「旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則」第六条により、判決の事実の摘示証拠の説明として、「罪となるべき事実は原審判決に記載してある通りであつて、右は控訴申立人において不服のないところである」と記載した控訴審判決は、右規則第五条に則つて、被告人に不服のない限度において、第一審判決の認定した事実によつた旨を明らかにしたものであつて、控訴審における被告人の自白で犯罪事実を認定した趣旨ではない。
「旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則」第六条によつて事実の摘示証拠の説明を記載した判決の趣旨
旧刑訴事件の上訴審における審判の特例規則5条,旧刑訴事件の上訴審における審判の特例規則6条,旧刑訴法360条1項,新刑訴法335条1項
判旨
旧法事件の控訴審において、被告人が第一審判決の事実認定に不服がない場合、控訴審判決が不服のない限度で第一審の認定事実に依拠し、その旨を明示することは適法である。
問題の所在(論点)
被告人が第一審の事実認定を争わず量刑のみを不服としている場合において、控訴審が第一審の認定事実にそのまま依拠して判決を下すことが許されるか。また、それが手続的に妥当であるための要件が問題となる。
規範
控訴審において被告人が第一審の事実認定を争わず、量刑の不当のみを主張している場合には、裁判所は被告人の不服のない限度において第一審判決が認定した事実をそのまま基礎として判決をすることができる。この際、判決においてその趣旨を明らかにしていれば、手続上の違法は認められない。
重要事実
被告人は、第一審判決に対して控訴を申し立てたが、その趣旨は専ら第一審判決の量刑を不当として寛大な裁判を求めるものであった。被告人は第一審が認定した事実については何ら不服がないことが公判調書により明らかであったため、原審は特例規則に基づき、第一審の認定事実に依拠して判決を下し、その旨を判決書に記載した。これに対し、弁護人が憲法違反等を理由に上告した事案である。
あてはめ
本件において、被告人の控訴趣旨は量刑不当に限定されており、事実認定については不服がないことが公判調書から明瞭に認められる。原審は「旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則」に従い、不服のない範囲内で第一審の事実を基礎としている。また、同規則に従って判決中にその旨の趣旨も明示されている。したがって、原審の判断枠組みや手続に違法な点は認められず、被告人が主張する違憲論はその前提を欠くといえる。
結論
被告人が事実認定を争わない場合、控訴審が第一審の認定事実に依拠して判決をすることは適法であり、上告を棄却すべきである。
実務上の射程
旧法下の規則に基づく判断ではあるが、事後審的性格を有する現行法の控訴審においても、控訴趣旨に含まれない事項についての事実認定の在り方を検討する際の参考となる。特に、被告人の不服の範囲が明確である場合の審判対象の限定に関する議論に資する。
事件番号: 昭和26(あ)3108 / 裁判年月日: 昭和26年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決は被害者の証言のみを根拠として有罪を認定したものではなく、全証拠を総合して被告人の犯行を認定しているため、証拠の評価に憲法違反の疑いはない。 第1 事案の概要:被告人が特定の犯行について起訴された事案において、原判決が被害者の証言を証拠として採用し、有罪判決を下した。これに対し、弁護側は、原判…