一 新刑訴第四一一條ば上告裁判所の職權事項としての規定であつて上告申立理由としての規定でないことは、既に當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一五七七號、同二四年五月一八日大法廷判決) 二 量刑不當を上告裁判所の審判事項とするや否やは、一に裁判所の審級制度並びにその事物の管轄に關する訴訟制度上に關する問題であつて、憲法適否の問題でないとの解釋も亦當裁判所屡次の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第四三號、同年三月一〇日大法廷判決參照) 三 刑訴施行法第二條の規定、即ち昭和二三年一二月三一日までに公訴の提起のあつた事件については、舊刑訴法並びに刑訴應急措置法に依り審判すべきであるとの規定が、憲法違反の規定でないことも亦當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一五七七號昭和二四年五月一八日大法廷判決)
一 新刑訴第四一一條と上告申立理由 二 量刑不當と上告理由 三 刑訴施行法第二條の合憲性
新刑訴法411條,刑訴應急措置法13條2項,刑訴施行法2條,憲法31條
判旨
憲法14条1項の「社会的身分」には、前科や少年法上の保護処分を受けたことなどの法律上の身分は含まれない。したがって、過去の保護処分の経歴を量刑上の判断材料として考慮することは、法の下の平等に反しない。
問題の所在(論点)
刑事裁判の量刑判断において、過去に少年法に基づく保護処分を受けた事実を斟酌することは、憲法14条1項の「社会的身分」による差別に該当し、法の下の平等に反するか。
規範
憲法14条1項が規定する「社会的身分」とは、人が社会において占める継続的な地位を指すが、刑罰に処せられたことや少年法上の保護処分に付されたことのような「法律上の身分」までは包含しない。また、少年法上の資格回復に関する規定(旧14条1項、現60条1項参照)は、人の資格に関する法令の適用に関するものであり、刑の執行猶予等の量刑判断において過去の経歴を斟酌することを禁止するものではない。
重要事実
被告人は少年時代に少年保護司の調査を受け、少年審判所による保護処分を受けた経歴があった。本件の刑事裁判において、裁判所は被告人の身上調書を取り調べ、過去の保護処分の事実を把握した。第二審裁判所は、共犯者2名には執行猶予を付した一方で、被告人に対しては執行猶予を付さなかった。被告人側は、過去の保護処分を理由に差別的な量刑がなされたことは、憲法14条1項および少年法の規定に違反すると主張して上告した。
あてはめ
被告人が主張する「保護処分を受けた経歴」は、過去の法的措置の結果として生じた法律上の状態にすぎず、憲法14条1項が差別の禁止対象として列挙する「社会的身分」には当たらない。また、裁判所が身上調書等に基づき、更生可能性や反社会的性格を判断する一要素として過去の非行歴や保護処分歴を考慮することは、適正な量刑を行うための合理的な裁量の範囲内である。本件において共犯者と異なる結論(執行猶予の不付与)に至ったとしても、それは個別の情状を反映した結果であり、不当な差別とはいえない。
結論
過去の保護処分歴を量刑の判断材料とすることは、憲法14条1項に違反しない。また、少年法の規定(資格回復等)にも抵触しないため、本件の量刑判断は適法である。
実務上の射程
憲法14条1項の「社会的身分」の意義(後天的・法律的身分の除外)を定義する際の基礎判例として活用できる。答案上では、前科による不利益取扱いが「不合理な差別」に当たるか否かを論ずる際、まずは「社会的身分」に該当しないことを示し、その上で目的・手段の合理性審査に移行するための論拠として重要である。
事件番号: 昭和26(あ)4234 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】個別の犯人に対する量刑の差異は、特別予防および一般予防の要請に基づく合理的な区別であり、憲法14条に反しない。執行猶予期間中の再犯という犯情を重視して量刑を判断した原判決に違憲の点はない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗の罪を犯し、その刑の執行猶予期間中であったにもかかわらず、さらに本件犯行に及ん…