一 論旨は刑訴應急措置法第一二條第一項は憲法第三七條第二項に違反する規定であつて、同規定を適用し採證した原判決は違憲のものであるというにある。しかし刑訴應急措置法第一二條第一項が憲法に違反したものでないことは當裁判所の判例の示すところである(昭和二三年(れ)第八三三號同二四年五月一八日大法廷判決)従て同條に則り採證した原判決は憲法に違反するものではないから論旨は採用することができない。 二 被告人が犯罪を自白していない場合に共同被告人の供述だけで被告人を有罪となしうるかという問題と。共同被告人の供述で被告人の自白を補強しうるかという問題とは特別に考察しなければならない。本件の場合は後者の場合である。そして共同被告人の供述で被告人の自白を補強しうることは當裁判所がその判例で示した理由で明である(昭和二三年(れ)第一一二號同年七月一四日大法廷判決)原判決が所論共同被告人の供述記載のみで被告人を有罪としたものでないと同時に、論旨第三點で辯護人が主張しているとは異り被告人の自白だけで被告人を有罪としているものでもないことは判文自体で明である。 三 昭和二一年勅令第二七七號同第三一一號は何れも昭和二〇年九月二〇日勅令第五四二號に基く「ポツダム」宣言の受諾に伴い發する命令であることは所論の通りである。しかしいわゆる「ポツダム」命令が憲法違反のものでないことは裁判所の判例の示すところであるから、前記勅令所定の罰則により被告人を處斷したことは毫も憲法に違背するものではない論旨は理由がない。(昭和二二年(れ)第二七九號同二三年六月二三日大法廷判決)
一 刑訴應急措置法第一二條第一項の合憲性 二 被告人の自白と補強證據としての共同被告人の供述 三 昭和二〇年勅令第五四二號昭和二一年勅令第二七七號、同第三一一號の合憲性
憲法37條2項,憲法38條3項,憲法31條,刑訴應急措置法12條1項,昭和20年勅令542號,昭和21年勅令277號,昭和21年勅令311號
判旨
共同被告人の供述は、被告人自身の自白を補強する証拠となり得るとともに、被告人の自白が存在する場合には共同被告人の供述と相まって犯罪事実の認定に用いることができる。
問題の所在(論点)
被告人が犯罪事実を認めている場合に、共同被告人の供述を被告人の自白に対する補強証拠として用いることは許されるか。また、それは憲法38条3項の趣旨に反しないか。
規範
被告人の自白のみで有罪とされることを禁ずる補強法則(憲法38条3項、刑訴法319条2項)との関係において、共同被告人の供述は被告人の自白を補強する証拠(補強証拠)としての適格性を有する。
事件番号: 昭和23(れ)1846 / 裁判年月日: 昭和24年5月21日 / 結論: 破棄差戻
被告人等は本件物件を取得した相手方乘組員が商船の單なる乘組員であると信じていたもので、その乘組員が所論政令第一條にいわゆる連合國占領軍に附屬若しくは随伴する者に該當することを認識しなかつたことは記録に照し明かであると主張し從つて被告人等はその點に於て違法性の認識がなかつたに拘らず右政令違反として有罪と判定したのは違法で…
重要事実
被告人A及びBが、いわゆるポツダム命令(昭和21年勅令277号等)違反の罪に問われた事案。原審において、被告人の自白が存在し、その補強証拠として共同被告人の供述記載が採用され、有罪判決が下された。これに対し弁護人は、共同被告人の供述だけで有罪とすることの是非や、自白の補強証拠としての適格性を争い、憲法違反等を理由に上告した。
あてはめ
被告人が自白していない場合に共同被告人の供述のみで有罪とできるかという問題と、被告人の自白がある場合に共同被告人の供述を補強証拠にできるかという問題は別個に考慮されるべきである。本件は後者の場合であり、共同被告人の供述に補強証拠としての能力を認めることは、憲法の規定や刑事訴訟上の原則に照らしても正当である。原判決は共同被告人の供述のみで有罪としたわけではなく、また被告人の自白のみで有罪としたわけでもないため、証拠法則に違反する点はない。
結論
共同被告人の供述によって被告人の自白を補強し、有罪を認定することは適法である。
実務上の射程
本判決は共同被告人の供述が「補強証拠」になり得ることを認めたものである。なお、共犯者の供述が「自白」そのものに含まれるか(独立した補強証拠なしに共犯者の供述のみで有罪にできるか)という論点については、後の大法廷判決(最大判昭33.5.28)により、共犯者の供述は被告人の自白には含まれず、それのみで有罪認定が可能であると整理されているため、本判決の意義は「補強証拠としての利用可能性」を確認した点にある。
事件番号: 昭和26(れ)1121 / 裁判年月日: 昭和26年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が単独で犯罪を実行したとの認定に対し、共犯者の存在を示唆する主張がなされた場合であっても、それが単なる事実誤認の主張にとどまる限り、上告理由には当たらない。最高裁判所は、記録を精査した上で刑訴法411条を適用すべき著しい正義に反する事由がない限り、原判決を維持すべきである。 第1 事案の概要…
事件番号: 昭和23(れ)904 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 破棄自判
一 昭和二二年六月二七日から同年八月二五日までの間において行われた連合国占領軍の財産を不法に所持した行為は、昭和二一年勅令第三一一号第二条第三項、第四条を適用して処断すべきである。 二 證人申請の採否も原審の自由裁量に屬すること言うまでもないから、原審がそれを採用しなかつたからとて、憲法第三七條第一項の公平な裁判所の裁…
事件番号: 昭和26(れ)1282 / 裁判年月日: 昭和26年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の上告趣旨が単なる量刑不当の主張に帰する場合、刑事訴訟法応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を提起したが、その上告趣旨の内容は、結局のところ原判決の量刑が重すぎるという量刑不当の主張に帰するものであった。その他の適法な上告…
事件番号: 昭和26(あ)1517 / 裁判年月日: 昭和26年10月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】ポツダム宣言の受諾に伴い発せられたいわゆるポツダム勅令(昭和20年勅令第542号等)は、憲法に適合し、有効である。 第1 事案の概要:被告人は、昭和20年勅令第542号(ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件)及び昭和21年勅令第311号(連合国軍総司令官の要請に基づく命令の実施等に関する件…