所論の物件は原判示事實の如くいずれも被告人が免許を受けずして輸入を圖つたもので被告人の占有に係るものであるから關税法第八三條第一項により没收すべきものであつて、その物件が犯人の所有であることは右規定による没收の要件ではないから原判決がこれを没收したのは正當である。
免許を受けないで輸入を圖つた被告人の占有に係る當該物件の没收と關税法第八三條第一項
關税法83條1項
判旨
関税法所定の没収の対象となる物件について、それが犯人の所有に属することは要件ではなく、犯人の占有に係るものであれば没収することができる。
問題の所在(論点)
関税法に基づき物件を没収する場合において、当該物件が「犯人の所有」に属することは没収の要件となるか。また、犯人の占有に係る物件であれば所有権を問わず没収できるか。
規範
関税法(昭和24年当時)の没収規定(旧83条1項)の適用にあたり、対象物件が「犯人の所有」であることは没収の必須要件ではない。当該物件が犯人の占有に係るものであり、かつ無免許で輸入を図ったなどの違法行為に関連するものであれば、所有権の帰属を問わず没収の対象となる。
重要事実
被告人は、免許を受けずに特定の物件を輸入しようとした。原判決は、当該物件が被告人の占有に係るものであることを証拠に基づき認定した上で、物件の没収を言い渡した。これに対し、被告人側は証拠に基づかない事実認定であること、および没収物件が被告人の所有物でないことを理由に上告した。
事件番号: 昭和28(あ)1294 / 裁判年月日: 昭和37年12月12日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】第三者の所有物を没収する場合において、当該第三者に対して告知、弁解、防御の機会を与える規定がないまま没収することは、憲法31条および29条に違反する。 第1 事案の概要:被告人が関税法違反等に問われた事案において、第一審判決は、博多税関支署が押収した貨物(ネクタイ、鉛筆、生地等)および船舶「F丸」…
あてはめ
本件において、問題となった物件はいずれも被告人が免許を受けずに輸入を図ったものであり、被告人の占有に係るものであると認められる。関税法旧83条1項の規定は、没収の要件として所有権の所在を求めていない。したがって、被告人の占有が認められる以上、それが第三者の所有物であったとしても、適法に没収することができると解される。
結論
被告人の占有に係る物件であれば、犯人の所有物でなくとも没収は正当である。したがって、本件没収は適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
行政刑罰における没収の要件について、所有権に限定せず占有を基準とした判例である。もっとも、本判決後に示された第三者所有物没収事件(最大判昭37.11.28)等の法理に鑑みれば、現代の答案構成においては、被告人以外の所有物を没収する際の適正手続(告知・弁解の機会の付与)の要否とあわせて検討すべき射程にある。
事件番号: 昭和29(あ)1237 / 裁判年月日: 昭和33年2月14日 / 結論: 棄却
所論A丸の没収につきその所有者が何人であるかの事実は、刑訴三三五条にいう罪となるべき事実に属しないから、これを認めた証拠を判決に挙示する必要はない。
事件番号: 昭和26(あ)5299 / 裁判年月日: 昭和28年9月11日 / 結論: 棄却
一 有税物件を密輸入しその関税を逋脱した以上、たといそれがいわゆる占領軍物資で、後に占領軍に引き渡されたとしても、関税逋脱罪が成立する。 二 訴訟において、最後的に確定しなければならない事実は、必ずしも直接証拠のみによつて、これを認定しなければならないものではなく、ある証拠によつて先ず他の事実を認定し、その事実からの推…