原審においては所論のような公訴にかかる事實全體に付いて審理をした結果、被害者を傷けたという事實のみを認めて物を強取したという事實はこれを認めなかつただけであつて強盜の點に審理をしなかつたわけではない、そして一罪として起訴された事實中の一部を認めなかつた場合に特にこれに付いて判斷を示す必要はないものであるから論旨は理由がない。しかのみならず強盜に關する部分の判斷を遺脱したという論旨は被告人に不利益な主張となるから上告適法の理由とならないものである。
強盜傷人の起訴事實につき傷害の點のみを有罪と認めた判決と上告理由
舊刑訴法360條1項,舊刑訴法410條18號,刑法240條,刑法204條
判旨
一罪として起訴された事実の一部が認められない場合、判決においてその部分につき明示的に無罪の判断を示す必要はない。また、強盗等の有罪判断を求めるような被告人に不利益な主張は、上告理由とならない。
問題の所在(論点)
一罪として起訴された事実の一部が認められない場合、裁判所はその部分について明示的な判断を示す義務を負うか。また、被告人にとって不利益な判断の遺脱を上告理由とできるか。
規範
単一の公訴事実(一罪)として起訴された事実の一部について、審理の結果、犯罪の証明がないと判断した場合であっても、残部について有罪を認める限り、認められない部分について判決主文や理由中で特段の判断(無罪の宣告等)を示す必要はない。
重要事実
被告人は強盗傷人等の罪で起訴されたが、原審は審理の結果、被害者を傷つけた事実(傷害)のみを認定し、物を強取した事実(強盗)については認めなかった。これに対し弁護人は、強盗の点について審理・判断を遺脱した違法があるとして上告した。
あてはめ
本件において、原審は公訴事実全体を審理した上で、強取の事実を否定し傷害の事実のみを認定しており、審理を尽くしていないわけではない。一罪の一部が否定されたに過ぎない場合、その否定された部分について個別に判断を示す必要はないといえる。また、強盗部分の判断遺脱を主張することは、被告人により重い罪の成立を求めることに等しく、被告人の利益を保護する上告制度の趣旨に照らし、適法な上告理由とはならないと解される。
結論
一部の事実が認められない場合でも個別の判断を示す必要はなく、また被告人に不利益な主張は上告理由とならないため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法における「判決の構成」および「上告利益」に関する判例である。一税の一部について無罪となるべき場合でも、残部で有罪となるなら主文で無罪を掲げる必要はない(いわゆる「理由中無罪」も不要)という実務慣行を肯定する。答案上は、訴因変更の要否や判決の確定範囲、上告適格の検討において参照すべきである。
事件番号: 昭和23(れ)1861 / 裁判年月日: 昭和24年4月30日 / 結論: 棄却
自白を補強する証拠は、必ずしも自白にかかる犯罪構成事実の全部にわたる必要はなく、自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであれば足りる。