前科が累犯加重の理由となるのは、前後の罪の刑がいずれも懲役刑であつて、前の罪の刑につき執行を終り又は執行の免除があつた日から五年以内にさらに後の罪を犯し懲役刑に処すべき場合であれば足りるのであり、後の罪につき右の五年以内に有罪判決の言渡があつたことを要するものでないと解するを相当とする。さればこの趣旨に出でた原判決は正当であつて、これと異なる所論は独自の見解を主張するに過ぎず、採用のかぎりでない(昭和二三年(れ)第九七九号同年一一月一一日第一小法廷判決、集二巻一二号一五一八頁参照。)
前科が累犯加重されるには、後の罪につき、前の罪の執行終了時期から五年以内に有罪判決の言渡があつたことを要するか
刑法56条1項
判旨
累犯加重(刑法56条1項)の要件である「5年以内」とは、前の罪の刑の執行を終え又は免除された日から後の罪を犯した日までの期間を指し、判決言渡しがその期間内であることを要しない。
問題の所在(論点)
刑法56条1項にいう累犯加重の要件としての「5年以内」の意義について、後の罪の実行行為時を基準とすべきか、あるいはその判決言渡し時までをも含むべきかが問題となった。
規範
前科が累犯加重の理由となるためには、前後の罪の刑がいずれも懲役刑であることを前提として、前の罪の刑につき執行を終え又は執行の免除があった日から5年以内に、さらに後の罪を犯し、かつ後の罪が懲役刑に処すべきものであれば足りる。後の罪についての有罪判決の言渡しが、右の5年以内になされることまでは必要とされない。
重要事実
被告人は、過去の懲役刑の執行終了または執行免除の日から5年以内に新たな罪を犯した。弁護人は、累犯加重が適用されるためには、単に後の罪を犯すだけでなく、その有罪判決の言渡し自体も前の罪の執行終了等から5年以内に行われなければならないと主張して上告した。
あてはめ
刑法56条1項の文言上、累犯加重は「その執行を終わった日…から5年以内に更に罪を犯した」ときに成立すると規定されている。本件においても、被告人が前の罪の執行終了等から5年以内に後の罪を犯し、それが懲役刑に処すべきものである以上、累犯の要件を充足する。判決言渡しが5年経過後であっても、犯行自体が期間内であれば、累犯加重の適用を妨げるものではないと解される。
結論
累犯加重の適用に際し、後の罪の判決言渡しが5年以内であることを要しないとした原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
累犯の期間的要件の基準時を「実行行為時」と確定させた。実務上、公判が長引いた場合でも、犯行日が期間内であれば累犯加重が適用されることを確認する際に用いる。答案上は、累犯加重の成否が争点となる場合に、刑法56条1項の解釈として簡潔に引用すべき規範である。
事件番号: 昭和23(れ)1805 / 裁判年月日: 昭和24年4月23日 / 結論: 棄却
しかし刑法第五六條に「五年内ニ更ニ罪ヲ犯シ」とあるのは五年の期間内に犯罪の着手があればよいので、その終了の時を標準とすべきものではない。そしてその犯罪が所論のような連続犯であつても連続犯の性質上その解釋を異にする理由がない。