原判決が司法警察員作成の被告人の供述調書中の署名押印は自分がしたものに相違ない旨の被告人の第一審公判廷の供述を以てその供述内容が強制、脅迫によるものでないと認定するための一資料としても経験則に違背するものとはいえない。
司法警察員作成の被告人の供述調書に証拠能力を認め得る例――該調書の署名押印は同人がなした旨の公判廷の供述を認定資料とした場合
刑訴法322条,刑訴法318条
判旨
殺意などの犯罪の主観的構成要件については、憲法38条3項の定める自白の補強証拠を必要としない。また、刑の減軽が裁判所の自由裁量に委ねられている場合、その理由となる事実(自首等)の主張があっても、判決でそれに対する判断を示す必要はない。
問題の所在(論点)
1. 殺意という主観的構成要件について、自白の補強証拠を必要とするか(憲法38条3項)。 2. 裁量的減軽事由である自首の主張に対し、判決で特段の判断を示す必要があるか(刑訴法上の判決理由の不備)。
規範
憲法38条3項が自白のみによる処罰を禁じ、補強証拠を要求するのは、客観的な犯罪事実(罪体)の真実性を保障するためである。したがって、殺意等の主観的構成要件については補強証拠を必要としない。また、自首による刑の減軽(刑法42条1項)は裁判所の裁量に属するため、減軽しない場合にはその事実を判示する必要はない。
重要事実
被告人は殺人の罪で起訴され、捜査段階での自白調書が証拠提出された。被告人側は、当該自白が強制・脅迫によるものであると主張して任意性を争い、また、自白の補強証拠が不十分であること、さらに自首の主張に対して判決が判断を示していないことを上告理由として主張した。
あてはめ
1. 憲法38条3項の解釈として、殺意のごとき犯罪の主観的構成要素については、当裁判所の累次の判例が示す通り補強証拠を必要としない。本件では客観的証拠により罪体が証明されており、殺意の認定に自白以外の証拠は不要である。 2. 自首減軽をしない場合には自首の事実を判示する必要はない。また、刑の減軽が裁判所の自由裁量に委ねられている事由については、被告人から主張があったとしても、判決においてこれに対する判断を示す義務はないと解するのが相当である。
結論
主観的構成要件に補強証拠は不要であり、また裁量的減軽事由の不判断は判決理由の不備に当たらない。したがって、本件上告を棄却する。
実務上の射程
司法試験においては、自白の補強法則(刑訴法319条2項)の範囲を論じる際の最重要判例の一つである。補強証拠が必要な範囲を「罪体(客観的構成要件)」に限定し、主観的態様をその範囲外とする実務上の確立した基準として引用する。また、刑法上の自首の主張に対する判決の書き方(裁量的免除・減軽)に関する論点でも参照される。
事件番号: 昭和27(あ)5685 / 裁判年月日: 昭和28年5月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白の補強証拠は、犯罪事実の全部を証する必要はなく、自白が真実であることを保障する程度で足りる。殺意のような主観的要素については、自白以外にその存在を推認させる補強証拠が存在すれば、補強法則の要件を満たす。 第1 事案の概要:被告人が殺人の罪に問われた事案において、第一審判決が提示した証拠に基づき…