凡そ共同正犯者が共同正犯者として所罰せられる所以のものは、共犯者が、共同意思の下に一體となつて、互に他人の行爲を利用して自己の意思を實行に移す點にあるのであるから、苟も判文上共謀の事實を明確にさえすれば、共犯者の何人が實行行爲の際、その如何なる部分を分擔したかは、これを特に明示しなくとも、罪となるべき事實の判示として、間然するところはない。
共犯の判示の程度
刑法60條,刑訴法360條1項
判旨
共同正犯が成立する場合、判文上共謀の事実を明示すれば足り、各共犯者が実行行為のどの部分を分担したかを個別に判示する必要はない。また、量刑上の事情(犯情)は「罪となるべき事実」ではないため、判決書において具体的に明示しなくとも違法ではない。
問題の所在(論点)
共同正犯の事実認定において、各共犯者の具体的な実行行為の分担を判示する必要があるか。また、量刑上の情状(犯情)を「罪となるべき事実」として判示する必要があるか。
規範
共同正犯(刑法60条)の本質は、共犯者が共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、自己の意思を実行に移す点にある。したがって、事実認定において共謀の事実を明確にすれば足り、各人が実行行為のどの部分を分担したかを詳細に判示する必要はない。また、量刑の基礎となる情状は「罪となるべき事実」ではないため、量刑に際して斟酌すれば足り、判文上の明示は不要である。
重要事実
被告人A・Bらは短期間に同種の犯罪を繰り返しており、その一部の事実(第四の事実)について、被告人らの供述に基づき犯人性が認定された。また、被告人CはAら4名と共謀して第二の犯行を、被告人DはA・Bと共謀して第三の犯行をそれぞれ敢行した。弁護人は、判決書において各被告人の具体的な実行行為の分担や、酌量減軽の根拠となる犯情が具体的に記載されていないことは理由不備であるとして上告した。
あてはめ
本件において、原審は各被告人の間に共謀があった事実を冒頭で明示している。共同正犯は互いの行為を利用し合う関係にある以上、共謀が認められる限り、個々の分担態様を細かく区別して判示しなくとも「罪となるべき事実」の判示として欠けるところはない。さらに、被告人C・Dに対して酌量減軽がなされているが、これに関わる個別の犯情は量刑判断の過程で考慮されるべき事柄にすぎず、構成要件に該当する事実(罪となるべき事実)そのものではないため、詳細な説示がなくとも理由不備には当たらない。
結論
共謀の事実が認定されている以上、実行行為の分担や量刑上の情状を具体的に判示しなくても判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
共同正犯の処罰根拠(一部実行全部責任)を「相互利用・補充関係」に求める実務上の定石を確認した判例である。答案上では、一部の共犯者の行為が不明確な場合でも、共謀の存在を認定すれば全体について責任を負わせることができる根拠として、また事実認定の判示の程度を示す指針として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)2611 / 裁判年月日: 昭和25年2月10日 / 結論: 棄却
他の共犯者に強要され又は欺計によつて、やむなく強盜に參加したもので犯意を阻却するものであるとの主張は、原審辯護人が單に犯情として述べた或は犯意の存在を否定したものに過ぎないことは、原審公判調書の記載に徴し明らかであつて、かかる主張は、舊刑訴法第三六〇條第二項にいわゆる「法律上犯罪ノ成立ヲ阻却スペキ原由タル事實ノ主張」に…
事件番号: 昭和23(れ)1370 / 裁判年月日: 昭和24年1月11日 / 結論: 棄却
被告人が相被告人と共謀の上、強盜をした事實を認定している原判決において、二人共謀の事實と共犯者のどちらかが現實に脅迫の實行行爲をしたことが判分上明確である以上、共犯者のうちどちらかが現實に實行行爲をしたかを明示していなくても、被告人の「罪トナルヘキ事實」の判示として缺くるところはない。