論旨は原判決は法律の適用として昭和二三年二月一五日商工農林省令第三號を舉げたが昭和二二年二月一五日商工農林省令第三號は存するが判決に記載された様な省令は見當らない、昭和二三年は或は誤記かも知れぬが存在せざる省令を存するものとして適用した判決である。即ち原判決は舊刑事訴訟法第四一〇條第一九號に「理由ニ齟齬アルトキ」に該當し破毀を免れないと思料す、というのであるが所論の「昭和二三年」は、「昭和二二年」の誤記と認められるから、論旨は理由がない。
法令の適用に當り年度の誤記を理由とする上告の適否
舊刑訴法360條1項,舊刑訴法410條19號
判旨
省令の改正により指定生産資材の表示が「工業用石炭」から「石炭(煖厨房用石炭を除く)」へと変更された場合であっても、その実質が暖厨房用以外の石炭を指すものである以上、改正前後の事実にわたる行為について当該資材の指定があったものと認めるのが相当である。
問題の所在(論点)
法令の改正により指定生産資材の名称・分類が変更された場合において、判決文で用いられた旧称や一般的名称が、改正後の法令上の規定に適合するものとして適法に評価され得るか。
規範
法令の改正によって用語の表記が変更された場合であっても、改正後の規定が対象とする範囲が実質的に改正前の用語が指す内容を包含しており、かつその意味内容が客観的に明らかであるならば、当該規定の適用は妨げられない。
重要事実
被告人は、昭和22年6月頃から同年8月頃までの間(判示第一)、および昭和23年1月26日頃(判示第二)に、指定生産資材である石炭を不正に扱ったとして起訴された。根拠となる商工農林省令は昭和22年7月12日に改正され、附表第一の表記が「工業用石炭」から「石炭(煖厨房用石炭を除く)」に変更されていた。弁護人は、改正後の表記が判決文の「工業用石炭」と異なることから、法律適用の違法を主張して上告した。
事件番号: 昭和24(れ)1029 / 裁判年月日: 昭和26年7月20日 / 結論: 破棄自判
本件において原判決は被告にAの行為に対する適用法として臨時物資需給調整法第一条第四条繊維品配給消費統制規則第一〇条刑法第五五条昭和二二年法律第一二四号刑法の一部を改正する法律附側第四項を、被告会社に対してはなお同法第六条を掲げているのであるが、右規則第一〇条のいわゆる指定繊維製品というのは同規則第二条により商工大臣の指…
あてはめ
本件判示第一の事実は改正前後の連続犯であり、判示第二は改正後の事実であるため、いずれも改正後の省令第四号が適用される。改正後の附表第一に掲げられた「石炭(煖厨房用石炭を除く)」という表示は、内訳(原料炭、発生炉用炭、一般用炭、無煙炭等)を問わず、暖厨房用以外の石炭すべてを指定生産資材として指定したものである。判示に用いられた「工業用石炭」という用語は、文脈上「暖厨房用以外の石炭」を意味していることが自ずから明らかであり、改正後の指定生産資材の定義と実質的に合致する。したがって、原判決の法律適用に違法はない。
結論
本件上告を棄却する。法令の文言が改正により変更されても、その実質的意義において対象物が特定されている限り、判決における表記の差異は法律適用の違法とはならない。
実務上の射程
法令改正を跨ぐ継続的行為や改正後の行為に対し、判決文で用いられた用語が改正後の法令の趣旨に照らして実質的に同一の対象を指すと解される場合には、罪刑法定主義(明確性の原則)に反せず適法とされる。実務上は、訴状や判決での目的物表記が法令の文言と一字一句一致しない場合でも、その趣旨が同一であることを論証する際の参考となる。
事件番号: 昭和25(れ)1884 / 裁判年月日: 昭和26年3月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】指定生産資材割当規則と指定繊維資材配給規則は、後者が前者を補完する関係にあり、一方の適用が他方を排除するものではない。また、需要者の地位にある者が割当証明書と引換えずに資材を売買した場合は、割当規則違反が成立する。 第1 事案の概要:被告人は絹織物等の製造業者であり、指定生産資材である生糸等の需要…
事件番号: 昭和26(あ)511 / 裁判年月日: 昭和27年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧物価統制令等における「営業」の意義に関し、営利の目的をもって有償的譲渡(販売)を反復継続する意思で行う場合には、仕入行為が反復されることは要件とならない。 第1 事案の概要:被告人が、営利の目的をもって有償的譲渡(販売行為)を反復して行った事案。弁護人は、販売行為のみならず仕入行為も反復してなさ…
事件番号: 昭和26(れ)1742 / 裁判年月日: 昭和27年12月18日 / 結論: 棄却
いわゆる進駐軍用物資の揮発油であつても、石油製品配給規則による統制の対象となるものと解すべきである。
事件番号: 昭和24(れ)722 / 裁判年月日: 昭和25年2月14日 / 結論: 破棄自判
昭和二二年商工省令第二三號指定繊維資材配給規則附則第三項は、同年商工省告示第五四號によりその内容を補足され具備するものであるから、右附則第三項違反の行爲に對しては、右告示第五四號をも適用しなければならない。