辯護人提出の上告趣意書補充訂正申立と題する書面は、上告趣意書提出の法定期間經過後の提出に係り、且つ先きに提出した上告趣意書に對する單なる辭句用語等の補充訂正ではなく、新たなる論旨を記載しているものであることは該書面自体に徴し明らかであるから、これに對する判斷を與えない。
法廷期間經過に提出された上告趣意書補充訂正申立書に對する補充訂正でない場合に判斷を與えることの要否
舊刑訴法423條,舊刑訴法434條1項
判旨
警察での不当な取扱いが検察官の取調べに心理的影響を及ぼしていたとしても、直ちに供述の任意性が否定されるわけではない。取調状況や供述者の公判供述を総合考慮し、強制の介在が認められなければ、検察官面前調書の証拠能力は認められる。
問題の所在(論点)
先行する警察段階での威圧的な取扱いによる心理的影響が、後の検察官(副検事)段階の供述に残存している場合、その供述(検察官面前調書)の任意性は否定されるか。
規範
憲法38条2項(及び刑訴法319条1項)に基づく自白・供述の任意性判断において、先行する警察段階での不当な取扱いが後の検察官段階での供述に心理的影響を及ぼしている可能性(いわゆる不当な心理的拘束の連続)がある場合であっても、その事実のみをもって直ちに証拠能力が否定されるものではない。裁判所が取調べの具体的状況、供述者の態度、及びその後の公判廷における供述内容等を総合的に判断し、実質的に任意性を欠く事態に至っていないと認められる場合には、証拠能力を認めることができる。
重要事実
被告人Bらの犯罪事実につき、証人C及びDに対する副検事の聴取書が証拠採用された。C及びDは第一審において、副検事の取調の際に傍らに刑事が「恐ろしい顔」をして立っており、「警察での聴取書と違うことを言えば、警察に戻されてまたひどい目に会わされる」と思い、警察での供述と同じ内容を虚偽(あるいは警察段階の踏襲)として供述した旨を主張した。一方で、両名は当該副検事の取調べ自体において、何ら直接的な強制が加わっていないことも自ら供述していた。
あてはめ
本件では、C及びDが「刑事の存在により警察へ戻される恐怖を感じていた」と供述している事実は認められる。しかし、当該副検事による取調べそのものにおいて直接的な強制は加えられておらず、この点は証人ら自身も認めている。このような主観的な恐怖心や心理的影響の存在があったとしても、それのみをもって直ちに検察官に対する供述が「任意性を欠いたもの」であるとは断定できない。また、公判廷での供述と検察官面前調書のどちらを信用するかは裁判所の自由な心証(自由心証主義)に委ねられるべき事項である。
結論
副検事の聴取書に任意性を欠く事情はなく、これを証拠として採用し犯罪事実を認定した原判決に違法はない。上告棄却。
実務上の射程
自白の任意性の「派生的排除」や「心理的影響の遮断」が問題となる事案において、先行する違法・不当な取調べの影響があっても、後続の取調べが形式的に適正であれば任意性が肯定されうることを示している。答案上は、先行行為と後行供述の間の因果関係を検討する際の、裁判所の広範な裁量を認める判例として位置づけられる。
事件番号: 昭和24(れ)2610 / 裁判年月日: 昭和25年2月14日 / 結論: 棄却
一 原審は昭和二四年六月一日被告人に對する審理を終結し(第三回公判)同年八月一九判決を言渡し(第五回公判)この間七九日の期間を經過し乍ら所謂審理更新の手續をとらなかつたこと所論の通りである。然し乍ら舊刑訴法第三五三條は公判手續更新に關する規定であつて、辯論終結後にはその適用がないものである。なんとなれば同條の規定は多數…
事件番号: 昭和26(あ)1295 / 裁判年月日: 昭和28年10月9日 / 結論: 棄却
一 被告人の供述調書の任意性を被告人が争つたからといつて、必ずしも検察官にその供述の任意性について立証させねばならないものではない。 二 右供述調書の任意性の有無の調査は、裁判所が適当と認める方法によつてこれを行うことができ、かつ供述調書の方式のみでなく内容自体も右調査の資料となし得る。 三 右供述調書の任意性調査の事…