職權をもつて調査するに、原判決は「被告人は昭和二二年六月一六日岐阜地裁大垣支部に於て窃盗並に臓物故買罪により懲役一年罰金千圓に處せられ當時右懲役刑の執行を終つたものである」と判示し、昭和二三年三月九日頃行つた本件犯行について累犯加重の處遇をしているのである。しかるに原判文上も、亦それに採證せられている原審公判廷における被告人の供述並びに被告人に關する前科調書の記載によつても、右原判示前科の懲役刑が原判決の本件犯行時前にその刑の執行を終り又はその執行の免除を得たものであることを明らかにすることはできないのであつて、却つて前示前科調書の記載並びに被告人の原審公判廷における供述によると、前示前科の懲役刑は昭和二二年六月一八日に確定し、その後大赦も減刑も刑の執行の免除を得たものでもなく、したがつて翌二三年六月一七日に至りその刑期満了したものであることを推認することができるのである。尤も被告人は原審公判廷で昭和二二年一二月二五日假出獄した旨供述しているけれども、假出獄自体は減刑でもなく亦刑の執行の免除でもないことは論を俟たないところであり、又右假出獄は刑の執行を終つたものでないことも明らかである。しからば原審が判示前刑の假出獄の期間中に行つた本件犯行について、累犯加重の處遇をしたことは正に法令の適用を誤つたものであることは明らかであるから、原判決はこの點において破毀を免がれないものである。
假出獄期間中の犯行につき累犯の加重をした判決の違法
刑法28條,刑法56條,舊刑訴法360條1項
判旨
仮出獄中の者は、いまだ刑の執行を終えたものでも執行の免除を得たものでもないから、その期間内に犯した罪について累犯加重(刑法56条1項)を適用することはできない。
問題の所在(論点)
仮出獄中の犯行について、刑法56条1項の累犯加重の要件である「懲役の執行を終つた後又はその執行の免除を得た後」に該当するか否か。
規範
刑法56条1項にいう「懲役の執行を終つた」とは、刑期の満了等を指し、「その執行の免除を得た」とは、時効完成や恩赦等により刑を執行しないこととなった場合を指す。仮出獄は、刑の執行を停止し、更生を促す制度にすぎず、刑の執行そのものを終了させるものでも免除するものでもないため、仮出獄期間中の犯行に累犯加重は適用されない。
事件番号: 昭和27(あ)1043 / 裁判年月日: 昭和28年7月18日 / 結論: 棄却
前科が累犯加重の理由となるのは、前後の罪の刑がいずれも懲役刑であつて、前の罪の刑につき執行を終り又は執行の免除があつた日から五年以内にさらに後の罪を犯し懲役刑に処すべき場合であれば足りるのであり、後の罪につき右の五年以内に有罪判決の言渡があつたことを要するものでないと解するを相当とする。さればこの趣旨に出でた原判決は正…
重要事実
被告人は昭和22年6月16日に窃盗等により懲役1年の判決を受け、同年6月18日に刑が確定した。その後、被告人は同年12月25日に仮出獄したが、本来の刑期満了日は昭和23年6月17日であった。被告人は、仮出獄期間中である昭和23年3月9日頃に本件詐欺犯行に及んだが、原審はこの本件犯行について累犯加重を適用して処断した。
あてはめ
被告人の前科の刑期満了日は昭和23年6月17日であり、本件犯行(昭和23年3月9日頃)の時点ではいまだ刑期が満了していない。また、被告人は仮出獄中であったが、仮出獄は刑の執行の免除(恩赦等)にはあたらない。したがって、被告人が本件犯行時に「刑の執行を終つた」あるいは「免除を得た」状態にあったということはできず、累犯加重の前提条件を欠いている。これに累犯加重を適用した原判決は法令の適用に誤りがある。
結論
仮出獄中の犯行に累犯加重を適用することは認められない。原判決を破棄し、累犯加重を行わない法定刑の範囲内で被告人を懲役4月に処する。
実務上の射程
累犯加重の適用時期に関する基本判例である。答案上では、刑法56条1項の適用場面において、前科の執行が完全に終了しているか、あるいは免除されているかを厳格に判断する際の根拠として用いる。特に仮出獄中の犯行については、累犯ではなく併合罪(刑法45条後段)の問題となり得る点に注意を要する。
事件番号: 昭和23(れ)1805 / 裁判年月日: 昭和24年4月23日 / 結論: 棄却
しかし刑法第五六條に「五年内ニ更ニ罪ヲ犯シ」とあるのは五年の期間内に犯罪の着手があればよいので、その終了の時を標準とすべきものではない。そしてその犯罪が所論のような連続犯であつても連続犯の性質上その解釋を異にする理由がない。
事件番号: 昭和24(れ)1165 / 裁判年月日: 昭和24年9月20日 / 結論: 棄却
本件は被告人から第一審判決に對し上訴(控訴)を申し立て、第二審判決は第一審判決が有罪と認めた窃盜の點については無罪を言渡し、刑も第一審判決が懲役三年だつたのを、第二審判決は懲役一年六月に處したものであつて、すなわち被告人の控訴申立はその理由ありと認められたのである。ところで舊刑訴法第五五六條第一項によれば「上訴申立後ノ…