判旨
銃砲等所持禁止令違反の罪が成立した後に発せられた行政命令(覚書)は、既存の処罰法令の効力を左右するものではなく、既に提起された公訴権や成立した罪の成否に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
刑罰法令違反として公訴が提起された後に、当該法令の運用に関する行政上の覚書(届出手続等)が発せられた場合、既に成立した犯罪の成否や公訴権の存続に影響を及ぼすか。
規範
特定の行政命令(覚書)は捜査機関に対する行政上の指針にすぎず、刑罰法令の効力を変更する性質を持たない。したがって、法令違反により既に成立した犯罪の成否や、適法に提起された公訴の効力が、後の行政命令によって遡及的に消滅または変更されることはない。
重要事実
被告人は昭和20年9月の復員時に上官から日本刀を譲り受け、所持が禁じられていることを認識しながら所持を継続した。昭和22年7月19日、銃砲等所持禁止令違反で起訴されたが、その後、昭和23年2月24日になって刀剣所持の届出等に関する行政上の覚書が発せられた。弁護人は、当該覚書の手続をとる余地があること等を理由に、処罰の不当性や憲法違反を主張した。
あてはめ
被告人の日本刀所持行為は、昭和21年勅令第300号(銃砲等所持禁止令)に抵触し、起訴時点で既に犯罪として完結している。その後に出された覚書は、捜査機関に対する行政命令としての性格を有するにとどまり、同勅令の効力自体を改廃するものではない。また、公訴提起後に生じた行政上の手続変更は、既に適法に開始された公訴手続を妨げる法的根拠にはなり得ない。したがって、原審が同勅令を適用して被告人を処断したことに憲法違反や違法性は認められない。
結論
行政命令の存在は既成の犯罪成立や公訴の効力に影響しないため、被告人を処断した原判決は正当である。
実務上の射程
事件番号: 昭和23(れ)1915 / 裁判年月日: 昭和24年5月14日 / 結論: 棄却
昭和二三年二月二四日、米國第八軍司令部より發せられた日本の刀劍並びに銃砲の回収類別及び處分に關する日本政府内務省警保局長宛の覺書により、刀劍並びに銃砲の登録申請の受付及び處理は、同年六月一日迄延長されたことは所論の通りであるが、同覺書によれば、右延長期間中になすべき申請には昭和二一年勅令第三〇〇號に規定された本來の期間…
法令違反が成立し起訴された後の行政的な運用変更や手続的救済措置の提示が、当然に実罰を免れさせるものではないことを示す。事後的な行政措置による刑罰権への影響を否定する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1902 / 裁判年月日: 昭和24年5月14日 / 結論: 棄却
しかし所論覺書は、内務省警保局長に宛てたものであり、その趣旨は同覺書所定の要件を備えたものに對しては、訴追を見合わすべきことを命じたものであつて、既に銃砲所持禁止令違反の罪により公訴を提起されたものに對しその公訴權を消滅せしめ、若くは、一旦成立した犯罪の成否に影響を及ぼすものではないのである。(當裁判所昭和二三年(れ)…
事件番号: 昭和25(れ)1212 / 裁判年月日: 昭和25年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決における「罪となるべき事実」とは、構成要件に該当する事実、違法性及び責任を基礎付ける事実を指し、その他の情状や証拠の評価に関する事項については、判決にその判断を明記することを要しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、原判決が特定の事項について判断を記さなかったこ…
事件番号: 昭和24(れ)1137 / 裁判年月日: 昭和24年9月29日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令第一條違反の犯罪は、所定の刀劍類を所持するを以て成立し、ただその所持當時同條但書の事由あるときはその犯罪の成立を阻却するに過ぎないものである。されば刀劍の所持當時同條但書所定の許可がない以上、たとい許可申請の意思がありしかも不可抗力的事情で許可申請をすることができなかつたといつて、犯意なしというない…
事件番号: 昭和23(れ)685 / 裁判年月日: 昭和23年11月2日 / 結論: 棄却
刀劍所持許可願書の提出を、昭和二一年勅令第三〇〇號に規定された本來の提出期間中になさず、その延長期間中になした場合に、本來の期間中に登録しなかつたことにつき相當の理由あることの釋明書が添えられてない場合には、申請者に對し懲罰手段に出ることは違法でないから、之に對し原審が懲役刑を科したことは適法な上告理由とならない。