被告人勾留中における檢事の聽取書を證據に取つても違憲でないこと及犯意だけに付ては自白が唯一の証據であつても違憲でないことは既に當裁判所大法廷判決によつて明にされて居る。(昭和二三年(れ)第四三一號事件同年一二月二七日言渡大法廷判決、昭和二二年(れ)第一五三號事件同二三年六月九日言渡大法廷判決參照)
勾留中における檢事の聽取書の證據能力及び犯意について自白が唯一の證據である場合と憲法第三八條第二項第三項
憲法38條2項,憲法38條3項,刑訴應急措置法10條2項,刑訴應急措置法10條3項
判旨
被告人勾留中における検事の聴取書の証拠採用は違憲ではなく、また、犯意のみについては自白が唯一の証拠であっても憲法38条3項(自白の補強証拠の要否)に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 勾留中の検察官による聴取書を証拠とすることの合憲性(旧法下の運用と憲法の関係)。 2. 憲法38条3項における「自白の補強証拠」は、客観的犯罪事実に加えて主観的要素(犯意)についても必要とされるか。
規範
1. 被告人勾留中の検察官調書を証拠とすることは憲法に違反しない。 2. 補強証拠を必要とする自白の範囲について、犯意(主観的要素)に関しては、自白が唯一の証拠であっても、補強証拠を要さず、憲法38条3項に違反するものではない。
重要事実
被告人A及びBは共謀の上で強盗を行ったとして起訴された。原審は、被告人の自白、検察官作成の聴取書(調書)、被害届等の証拠に基づき、強盗の事実を認定して有罪判決を下した。これに対し、被告人側は、勾留中の検事調書を証拠とすることの違憲性や、犯意について自白のみで認定することの違憲性、さらには詐欺罪が成立するに過ぎないこと等を主張して上告した。
あてはめ
1. 勾留中の検察官聴取書の証拠採用については、既に当裁判所大法廷判決(昭和23年(れ)第431号等)によって合憲性が確立されており、本件でも違憲とはいえない。 2. 自白の補強証拠について、犯罪の主観的要素である「犯意」は、外部から直接観察できない性質上、自白のみで認定することが許容される。これは既に当裁判所大法廷判決(昭和22年(れ)第153号)により示された通りである。 3. 事実関係においても、被害届等の記載が原判示の事実(強盗被害)と整合しており、客観的な証拠関係は十分に存在する。
結論
被告人らの各上告を棄却する。勾留中の検事調書の証拠採用、および犯意について自白のみで認定することは、いずれも憲法に違反しない。
実務上の射程
憲法38条3項の「補強証拠」が必要な範囲を画定した重要判例である。実務・答案上、補強証拠は「客観的な罪体(実質的な犯罪事実)」については必要であるが、犯意等の主観的要素については不要であるという準則を導く際に引用される。また、自白排除法則や補強法則の限界を議論する際の基礎知識として機能する。
事件番号: 昭和22(れ)153 / 裁判年月日: 昭和23年6月9日 / 結論: 棄却
一 原判決は、被告人の自白のみによつて判示事實を認定したものではなくて、被告人の自白の外に、Aの提出した(強盗)盗難被害届と匕首の存在とを總合して判示事實を認定したものであることは記録上明白であり、右證據によつて優に判示事實を認定するに足るものである。所論の如く被告人がB、C等と共謀したという事實に對する證據は被告人の…
事件番号: 昭和24(れ)1354 / 裁判年月日: 昭和24年7月19日 / 結論: 棄却
いわゆる自白の補強證據というものは。被告人の自白した犯罪が架空のものではなく、現實に行われたものであることを證するものであれば足りるのであつて、その犯罪が被告人によつて行われたという犯罪と被告人との結びつきまでをも證するものであることを要するものではない。