(詐欺罪の目的物の數量につき)、原審は多少の計算違をしたものと思われるが全詐取量に比し右の如き極めて少數の計算違があつたからといつて其爲め判決主文に影響があつたものとは到底考へられない。從つて論旨は上告の理由とならない。
詐欺罪の目的物の數量についての多少の計算違と上告理由
刑法246條,刑訴法360條1項,刑訴法411條
判旨
判決における事実認定に多少の計算違いがあっても、全詐取量と比較して極めて少数の差異にすぎない場合には、判決主文に影響を及ぼす事由には当たらない。
問題の所在(論点)
判決が認定した犯罪事実(詐取数量)に計算上の誤りがある場合、それが直ちに判決に影響を及ぼすべき違法として破棄理由となるか。
規範
事実認定の誤りが控訴・上告理由となるためには、その誤りが判決の主文に影響を及ぼすことが必要である。認定された犯罪事実の分量や数量に僅かな誤差が生じていたとしても、それが事案の全体像や刑の量定に実質的な変化をもたらさない程度のものであれば、判決に影響を及ぼすべき違法とはいえない。
重要事実
被告人は昭和20年2月から同22年5月にかけて、他人2名の主食等を配給所から騙取した。原審は、証拠(始末書等)に基づき詐取した物の数量を認定したが、その計算過程において一部の品目(知麺)を書き落としたり、端数の計算を誤ったりした結果、認定された数量が実際の数量より僅かに少ない状態となっていた。
あてはめ
本件において、原審の認定には確かに計算違いが認められる。しかし、始末書に記載された「知麺」等の微量な品目の合算漏れや数キロ単位の誤差は、被告人が長期間にわたって継続した全詐取量と比較すれば、極めて少数の差異にすぎない。このような些末な数量の不一致は、詐欺罪の成否という結論や、科されるべき刑罰の重さを左右するほどの影響を持つものとは認められない。
結論
原審の計算違いは判決主文に影響を及ぼすものとは到底考えられないため、上告理由には当たらない。
実務上の射程
実務上、事実誤認の主張をする際には「主文に影響を及ぼすべきこと」が必要となる。本判例は、数量的な誤差が微細である場合に、主文への影響を否定する基準として援用できる。答案上は、認定事実の細部と主文の因果関係を論じる際の論拠として使用する。
事件番号: 昭和23(れ)838 / 裁判年月日: 昭和23年12月4日 / 結論: 棄却
一 裁判所はその基本たる事實關係の同一性を害せざる限りは、公訴事實として摘示せられた事實と、その態樣において異り、從つて適用法條を異にする事實を認定することができるのである。 二 控訴審は第一審の覆審であるから、控訴事實の同一性を害せざる限りは、第一審判決の認定した事實と差違のある事實を認定しても、すこしも差支えないの…