要件については、自白に補強証拠を要しない。
問題の所在(論点)
憲法38条3項に基づき、犯罪の主観的側面である「犯意」の認定に際しても、自白を補強する独立の証拠が必要となるか。
規範
1. 憲法38条3項が求める補強証拠は、自白が架空のものでないことを担保するに足りる実質的な証拠(客観的事実)があれば足りる。 2. 犯意(故意)などの犯罪の主観的要素については、自白そのものによって認定することが可能であり、別途の補強証拠を必要としない。
重要事実
被告人が義母を殺害した事件(尊属殺人罪。当時)において、弁護人は原審が被告人の法廷外における自白のみによって犯意を認定したことが憲法38条3項および刑事訴訟法等に違反すると主張した。原審は自白以外にも、自白の真実性を裏付ける一定の補強証拠を採用していたが、犯意そのものを直接裏付ける外部的証拠の要否が争点となった。
あてはめ
被告人の自白が架空でないことを証明するに足りる程度の補強証拠は原判決において既に挙げられている。その上で、犯意のような主観的方面については、客観的な外部的事実とは異なり、性質上、補強証拠による裏付けは不要である。したがって、被告人の法廷外の自白から犯意を導き出した原審の判断に違法はない。
結論
犯罪の主観的要素(犯意)については補強証拠を必要とせず、自白により認定できる。よって、原判決の認定手法に憲法違反はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
司法試験では自白法則・補強法則の論点(刑訴法319条2項)において「補強証拠の範囲」として言及する。実質説(自白が架空でないことを担保する程度で良い)の立場を採る際に、主観的要素については補強不要であることを簡潔に述べる際に有用である。
事件番号: 昭和25(れ)1178 / 裁判年月日: 昭和25年12月8日 / 結論: 棄却
所論のAについては、同人は第一審公判廷外において証人として喚問され、その訊問には弁護人が立会い(被告人は勾留中で立会つていない)所要の訊問を裁判長に求めていること記録上明瞭である。かようにこの証人の供述については既にその訊問調書作成の当時弁護人に対し反対尋問の機会が与えられているのであるから、右同人を第二審である原審が…