一 裁判所は刑訴應急措置法第一二條第一項の供述者又は作成者の訊問ができることを告知する義務のないことは既に當裁判所の判例とするところである。 二 強盜罪の目的物たる財物は被告人以外の者の所有又は保管に屬する物であればよいのであるからこれを判示するには犯人以外の者の所有又は保管に屬する如何なる物であるかを明らかにするに足る程度に具體的に判示すればよいのであつてその財物の種類、數量、價格又は何れの財物が何人の所有又は保管に屬するか等について一々詳細正確に判示する必要はない。
一 刑訴應急措置法第一二條第一項の法意と裁判所の告知義務 二 強盜罪の目的物についての判示の程度
刑訴應急措置法12條1項,刑法236條,刑訴法360條1項
判旨
強盗罪の目的物については、犯人以外の者の所有・保管に属することを具体的に明示すれば足り、種類・数量・所有者等を詳細に特定する必要はない。また、強盗の共謀をした者は、自ら暴行・脅迫を行わずとも、他の共犯者の行為について共同正犯としての責任を負う。
問題の所在(論点)
1.強盗罪の成立において、目的物(財物)の特定はどの程度の詳細さが求められるか。2.強盗の共謀は認められるが、自ら暴行・脅迫を行っていない場合に強盗罪の共同正犯が成立するか。
規範
1.強盗罪(刑法236条)の客体である財物の判示には、犯人以外の者の所有又は保管に属する物であることを、他の物と識別できる程度に具体的に示せば足り、種類、数量、価格、あるいは個別の財物が誰の所有・保管に属するかまで詳細に判示する必要はない。2.共同正犯(刑法60条)において、共謀が認められる以上、実行行為の一部である暴行・脅迫を自ら直接分担していない者であっても、他の共犯者の行為について共同正犯としての責任を免れない。
重要事実
被告人は、他の共犯者らと共に強盗を共謀した。実行段階において、被告人自身は直接の暴行や脅迫行為に及んでいなかったが、共犯者のひとりが暴行・脅迫を用いて財物を奪取した。原審は、奪われた財物の詳細な種類や個別の所有関係を逐一特定することなく、被告人を強盗罪の共同正犯として有罪判決を下した。これに対し被告人側が、判示の不備および実行行為の欠如を理由に上告した事案である。
事件番号: 昭和23(れ)1370 / 裁判年月日: 昭和24年1月11日 / 結論: 棄却
被告人が相被告人と共謀の上、強盜をした事實を認定している原判決において、二人共謀の事實と共犯者のどちらかが現實に脅迫の實行行爲をしたことが判分上明確である以上、共犯者のうちどちらかが現實に實行行爲をしたかを明示していなくても、被告人の「罪トナルヘキ事實」の判示として缺くるところはない。
あてはめ
1.強盗罪の保護法益および構成要件の観点から、対象が他人の占有・所有に属することが明らかであれば、訴因や罪数の特定に支障はない。本件でも、犯人以外の者の所有又は保管に属する物であることが具体的に示されている以上、詳細な目録的記載がなくても違法ではない。2.共同正犯の処罰根拠は、共謀に基づき互いに他人の行為を利用し合って特定の犯罪を実現することにある。被告人が強盗の共謀をしていた事実に照らせば、共犯者による暴行・脅迫を自己の手段として利用したものと評価でき、自ら実行行為を分担したか否かを問わず、共同正犯の責任を負うべきである。
結論
被告人を強盗罪の共同正犯とした原判決は正当である。強盗の客体の特定および共同正犯の成否に関する原審の判断に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
強盗罪における財物の特定(判示事項)の程度を簡潔に示した実務上重要な判断である。また、共謀共同正犯の理論が確立される初期の判例として、実行行為(暴行・脅迫)の直接分担が不要であることを明示しており、共同正犯の客観的要件(共謀に基づく実行)を論じる際の根拠として利用できる。
事件番号: 昭和22(れ)46 / 裁判年月日: 昭和23年1月26日 / 結論: 棄却
刑法第四三條但書の場合に該當しない場合において、未遂減刑をするとせざるとは原審の專權に屬するところであるから原審が被告人に對しこれをしなくとも違法ではない。