一 原審第二回公判調書のはじめに「八月三〇日」とありその末尾に年月日が書いてないことは指摘された通りであるが、記録全体から綜合すると、右「八月三〇日」は「九月二〇日」の誤記でありすなわち八月三〇日のは第一回公判で、その時にはAは出頭しなかつたが、第二回公判は九月二〇日で、それにはAが出頭していること明白であるから原審が事實の審理をしないで判決を下をしたわけではない。そして調書に多少の誤記遺漏があつてもその證據力を害するものでないことについては大審院以來の判例がある。 二 第二回第三回公判調書を見ても被告人Aに對し控訴の趣旨をたずねていないが控訴審に於いて審理のはじめに控訴の趣旨をたずねることは舊刑事訴訟法の要求するところでなく、ただ裁判所が取調の都合上、爭點を明らかにし控訴人の不服の範圍程度をあらかじめ知つて置こうとするだけの意味であるからそれをしなかつたから違法だとは言えない、すでに當裁判所にその趣旨の判例がある。(昭和二三年(れ)第五八七號同年九月九日第一小法廷判決) 三 公判請求書記載の犯罪事實を讀み聞かせなければ第一審公判請求書中にある公判請求書記載の犯罪事實を認めたという被告人の供述の内容が不明であるので、かかる公判調書については適法な證據調べがなされたこととならず、従つてこれを證據に引用することの違法であることもいうを俟たない。(昭和二三年(れ)第一八二號同年五月四日第三小法廷判決) 四 しかし本件における問題は拳銃の所持そのものであつて、その拳銃をその人が所持していたということが證明されれば、その所持の場所はさしたる問題でないから、原判決破毀の理由となるほどの缺點とも言はれまいと思う。 五 相被告人の一人につき公判手續の違法を理由として判決を破毀するときは、他の相被告人の上告論旨にその事がなくとも、その公判調書中の供述を證據とした以上舊刑事訴訟法第四五一條によりその被告人についても破毀をなすべきものという趣旨の當裁判所の判例がある。(昭和二三年(れ)第七〇三號同年一〇月三〇日第二小法廷判決)
一 誤記遺漏がある公判調書の證據力 二 控訴審において審理の始め被告人に控訴の趣旨についての陳述を求めることの意味 三 公判請求書の記載を引用した公判調書を證據としながらその公判請求書の證據調をしないため判決の違法を來す一場合 四 拳銃所持の場所についての判決の誤りと上告理由 五 違法な公判手續における相被告人の供述を證據とした判決と破毀理由の共通
舊刑訴法60條1項,舊刑訴法71條,舊刑訴法72條,舊刑訴法411條,舊刑訴法394條,舊刑訴法407條,舊刑訴法345條,舊刑訴法336條,舊刑訴法340條1項,舊刑訴法360條1項,舊刑訴法451條,銃砲等所持禁止令1條
判旨
被告人の供述内容を特定するための前提となる書面(公判請求書等)について適法な証拠調べを欠いた場合、その供述を証拠として採用することは許されず、この違法が共同被告人に共通する場合には、当該被告人の上告理由に含まれずとも破棄を免れない。
問題の所在(論点)
適法な証拠調べ手続を経ていない書面を事実認定の基礎とすることの可否、および共同被告人の一方について生じた証拠調べの違法が他方の被告人に及ぼす影響。
事件番号: 昭和57(あ)254 / 裁判年月日: 昭和57年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】別件逮捕・勾留の違法性が主張されたとしても、原判決が証拠の信用性判断の過程でその目的の存否に言及したにとどまる場合には、捜査自体の憲法適合性を判断したものとはいえず、違憲を理由とする適法な上告理由にはあたらない。 第1 事案の概要:被告人が逮捕・勾留された際、その目的が不当であったとして弁護人が違…
規範
証拠調べの手続が適法に行われない限り、その資料を断罪の資に供することはできない。特に、先行する書面(公判請求書等)の記載内容を前提とする被告人の供述については、当該書面の内容を読み聞かせる等の手続を行わなければ供述内容が不明であり、適法な証拠調べがなされたとは認められない。また、一人の被告人について生じた公判手続の違法が、証拠の共通性等により他の共同被告人にも共通する場合には、当該他被告人との関係でも判決を破棄すべきである。
