第二審裁判所は、覆審主義の下に事案の全般に亘つて新たに審理を爲し判決をするのであるから、第一審の手續及び判決における瑕疵は、それが第二審判決に影響を及ぼしその違法を招來しない限り、これを以て上告理由となし得ないことは多言を要しないところである。
第一審の手續及び判決の瑕疵と上告理由
刑訴法411條
判旨
旧刑事訴訟法下の覆審主義において、第一審判決に事実摘示等の瑕疵があったとしても、控訴審が独自の審理に基づき適法に判決を下し、その瑕疵が控訴審判決に影響を及ぼさない限り、上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
第一審判決に事実摘示の具体性を欠く等の手続上の瑕疵がある場合、その瑕疵が当然に控訴審判決を違法とし、上告理由となるか。
規範
覆審主義を採用する控訴審においては、事案の全般にわたって新たに審理を行い、自ら判決を下すものである。したがって、第一審の手続や判決に瑕疵が存在したとしても、その瑕疵が控訴審判決の結果に影響を及ぼし、控訴審判決自体を違法たらしめるものでない限り、当該瑕疵を理由として控訴審判決を破棄することはできない。
重要事実
被告人両名に対し、第一審が強盗致傷罪等の有罪判決を言い渡したが、その第一審判決には罪となるべき事実の摘示が具体的・明確でない等の不備(旧刑訴法360条違反)があった。控訴審において、検察官は右の不備ある第一審判決に基づいて公訴事実の陳述を行ったが、被告人側は公訴事実の内容を容易に了解して防御・弁論を尽くしており、控訴審(原審)は改めて独自の審理を経て犯行事実を認定し、実刑を言い渡した。
あてはめ
第一審判決に事実摘示の不十分な点があり、形式的には当時の刑訴法上の要請に副わない節がある。しかし、控訴審の公判手続において、被告人らは当該公訴事実の内容を十分に了解した上で防御を行っており、控訴審自体が公訴状記載の事実に基づき適法に審理を遂げている。このように、控訴審が独自の審理を経て適法に事実認定を行っている以上、第一審判決の瑕疵は控訴審判決に影響を及ぼすものではないといえる。
結論
第一審の瑕疵が控訴審判決に影響を及ぼさない本件においては、第一審の瑕疵を理由とする上告は理由がなく、棄却されるべきである。
実務上の射程
現行刑訴法は事後審主義を基本とするが、控訴審における訴訟手続の違法(379条)や判決後の事由等による破棄の判断において、第一審の瑕疵が判決に及ぼす影響の有無を検討する際の基本的視座として参考になる。特に、前審の不備が後審の適法な審理によって治癒・解消されるかという文脈で活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)5724 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において、第一審で適法に証拠調べが行われた鑑定書について改めて証拠調べを行わなくとも、事後審としての性格に鑑み違法ではなく、判断遺脱も認められない。 第1 事案の概要:被告人が心神喪失、心神耗弱、または緊急避難の成立を主張して上告した事案。第一審ではA医師の鑑定書について適法な証拠調べがなさ…
事件番号: 昭和26(れ)1659 / 裁判年月日: 昭和26年11月6日 / 結論: 棄却
判決の証拠説明に架空の証拠を挙げていても、それが誤記であること明らかで全然存在しないものであるときは、事実認定の心証に影響を及ぼす筈なく、従つて判決にも影響を及ぼす虞は全然ないものであるから、判決破棄の理由にならない。
事件番号: 昭和23(れ)745 / 裁判年月日: 昭和23年12月14日 / 結論: 棄却
一 連續一罪を構成すべき數多の行爲を判示するには各個の行爲の内容を一々具體的に判示することを要せず數多の行爲に共通した犯罪の手段方法その他の事實を具體的に判示する該其連續した行爲の始期終期、回數等を明らかにし且つ財産上の犯罪であつて被害者又は賍額に異同があるときは被害者中ある者の氏名を表示する外他は員數を掲げ賍額の合計…