記録によれば、本件拳銃はその撃針が破損しているものであること、及び鑑定人Aが原審公判廷において辯護人の問に答えて論旨指摘の趣旨の供述をしていることは所論の通りであるが、同鑑定人は裁判長の間に對して「現在は撃針が折れて居りますので撃針さへ修理すれば直ぐ使用出來得るものであります。(中略)尚撃針の程度でしたら工作物機械を扱う人で小さな原板さへあれば修理出來ますし又撃針用の木乃至竹棒を挿入すれば發射することができます」と供述しているところから見て原審が右のごとき一時的の小故障を生じた状態において現に證據として存在する本件拳銃をもつて銃砲等所持禁止例第二條に基く銃砲等所持禁止令施行規則第一條第一號にいわゆる銃砲(弾丸發射の機能を有する装藥銃砲)に該當するものと認めて同令違反として被告人を處斷したのは正當であつて原判決にはいささかの違法もない。
撃針が破損し一時的小故障を生じている拳銃に對する不法所持の責任
銃砲等所持禁止令2條,銃砲等所持禁止令施行規則1條1號
判旨
撃針が破損していても、容易に修理可能であり、または代用品の挿入により発射機能が回復できる場合には、銃砲等所持禁止令上の「銃砲」に該当する。
問題の所在(論点)
撃針が破損し、現状では弾丸の発射が不可能な状態にある拳銃が、銃砲等所持禁止令施行規則1条1号にいう「銃砲(弾丸発射の機能を有する装薬銃砲)」に該当するか。
規範
「銃砲」とは、弾丸発射の機能を有する装薬銃砲を指すが、現に故障している場合であっても、それが一時的な小故障にすぎず、容易に修理して本来の機能を回復させ得る状態にあるならば、なお同令にいう「銃砲」に該当する。
重要事実
被告人が所持していた本件拳銃は、撃針が破損しており、現状のままでは弾丸を発射できない状態にあった。しかし、鑑定によれば、撃針さえ修理すればすぐに使用可能であり、工作機械を扱う者であれば小さな原板から容易に修理できるほか、撃針用の木や竹棒を挿入することでも発射可能であった。
事件番号: 昭和24(れ)2032 / 裁判年月日: 昭和24年6月11日 / 結論: 棄却
一 廢銃即ち屑物となつたものでない限りは、使用停止その他故障の爲め一時拳銃としての機能に障害のあるものであつても、通常の用法に依る手入又は修理を施せば能機を回復するものは、銃砲等所持禁止令施行規則第一條第一號に所謂「銃砲とは、弾丸發射の機能を有する装藥銃砲をいう」ものに該當することは、多言を要しないところであろう。蓋し…
あてはめ
本件拳銃は撃針が折れているものの、工作機械の扱いに慣れた者であれば容易に修理が可能である。また、正規の部品を用いずとも木や竹の棒を代用することで発射機能を取り戻せる状態にあった。このような状態は「一時的の小故障」にすぎず、客観的に見て依然として弾丸発射の潜在的機能を保持していると評価できる。したがって、法が禁止する「銃砲」としての危険性は失われていない。
結論
本件拳銃は同令にいう「銃砲」に該当し、被告人に同令違反が成立するとした原判決は正当である。
実務上の射程
物理的に一部が損壊していても、可塑性・修理可能性が認められる場合には「銃砲」該当性を肯定できるという規範を示した。銃刀法上の「銃砲」の解釈においても、その殺傷能力や危険性が容易に回復できるかという観点から、同様の論理が適用される。
事件番号: 昭和24(れ)255 / 裁判年月日: 昭和24年6月28日 / 結論: 破棄差戻
按ずるに原判決は本件拳銃の「主要部分の不足、破損あるにおいては彈丸發射の機能を有しないものといわなければならない從つて右拳銃は銃砲等所持禁止令第一條同令施行規則第一條にいわゆる銃砲に當らない」と判示しただけで判示拳銃は容易に修繕し得るものなりや否やの點について判斷を示していない、思うに原審においては犯行當時所持していた…
事件番号: 昭和26(れ)603 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 棄却
拳銃が弾倉を欠いていても、なお銃器たる形態を存し、且つ修理によつて直ちに本来の性能を回復し得るものである以上、銃砲等所持禁止令第一条第一項の「銃砲」にあたる。
事件番号: 昭和24(れ)1502 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令違反罪は、銃砲等を所持するを以て直に成立するものであるから、本件拳銃の所持携帯が、假りに數時間に過ぎなかつたとしても、犯罪の成立を妨げる理由とはならない。
事件番号: 昭和25(あ)2892 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
照準が破棄されていても拳銃の発射機能がないとはいえないし、また、弾丸が伴わなくとも鉄砲所持禁止令違反たるを免れないこと多言を要しない。