本件において原判決は被告にAの行為に対する適用法として臨時物資需給調整法第一条第四条繊維品配給消費統制規則第一〇条刑法第五五条昭和二二年法律第一二四号刑法の一部を改正する法律附側第四項を、被告会社に対してはなお同法第六条を掲げているのであるが、右規則第一〇条のいわゆる指定繊維製品というのは同規則第二条により商工大臣の指定によるものであつて、昭和一七年一月二〇日商工省告示第四九号によつて指定されているのである。即ち前示規則第一〇条は右告示によつてその内容が具備しているのであるから、臨時物資需給調整法の罰則を適用するには右規則第一〇条の該に右告示第四九号を掲げなければならないのである。しかるに原判決は前示のように適用法令として右告示を掲げていないのであるから、原判決を破棄すべき法令の違反がある。
指定繊維製品の不法買受に関する臨時物資需給調整法違反の犯罪に対する法令適用
臨時物資需給調整法1条,臨時物資需給調整法4条,繊維製品配給消費統制規則2条,繊維製品配給消費統制規則10条,昭和17年1月10日商工省告示49号,旧刑訴法360条1項
判旨
法律の委任に基づき行政庁が指定した内容が刑罰法規の構成要件の核心をなす場合、判決の法令適用において当該指定(告示)を明示する必要があり、これを欠くことは法令適用の違法となる。
問題の所在(論点)
刑罰法規が白地刑法的な構造を有し、構成要件の具体的内容が行政庁の告示に委ねられている場合、判決の法令適用において当該告示の掲示を欠くことは、判決に影響を及ぼすべき法令違反となるか。
規範
刑罰法規の禁止内容が行政庁の指定等の告示によって具体化される場合、当該告示は罰則と一体となって構成要件を補充するものである。したがって、罪刑法定主義の観点から、判決の法令適用においては、根拠となる法律及び規則のみならず、その内容を補完する当該告示をも明示しなければならない。
重要事実
事件番号: 昭和24(れ)722 / 裁判年月日: 昭和25年2月14日 / 結論: 破棄自判
昭和二二年商工省令第二三號指定繊維資材配給規則附則第三項は、同年商工省告示第五四號によりその内容を補足され具備するものであるから、右附則第三項違反の行爲に對しては、右告示第五四號をも適用しなければならない。
被告人A及び被告会社Bは、臨時物資需給調整法及び繊維製品配給消費統制規則に違反して、指定繊維製品の無許可販売等を行ったとして起訴された。原判決は、適用法令として同法及び同規則10条を挙げたが、同条の「指定繊維製品」の具体的内容を定めている昭和17年商工省告示第49号については、法令適用欄に記載しなかった。これに対し、弁護人が適用法令の不備を理由に上告した事案である。
あてはめ
繊維製品配給消費統制規則10条にいう「指定繊維製品」は、同規則2条により商工大臣の指定に委ねられており、本件では昭和17年商工省告示第49号によってその内容が具備されている。すなわち、臨時物資需給調整法の罰則を適用するに当たっては、規則10条と当該告示は不可分一体のものとして禁止の範囲を画定する。それゆえ、原判決が適用法令として規則10条を掲げながら、その内容を実質的に決定している右告示を掲げなかったことは、法令適用の不備といわざるを得ない。
結論
原判決には適用すべき法令を掲げなかった違法がある。したがって原判決を破棄し、最高裁において当該告示を含む正しい法令を適用して自判し、被告人らを処罰する。
実務上の射程
白地刑法や委任命令に基づき具体的禁止態様が決まる事案における判決書の記載方法に関する射程を有する。答案作成上は、罪刑法定主義(明確性の原則)の観点から、行政処分や告示が構成要件の一部をなす場合には、単に根拠法律を挙げるだけでなく、その具体化要素(告示等)まで含めて法令の存否を検討すべきことを示唆するものである。
事件番号: 昭和25(あ)406 / 裁判年月日: 昭和25年10月17日 / 結論: 棄却
本件において第一審判決は適用法令として臨時物資需給調整法第一条、第四条、衣料品配給規則第五条を掲げているが、同規則にいわゆる衣料品とは、その第一条第二項に基いて昭和二二年九月一〇日商工省告示第五八号によつて指定されているのであるから、臨時物資需給調整法の罰則を適用するには、衣料品配給規則第五条のほかに右告示第五八号を掲…
事件番号: 昭和24(れ)1900 / 裁判年月日: 昭和24年12月8日 / 結論: 棄却
論旨は原判決は法律の適用として昭和二三年二月一五日商工農林省令第三號を舉げたが昭和二二年二月一五日商工農林省令第三號は存するが判決に記載された様な省令は見當らない、昭和二三年は或は誤記かも知れぬが存在せざる省令を存するものとして適用した判決である。即ち原判決は舊刑事訴訟法第四一〇條第一九號に「理由ニ齟齬アルトキ」に該當…
事件番号: 昭和25(れ)1884 / 裁判年月日: 昭和26年3月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】指定生産資材割当規則と指定繊維資材配給規則は、後者が前者を補完する関係にあり、一方の適用が他方を排除するものではない。また、需要者の地位にある者が割当証明書と引換えずに資材を売買した場合は、割当規則違反が成立する。 第1 事案の概要:被告人は絹織物等の製造業者であり、指定生産資材である生糸等の需要…
事件番号: 昭和25(あ)1520 / 裁判年月日: 昭和26年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】肥料配給統制規則等に基づき処罰の対象となる行為は、割当公文書の提示なく硫安を譲渡する現実の行為(引渡し)を指し、その前提となる売買契約そのものではない。 第1 事案の概要:被告人らは、肥料配給統制規則等の規定に反し、割当公文書の提示を受けることなく、硫安を他者に譲渡した。一審判決はこの譲渡行為を処…