一 原審は昭和二四年六月一日被告人に對する審理を終結し(第三回公判)同年八月一九判決を言渡し(第五回公判)この間七九日の期間を經過し乍ら所謂審理更新の手續をとらなかつたこと所論の通りである。然し乍ら舊刑訴法第三五三條は公判手續更新に關する規定であつて、辯論終結後にはその適用がないものである。なんとなれば同條の規定は多數の日子を隔てて繼續審理をなすときは事實の眞相を發表するの妨となる惧れがあるので、當該判事の遺忘を來たさない間に審理を繼續して眞實發見の實を舉げようとする精神に出でたものであるから既に辯論を終結したときは辯論を再開しない限りはその必要なく、且つ又判決の宣告は審理の結果得られた事件の眞相について評議決定したところに基いて判決書を作成しこれを公表する手續に止まるのみであるから、辯論終結後一五日以内に判決の宣言をするように制限を設ける必要もないからである。 二 公判調書の記載の認記を誤記と斷ずることは、舊刑訴法第六〇條及第六四條に違反することではない。又右のような誤記のために公判の手續そのものが違法又は無効となるのでもない。
一 審理終結後判決言渡まで七九日の期間を經過しながら審理を更新しなかつたことの正否と舊刑訴法第三五三條の意義 二 公判調書の記載の誤記と舊刑訴法第六〇條同第六四條――同誤記ある場合における公判手續の効力
舊刑訴法353條,舊刑訴法410條16號,舊刑訴法60條,舊刑訴法64條
判旨
警察官の脅迫や強問による自白であっても、その後の公判廷において何ら強制を受けずに任意になされた供述であれば、間接の強制に基づくものとはいえず証拠能力が認められる。また、不当に長期の勾留中になされた自白であっても、勾留と自白の間に因果関係が認められない場合には、その証拠採用は適法である。
問題の所在(論点)
1. 警察段階の強要により得られた自白と内容を同じくする、後の公判廷での供述に「間接の強制」による証拠能力の瑕疵が及ぶか。 2. 不当に長期の勾留後に得られた自白について、証拠能力を否定すべきか(任意性・因果関係の判断)。
規範
1. 公判廷における供述の任意性:先行する取調べ段階で強制等の違法があったとしても、公判廷において何ら強制を受けず、任意になされた供述であれば「間接の強制」は否定され、証拠能力が認められる。 2. 勾留と自白の因果関係:自白が不当に長期の勾留後になされたものであっても、当該勾留と自白との間に因果関係が認められない限り、自白の証拠能力は否定されない。
重要事実
被告人Aは、警察での供述が脅迫や強問に基づくものであると主張し、それと同様の内容である原審公判廷での供述も間接の強制に基づくものであると訴えた。また、被告人Eは、逮捕後から約83日目の第一審公判廷で自白したが、これが不当に長期の勾留によるもので任意性を欠くと主張した。しかし、Eは逮捕直後から検察官や判事の訊問に対し、一貫して犯罪事実を自白していたという事実があった。
あてはめ
1. Aについて:仮に警察での取調に脅迫等の違法があったとしても、原審公判廷での供述は何ら強制を加えられない状態で任意になされた。したがって、警察段階の影響が継続している(間接の強制がある)とはいえず、公判廷の供述は証拠として許容される。 2. Eについて:自白は勾留から83日目になされているが、Eは逮捕直後から判事や検察官に対しても終始自白を継続し、その内容を公判廷でも維持していた。このような経過に照らせば、勾留の長期化と自白との間には因果関係がないといえるため、任意性は否定されない。
結論
被告人らの供述および自白の証拠能力を認めた原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
自白の任意性(刑訴法319条1項)に関する「間接の強制」の理論および「不当に長い拘禁」(319条1項)の解釈として機能する。警察段階の違法が公判廷での供述を直ちに汚染しないとする判断、および長期拘禁と自白の間の因果ランキングを重視する実務上の基準を示している。
事件番号: 昭和24(れ)1152 / 裁判年月日: 昭和25年10月11日 / 結論: 棄却
公判廷外の証人訊問については弁護人立会のもとに行われていることとが記録上明白であるから被告人が立会しなくとも必ずしも所論憲法第三七条第二項に違背するものではない。(昭和二三年れ第一〇五四号同年九月二二日大法廷判決参照)論旨は理由がない。