原審は、なお勾留繼続の必要ありとして保釈申請却下の決定をしたのである。これに對し論旨は本件被告人に對しては逃亡又は罪證湮滅の虞は全然ないのだから、これに對し保釈を許さないのは不當だというのである。これは結局右の虞ありや否に關する原審の事實認定を批難するに歸着するから當裁判所に對する特別抗告の理由としては適法でない。
被告人は逃亡又は罪證湮滅の虞はないから保釈を許さないのは不當であるとの主張と特別抗告理由の適否
裁判所法7條2號,刑訴應急措置法18條
判旨
刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)施行後の事件であっても、同法施行法2条に基づき、旧刑事訴訟法が適用される場合がある。保釈申請却下の妥当性に係る事実認定の不当は、最高裁判所に対する特別抗告の適法な理由とはならない。
問題の所在(論点)
1. 本件において新刑事訴訟法と旧刑事訴訟法のいずれが適用されるか。2. 保釈申請を却下した原審の事実認定(逃亡・罪証隠滅の恐れの有無)の不当を理由に特別抗告を申し立てることは可能か。
規範
刑事訴訟法施行法2条により、新法の施行前に提起された事件等については旧刑事訴訟法が適用される。また、特別抗告においては、原審の勾留の必要性(逃亡又は罪証隠滅の恐れ)に関する事実認定の当否を争うことは、適法な抗告理由とならない。
重要事実
被告人は勾留中であり、これに対し保釈の申請がなされたが、原審は勾留継続の必要性があるとして保釈申請を却下する決定を下した。被告人(抗告人)は、逃亡や罪証隠滅の恐れは全くないため保釈を許さないのは不当であると主張し、最高裁判所に対して特別抗告を行った。なお、本件は新刑事訴訟法の施行時期に関連する経過措置が問題となる時期の事案であった。
事件番号: 昭和44(し)23 / 裁判年月日: 昭和44年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所のした保釈請求却下決定に対しては、刑事訴訟法428条2項に基づき異議の申立てをすべきであり、直接最高裁判所に特別抗告を申し立てることは同法433条1項の要件を欠き不適法である。 第1 事案の概要:窃盗被告事件に関し、東京高等裁判所が保釈請求却下決定を下した。これに対し、申立人は異議の申立…
あてはめ
1. 刑事訴訟法施行法2条の規定によれば、本件には旧刑事訴訟法が適用されるべきである。したがって、新法の適用を前提とする抗告人の主張は前提を欠く。2. 抗告人が主張する「逃亡又は罪証隠滅の恐れがない」という点は、原審が行った勾留の必要性に関する事実認定を非難するものにすぎない。このような事実認定の不当は、最高裁判所に対する特別抗告の理由として法定された事由に該当しない。
結論
本件抗告は、適法な抗告理由を欠くため、棄却されるべきである。
実務上の射程
新旧刑事訴訟法の適用関係に関する経過措置の確認、および特別抗告における不服申立理由の制限(事実誤認の主張の不可)を明示した点に意義がある。現代の刑事訴訟実務においても、特別抗告が憲法違反や判例抵触に限定されることの根拠の一つとして参照しうる。
事件番号: 昭和44(し)64 / 裁判年月日: 昭和44年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下の裁判およびこれを維持した決定に対し、憲法13条違反等の主張があったとしても、それが裁判の結果に影響を及ぼさない場合や、実質的に単なる訴訟法違反の主張にすぎない場合は、特別抗告の理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人側が保釈を請求したが却下され、その却下裁判を維持した原決定に対し…
事件番号: 昭和23(つ)9 / 裁判年月日: 昭和23年9月30日 / 結論: 棄却
裁判所法第七條第二號によれば最高裁判所は特に最高裁判所の權限に屬するものと定められた抗告(日本國憲法施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に關する法律第一八條)についてのみ裁判權を有するものである(昭和二二年(つ)七號、二二年一二月八日決定)
事件番号: 昭和24新(つ)92 / 裁判年月日: 昭和25年2月2日 / 結論: 棄却
高等裁判所のなした保釋請求却下決定に對する即時抗告は裁判所法第七條、刑訴應急措置法第一八條に該當しないことは明白であり、他に本件のような抗告を最高裁判所に申立てることを許した法律の規定はないから本件抗告は不適法であるといわなければならない。
事件番号: 昭和23(つ)14 / 裁判年月日: 昭和23年9月22日 / 結論: 棄却
最高裁判所に對しては、刑訴應急措置法第一八條のように特に最高裁判所に抗告を申立てることを許された場合の外抗告をすることは許されないものであることは既に當裁判所の判例とするところである(昭和二二年(つ)第七號、同年一二月八日決定)。