しかし所論覺書は、内務省警保局長に宛てたものであり、その趣旨は同覺書所定の要件を備えたものに對しては、訴追を見合わすべきことを命じたものであつて、既に銃砲所持禁止令違反の罪により公訴を提起されたものに對しその公訴權を消滅せしめ、若くは、一旦成立した犯罪の成否に影響を及ぼすものではないのである。(當裁判所昭和二三年(れ)一二一五號、昭和二四年五月一四日言渡第二小法廷判決参照)
右覺書の趣旨と既に公訴を提起された銃砲等所持禁止令違反の罪に對する影響
銃砲等所持禁止令1條1項
判旨
行政庁内部の通達(覚書)に基づく訴追の見合わせ指示は、既に提起された公訴権を消滅させたり、成立した犯罪の成否に影響を及ぼしたりする法的効力を有しない。
問題の所在(論点)
行政庁内部で発せられた「訴追を見合わせるべき」旨の覚書が、既に提起された公訴の存続(公訴権の消滅)や、成立した犯罪の有罪判決の可否に影響を及ぼすか。
規範
行政機関内部で発せられた訴追見合わせの指示(通達・覚書等)は、あくまで行政庁内部の職務命令に準ずるものであり、裁判所による司法権の行使、特に既に適法に提起された公訴の効力や、実体法上の犯罪の成否を左右する法的な拘束力を有するものではない。
重要事実
被告人は銃砲等所持禁止令違反の罪により公訴を提起されたが、その後、内務省警保局長宛の覚書において、一定の要件を備えた者については訴追を見合わせるべき旨の指示が出された。被告人はこの覚書の存在を理由に、自らに対する有罪判決には違法があると主張して上告した。
事件番号: 昭和23(れ)1915 / 裁判年月日: 昭和24年5月14日 / 結論: 棄却
昭和二三年二月二四日、米國第八軍司令部より發せられた日本の刀劍並びに銃砲の回収類別及び處分に關する日本政府内務省警保局長宛の覺書により、刀劍並びに銃砲の登録申請の受付及び處理は、同年六月一日迄延長されたことは所論の通りであるが、同覺書によれば、右延長期間中になすべき申請には昭和二一年勅令第三〇〇號に規定された本來の期間…
あてはめ
本件覚書は内務省警保局長に宛てられた行政内部の文書であり、その内容は訴追の運用に関する不作為を命ずるに過ぎない。したがって、適法に提起された公訴を消滅させる実効的な法的根拠とはなり得ず、また、構成要件に該当する事実が存在する以上、犯罪の成否に影響を与えるものではない。原審が当該覚書に拘束されず有罪判決を維持したことは正当であると判断される。
結論
行政上の訴追見合わせ指示は、既になされた公訴提起の効力や犯罪の成立を妨げるものではないため、被告人を有罪とした原判決に違法はない。
実務上の射程
行政通達や内部規定は裁判所を拘束しないという「通達の法的性質」に関する基礎的判例である。答案上では、行政指導や内部基準に反してなされた訴追や処分の有効性を論じる際、公訴権濫用論の文脈等で、形式的な法拘束力の欠如を指摘する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1467 / 裁判年月日: 昭和25年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲等所持禁止令違反の罪が成立した後に発せられた行政命令(覚書)は、既存の処罰法令の効力を左右するものではなく、既に提起された公訴権や成立した罪の成否に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人は昭和20年9月の復員時に上官から日本刀を譲り受け、所持が禁じられていることを認識しながら所持を継続し…
事件番号: 昭和24(れ)1137 / 裁判年月日: 昭和24年9月29日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令第一條違反の犯罪は、所定の刀劍類を所持するを以て成立し、ただその所持當時同條但書の事由あるときはその犯罪の成立を阻却するに過ぎないものである。されば刀劍の所持當時同條但書所定の許可がない以上、たとい許可申請の意思がありしかも不可抗力的事情で許可申請をすることができなかつたといつて、犯意なしというない…
事件番号: 昭和23(れ)1121 / 裁判年月日: 昭和24年4月2日 / 結論: 棄却
假りに所論のように昭和二三年五月一五日頃所轄警察署へ届出るつもりであつたのが檢舉のために不可能になつたのであるとしても處罰を免るべき權利を強制的に喪失せしめたのでないことは勿論であり被告人に對し刑罰を科することが前記覺書の趣旨に背反しないことも明白である、又前記覺書所定の要件を充して處罰せられないものが他にあるからとい…
事件番号: 昭和25(れ)727 / 裁判年月日: 昭和25年7月20日 / 結論: 棄却
米國八軍司令部から内務省警保局長宛の昭和二三年二月二四日附「日本の力劍並びに銃砲の回收類別及び處分」と題する司令は單に捜査機關に對する行政的命令たる性質を有するものであつて、同覺書にいわゆる「懲罰手段に出てはならないとの趣旨は所定の事情である場合には訴追に關する手續の實行を見合はすべしとの意味のものであるから、既に訴追…