重要事実
被告人A及びBが銃砲等所持禁止令違反等で起訴された事案。原審は、拳銃がBから第三者を経てAの所持に移った事実を認定する際、Bに対する「公判請求書」を証拠の一つとした。しかし、公判記録上、検察官による公訴事実の説明や、裁判長による内容の読み聞かせ等の証拠調べ手続(旧刑事訴訟法340条、347条等に相当する手続)が行われた形跡がなかった。また、原判決はA・B両名の犯罪事実を同一の証拠説明により一括して認定しており、当該公判請求書は、拳銃が所持禁止対象の危険力を備えているかという重要事項に関わるものであった。
あてはめ
本件において、原審は公判請求書の読み聞かせ等の手続を一切行っておらず、これに基づき被告人が事実を認めたとしても、その具体的な供述内容は不明である。したがって、かかる手続を欠いたまま公判請求書を証拠に引用することは、適法な証拠調べを経ない証拠によって事実を認定した違法がある。また、この証拠は拳銃の危険性という重要事実に係るものであり、AとBの事実認定が共通の証拠説明によりなされている以上、Bについて生じた上記違法は共同被告人Aにも共通する破棄事由となる。
結論
適法な証拠調べを経ない書面を証拠とした原判決には、判決に影響を及ぼすべき法令違反がある。よって、被告人Bにつき原判決を破棄し、その破棄事由が共通する被告人Aについても同様に原判決を破棄し、審理を差し戻す。
実務上の射程
証拠裁判主義の観点から、書面や供述を証拠とする際の「適法な証拠調べ」の重要性を強調する判例。現行刑事訴訟法下においても、被告人の供述調書等を証拠とする際に前提となる客観的状況の特定を欠いた場合の証拠能力の否定や、共同被告人間の証拠の共通性に基づく破棄(刑訴法413条、414条等)の議論において参考となる。
事件番号: 昭和30(あ)2287 / 裁判年月日: 昭和32年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は裁判所が必要と認めた証人の尋問について規定したものであり、被告人側の証人申請を裁判所が必ず採用しなければならない義務を課すものではない。また、一個の犯罪事実の認定において、共謀や実行行為等の構成要件ごとに証拠を区別して挙示する必要はなく、総合して犯罪事実を認定するに足りる証拠の標目…
事件番号: 昭和22(れ)230 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
一 憲法第三七條第二項は、不正不當の理由に基かざる限り辯護人の申請した證人はすべて裁判所が喚問すべき義務があるという趣旨に解すべきではない。 二 原審が辯護人のした證人申請を却下しても、事件の具體的性質、環境其の他諸般の事情を斟酌し、該證人の喚問は必ずしも裁判に必要適切なものでないと認めても實驗則に反しない以上右却下は…
事件番号: 昭和32(あ)3258 / 裁判年月日: 昭和33年5月24日 / 結論: 棄却
町村合併によつて新たに成立した町の町役場戸籍課長兼広報宣伝係である地方公務員が、その町の分町活動の活溌化に対抗し町を育成一本化するため分町反対派の町議会議員有志の結成した町育成本部なる団体の依頼により、町村合併による大町村の有利な所以を宣伝放送する行為は、地方公務員法第三五条及び第三六条に違反しない
事件番号: 昭和31(あ)2519 / 裁判年月日: 昭和31年11月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法382条の2に基づき事実誤認を主張する場合、控訴審において新たな証拠調べを求めるには、同条所定の疎明資料の提出を要する。必要な資料を提出せずにされた証人尋問の申請を却下することは、適法な証拠決定であり違法ではない。 第1 事案の概要:弁護人が、控訴趣意書において事実誤認を主張し、その立証…