判旨
刑事訴訟法382条の2に基づき事実誤認を主張する場合、控訴審において新たな証拠調べを求めるには、同条所定の疎明資料の提出を要する。必要な資料を提出せずにされた証人尋問の申請を却下することは、適法な証拠決定であり違法ではない。
問題の所在(論点)
控訴審において、事実誤認を立証するために証人尋問を申請する際、刑事訴訟法382条の2に定める疎明資料を提出しなかった場合に、裁判所が当該申請を却下することは違法か。また、それが刑事訴訟法405条の上告理由となるか。
規範
控訴審において事実誤認を理由に控訴を申し立てる際、第一審の判決後に現れた事実や証拠によってこれを立証しようとする場合には、刑事訴訟法382条の2に基づき、当該証拠によって証明しようとする事実が第一審判決後のものであること、または第一審においてやむを得ない事由により提出できなかったことを疎明する資料を提出しなければならない。これらの手続を欠いた証拠調べの申請は、裁判所の裁量により適切に却下され得る。
重要事実
弁護人が、控訴趣意書において事実誤認を主張し、その立証のために証人Aの尋問を申請した。しかし、弁護人は刑事訴訟法382条の2が規定する、新たな証拠を提出するために必要とされる疎明資料を裁判所に提出していなかった。これを受けて、原審(控訴審)は当該証人尋問の申請を却下し、被告人の上告に至った。
あてはめ
本件において、弁護人は事実誤認を主張しながらも、その裏付けとなるべき証人Aの申請に際し、刑事訴訟法382条の2所定の資料を提出していない。同条は、控訴審の事後審的性格に鑑み、証拠提出の制限を設けているところ、所定の手続を履践しない以上、裁判所には当該証拠を調べる義務は生じない。したがって、資料欠如を理由とする証拠申請の却下は適法な手続に則ったものであり、訴訟法違反等の違法は認められない。
結論
刑事訴訟法382条の2に基づく必要資料を提出しないで行われた証人尋問の申請を却下した原判決に違法はなく、上告は棄却される。
事件番号: 昭和30(あ)2287 / 裁判年月日: 昭和32年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は裁判所が必要と認めた証人の尋問について規定したものであり、被告人側の証人申請を裁判所が必ず採用しなければならない義務を課すものではない。また、一個の犯罪事実の認定において、共謀や実行行為等の構成要件ごとに証拠を区別して挙示する必要はなく、総合して犯罪事実を認定するに足りる証拠の標目…
実務上の射程
控訴審における証拠申請の制限に関する判例であり、答案上は控訴審の構造(事後審制)や382条の2の適用場面で言及すべきである。新証拠の提出が「やむを得ない事由」に基づくこと等の疎明が欠けている場合、裁判所の証拠却下を正当化する論理として活用できる。
事件番号: 昭和22(れ)230 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
一 憲法第三七條第二項は、不正不當の理由に基かざる限り辯護人の申請した證人はすべて裁判所が喚問すべき義務があるという趣旨に解すべきではない。 二 原審が辯護人のした證人申請を却下しても、事件の具體的性質、環境其の他諸般の事情を斟酌し、該證人の喚問は必ずしも裁判に必要適切なものでないと認めても實驗則に反しない以上右却下は…
事件番号: 昭和28(あ)1438 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項前段は、被告人が申請したすべての証人を裁判所が取り調べる義務を課しているものではなく、証拠採用の是非は裁判所の裁量に委ねられている。 第1 事案の概要:被告人側は、特定の証人の取調べを申請したが、裁判所がこれを採用しなかった。弁護人は、この裁判所の措置が、被告人の証人喚問権を保障した…
事件番号: 昭和32(あ)3258 / 裁判年月日: 昭和33年5月24日 / 結論: 棄却
町村合併によつて新たに成立した町の町役場戸籍課長兼広報宣伝係である地方公務員が、その町の分町活動の活溌化に対抗し町を育成一本化するため分町反対派の町議会議員有志の結成した町育成本部なる団体の依頼により、町村合併による大町村の有利な所以を宣伝放送する行為は、地方公務員法第三五条及び第三六条に違反しない
事件番号: 昭和43(あ)130 / 裁判年月日: 昭和44年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】常習特殊窃盗罪等の常習性認定において、判決書に常習性を認定すべき証拠を具体的に示さなかったとしても、直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人が常習特殊窃盗罪等の罪に問われた事案において、原判決が犯行の常習性を認定するに際し、その根拠となる証拠を判決書に具体的に示さなかった。これに対し、弁…