原判決中の「その證據は原判決に摘示するところとすべて同一であるからこゝにこれを引用する」という語句は、稍々正確を欠く憾みがないではない。しかしそれは、本來ならば第一審判決に摘示した通りの證據を舉示すべきであるのを、そのことを省略してそれに代えたものであること明かである。従つて原判決にも、第一審判決に摘示されたと同様の證據が舉示されたものと認めることができる。唯裁判所が異なることの當然の結果として第一審判決書中被告人證人等の「當公廷における供述」とある語句は「第一審の公判調書中の供述記載」と讀み易えられなければならない。「供述」と「供述記載」とが同一でないことは所論の通りであるが、原判決文を全体の趣旨から右のように解するならば、これを以つて所論のように採證の原則に反し、虚無の證據を罪證に供した違法あるものとすることはできない。
原判決が第一審判決の證據説明を引用した場合の原判決の解釋
舊刑訴法360條1項,舊刑訴法405條
判旨
強盗の目的で他人の居宅に侵入したという公訴事実に対し、強盗予備罪を認定することは、両事実の間に同一性が認められるため不告不理の原則に反しない。
問題の所在(論点)
公訴事実に「強盗の目的をもって侵入した」と記載されている場合、これと「強盗予備」の事実との間に公訴事実の同一性が認められ、訴因変更手続を経ずに認定することが許されるか。
規範
公訴事実と裁判所が認定する事実との間に「同一性」が認められる限り、判決において公訴事実と異なる事実を認定しても不告不理の原則(刑事訴訟法378条3号参照)には反しない。この同一性の判断においては、犯罪の日時・場所の近接性に加え、公訴事実に含まれる犯罪類型の中に、認定事実の内容が当然に包含されているか否かを考慮する。
重要事実
被告人は「外数名と共謀の上、昭和23年1月17日午後7時頃、B宅に強盗の目的をもって侵入した」として公判請求された。これに対し原判決は、被告人らが共謀して拳銃を持ち、同日時・同場所において強盗を企てて被害者宅前に至ったという「強盗予備」の事実を認定した。弁護人は、公訴事実は住居侵入のみであり、強盗予備を認定することは不告不理の原則に反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、公訴事実と認定事実は日時が全く同一であり、場所もほぼ同じである。また、公訴事実は単なる住居侵入ではなく「強盗の目的を以て侵入」したというものであり、このような目的を伴う侵入行為の中には、その性質上、当然に強盗の予備行為も含まれていると認められる。したがって、両事実の間には同一性が失われておらず、公訴の提起のない事実を認定したものとはいえない。
結論
強盗目的の住居侵入の事実に強盗予備が含まれる以上、公訴事実の同一性が認められ、強盗予備を認定した原判決に不告不理の原則違背はない。
実務上の射程
訴因変更の要否に関する初期の判例である。事実の「共通性」と「非両立性」といった現代的な枠組み以前の判断であるが、重なり合う構成要件(住居侵入と強盗予備)の包摂関係を理由に同一性を肯定するロジックは、現在の実務における審判対象の確定においても基礎的な視点となる。
事件番号: 昭和23(れ)1501 / 裁判年月日: 昭和23年12月24日 / 結論: 棄却
一 公判請求書記載の事實と原判示事實との間に被害物品について多少の差異があるとしても、具體的な窃盜の犯行そのものには異同がないのであるから、原判決は審判の請求を受けない事件について判決し若しくはこれを受けた事件について判決しなかつた違法はない。 二 判決の認定事實における日時と公訴事實における日時とがたまたま異つていて…
事件番号: 昭和26(あ)3975 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: 棄却
不能犯の主張は、原判示の如く犯罪事実の否認であつて、刑訴三三五条二項により、これに対し判断を示すべき事項ではない。
事件番号: 昭和24(れ)1252 / 裁判年月日: 昭和24年7月5日 / 結論: 棄却
一 公判廷において證據調をした書類を公判調書に記載するには如何なる書類につき證據調がなされたかを明確にすれば足り、必ずしもその書類の一々に付き個別具體的に掲記する必要のないことは、しばしば當裁判所の判例(例へば昭和二二年(れ)第二七七號同二三年四月八日第一小法廷判決)に示されている通りである。 二 しかし憲法第三七條第…