一 原判決は、その舉示する證據を綜合して、被告人は原審相被告人A第一審相被告人B外二名等と共謀して判示強盜行爲をなしたこと、殊に被告人も覆面をし割木棒を携えて現場にのぞんだ事實を確定したのであるから、かりに、被告人において直接被害者に對し判示のような脅迫をなし又は自から金品を奪取したことがないとしても、原判示のように他の共犯者において、これをなした事實がある以上、強盜の正犯としての責任を負はねばならないのであつて、(同旨昭和二二年(れ)第二〇三號事件、昭和二三年三月一三日言渡判決)原判決がこれに對して從犯に關する規定を適用しなかつたことは正當である。 二 原審第二回公判期日に際して、被告人に對する違法な召喚の手續がなされたかどうかは、本件記録上明らかでない。しかし、原審第二回公判調書によれば、被告人は右期日に公判廷に出頭し、召喚手續に關して、何ら、異議を申立てることもなく、取調を受けており、辯護人からも、その點について、異議を申立てた形跡はない。してみれば、記録上明らかなごとく、當時、被告人は高松刑務所に勾留されていたのであり、原審裁判所は高松高裁判所であるから、右公判期日の被告人に對する召喚の手續は、刑事訴訟法第八四條第三項に從つて、監獄官吏を經由して、適法に行われたものと認めるのが相當である。かかる場合に、召喚手續の履行について、これを記録上明らかにしなければならぬという法規はないのであつて、論旨のごとく、記録上何らかの形跡が認められないから、右召喚手續は適法に行われなかつたのであるという結論は、これを是認することはできない。
一 強盜の共謀と強盜の共同正犯 二 適当な召喚手續がなされたことが記録上明らかでない場合とその召喚手續の正否の判斷
刑法236條,刑法60條,刑訴法84條3項
判旨
共謀に基づく強盗において、被告人が現場で覆面をし武器を携えて加担した事実がある以上、直接の脅迫や金品奪取を行っていない場合でも、強盗の共同正犯としての責任を負う。また、拘禁中の被告人に対する召喚手続は、特段の異議なく出頭している等の事情があれば、記録上の形跡がなくとも適法に行われたものと推認される。
問題の所在(論点)
1. 実行行為の一部(脅迫・奪取)を直接行っていない共謀者が、強盗罪の共同正犯としての責任を負うか。2. 記録上召喚手続の履践が不明な場合に、召喚の適法性をどう判断するか。
規範
特定の犯罪を遂行する共謀に基づき、共同の意思の下に実行行為を分担した場合には、たとえ構成要件に該当する行為の一部を自ら直接的に行っていない者であっても、共謀共同正犯(刑法60条)として、正犯としての全責任を負う。
重要事実
被告人は、他の共犯者らと共謀の上、強盗を企てた。被告人は現場において覆面をし、割木棒(武器)を携えて臨んでいた。しかし、被告人自身は被害者に対して直接的な脅迫を行っておらず、また自ら金品を奪い取った事実もなかった。そのため、被告人は従犯にとどまるのではないかが争われた。また、原審の召喚手続が適法であったかについても記録上の不備から争点となった。
あてはめ
1. 被告人は共犯者らと強盗の共謀をしており、現場においても覆面をして武器(割木棒)を携えて臨んでいる。これは、強盗の実行に不可欠な役割を分担し、共同して犯行を遂行したといえる。したがって、他の共犯者が脅迫や奪取を行った以上、被告人自身がそれを行っていなくとも共同正犯の責任を負う。2. 被告人は当時刑務所に勾留中であり、監獄官吏を経由した召喚が可能な状況であった。実際に公判廷に出頭し、被告人も弁護人も召喚手続について何ら異議を述べていないことから、手続は適法に行われたと推認するのが相当である。
結論
被告人は強盗罪の正犯としての責任を負う。また、召喚手続に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
共謀共同正犯の成立要件(共謀、及びそれに基づく実行)を確認する初期の重要判例。現場に武器を持って臨むなどの行為が、直接の実行行為がなくとも正犯性を基礎づける事情となることを示している。また、刑事手続の適法性推認に関する実務上の取扱いも示唆している。
事件番号: 昭和22(れ)203 / 裁判年月日: 昭和23年3月13日 / 結論: 棄却
二人共謀して強盗をした場合に、その一人は、自ら暴行、脅迫又は財物奪取の行爲をしなくても、他の共犯者がこれをした事實がある以上、共に強盗の正犯として責任を負うべきである。