一 たとい被告人等に對する勾留が不當なものであつたと假定しても、それに對しては各種の救濟の方法を規定しているのであつて、その未決勾留日數を本刑に算入しなくても憲法第三四條に違反するものではない。 二 常習賭博罪と賭博開帳罪とは刑法第一八六條の第一項と第二項とに分けて規定されて居るのであつて、もともと兩罪は罪質を異にし、且その構成要件も何ら關聯するところがないのであるから、兩罪が同一條件下に規定されて居るからと云つて、所論のように不可分の關係にあるものと即斷することは出来ないし、又兩罪は全然別個の犯罪事實に關するものであるから、所論のように正犯と從犯の關係にあるものでないことも極めて明白である。 三 賭博常習性の有無は専ら、各被告人個人の習癖の有無によつて決せられることであるから、本件賭博の共犯者中に賭博開帳罪に該當するものがなく、又同罪によつて處斷されたものがなかつたとしても、それによつて被告人兩名に對する常習賭博罪の成立が阻却される理由は少しも存しない。
一 不當拘禁中の勾留日數を本刑に算入しなかつたことと憲法第三四條 二 常習賭博罪と賭博開帳罪との關係 三 共犯者中賭博開帳犯人の有無と賭博常習性の認定
憲法34條,刑法21條,刑法186條1項2項,刑法62條,刑法185條
判旨
常習賭博罪と賭博開張罪は罪質および構成要件が異なる別個の犯罪であり、共犯者の中に賭博開張罪に該当する者がいなくても、個人の習癖に基づき常習賭博罪は成立する。また、未決勾留日数の本刑算入は裁判所の裁量に属し、勾留の不当性を理由に全算入を強制されるものではない。
問題の所在(論点)
1.常習賭博罪(186条1項)の成立に際し、共犯者に賭博開張罪(同2項)の成立が必要か(両罪の不可分性)。2.常習性の認定において、前科の存在および犯行までの期間を考慮できるか。3.未決勾留の不当性を理由に、算入を裁量とする刑法21条の適用が排斥されるか。
規範
1.刑法186条1項の常習賭博罪と2項の賭博開張罪は、罪質および構成要件を異にする別個の犯罪である。2.常習性の有無は、各被告人個人の習癖の有無によって決せられるべき事項であり、他の共犯者の処断状況とは独立して判断される。3.未決勾留日数の本刑算入(刑法21条)は、事実審裁判所の自由裁量に属する。
重要事実
被告人両名は、常習として賭博を行った罪(常習賭博罪)で起訴された。弁護人は、①本件賭博の共犯者に賭博開張罪で処断された者がいない以上、常習賭博罪は成立しない、②被告人には賭博の前科があるのみで常習性は認められない、③不当な未決勾留日数を本刑に全算入すべきである、と主張して上告した。
あてはめ
1.常習賭博罪と賭博開張罪は条文上区別され、構成要件に関連がないため不可分の関係にはない。したがって、開張罪の正犯が存在しなくとも常習賭博罪は成立する。2.原審は単に前科のみで常習性を認定したのではなく、前科に係る処刑後まもなく本件犯行に及んだという事実を併せて評価しており、常習性の認定は合理的である。3.未決勾留の算入は法律上裁判所の裁量と明定されており、仮に拘禁が不当であっても、別途救済手段が存在するため、算入を強制する法的義務は存しない。
結論
本件被告人らに常習賭博罪が成立するとした原判決に誤りはなく、未決勾留の不通算も裁量の範囲内で適法である。上告棄却。
実務上の射程
常習賭博罪の独立性を明示した点に意義がある。答案上は、常習性の認定において「前科および前科から犯行までの期間」が重要な考慮要素となること、また未決勾留の算入が原則として裁量事項であることを指摘する際に引用できる。
事件番号: 昭和32(あ)2496 / 裁判年月日: 昭和33年1月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】常習賭博罪における「常習」の認定は、賭博行為者の習癖、賭博の回数、期間、態様等の諸事情を総合して判断されるべきであり、判示事項にそれらの具体的事実が摘示されている限り、理由不備の違法は認められない。 第1 事案の概要:被告人が常習として賭博を行った事案において、原審が常習賭博罪の成立を認めた。これ…