一 判決書には刑事訴訟法第七一條に從つてその作成の年月日を記載すべきもので、判決宣告の日を記載すべきものではない。又判決書は必ずしも宣告の日に作成しなければならぬものではないから辯護人の主張するように本件の判決書に記載された年月日が判決宣告の年月日と違つてゐるとしてもそれは少しも違法でない。 二 原判決は被告人Aに對しても同人がBをも殺害して金品を奪取しようと被告人Cと共謀した事實及びCが右共謀に基きBを殺害して金品を奪取した事實を認定したのであつて、刑法第六〇條は右の如き場合にも適用し得べき規定であるから、原判決が被告人Aを共犯者Cが分擔したBに對する強盗殺人の共犯と斷じたことに違法はない。 三 原判決は、判示事實中、被告人兩名の共謀の點を認定するのに被告人兩名の豫審に於ける各その旨の供述記載判示鑑定書の記載及び麻繩二本の存在を證據として、採用しておるのである。すなはち、被告人、Aの共謀の點は、相被告人Cのその旨の供述により、これを肯認し得られるのみならず、被告人兩名がそれぞれ本件犯行に使用したことを認める麻繩二本の存在等を總合すれば充分これを肯定し得られるから、憲法第三八條第三項の所謂本人の自白のみを證據としたものでないから論旨は理由がない。
一 判決書に記載すべき年月日 二 實行行爲をしなかつた強盗殺人共謀者の責任と刑法第六〇條 三 強盗殺人の共謀の事實認定と憲法第三八條第三項
刑訴法71條,刑法240條,刑法60條,憲法38條3項
判旨
共謀共同正犯の成立には、自ら犯罪の実行行為を分担しない場合であっても、共謀に基づき他の共犯者が実行行為を行った事実が認められれば、刑法60条を適用できる。また、共謀の認定において、相被告人の供述や犯行に使用された凶器等の客観的証拠が存在すれば、憲法38条3項の「本人の自白」のみによる処罰には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 実行行為の一部を分担していない共謀者に刑法60条を適用し、共同正犯として処断できるか。 2. 共謀の認定において、相被告人の供述や客観的物証を証拠とすることは、憲法38条3項(自白のみによる有罪判決の禁止)に抵触するか。
規範
1. 刑法60条の共同正犯は、共謀に基づき共犯者の一部が実行行為を行った場合、実行行為を自ら分担していない者についても成立する。 2. 憲法38条3項の補強証拠の要否に関し、相被告人の供述は「本人の自白」には含まれず、また客観的な物証がある場合には、自白のみによる処罰を禁じた同条に違反しない。
事件番号: 昭和22(れ)153 / 裁判年月日: 昭和23年6月9日 / 結論: 棄却
一 原判決は、被告人の自白のみによつて判示事實を認定したものではなくて、被告人の自白の外に、Aの提出した(強盗)盗難被害届と匕首の存在とを總合して判示事實を認定したものであることは記録上明白であり、右證據によつて優に判示事實を認定するに足るものである。所論の如く被告人がB、C等と共謀したという事實に對する證據は被告人の…
重要事実
被告人Aは被告人Cと、被害者B夫妻を殺害して金品を奪取することを共謀した。Cは当該共謀に基づき、実際にBを殺害して金品を奪取した(強盗殺人)。Aは自ら殺害の実行行為を分担していなかったため、共謀共同正犯の成否及び、共謀の事実を認定するに際して被告人両名の予審における供述や麻縄二本の存在を証拠としたことの是非(補強証拠の有無)が争われた。
あてはめ
1. Aについて、CとB殺害及び金品奪取を共謀した事実、及びCがその共謀に基づき実行行為に及んだ事実が認められる以上、刑法60条により共同正犯の責任を負う。 2. 共謀の認定に際し、原判決はAの供述のみならず、相被告人Cの供述を証拠として採用している。さらに、犯行に使用された麻縄二本の存在や鑑定書の記載といった客観的な証拠を総合して共謀を肯定している。したがって、本人の自白のみを証拠として有罪としたものではない。
結論
実行行為を分担しない共謀者も刑法60条の共同正犯として処罰可能である。また、相被告人の供述や物証がある以上、憲法38条3項違反の違法はなく、被告人Aを強盗殺人の共犯と断じた判断は正当である。
実務上の射程
共謀共同正犯(練馬事件に先立つ大法廷判決)の基礎を示すとともに、相被告人の供述が憲法38条3項の「本人の自白」に含まれないとする判例法理を提示している。答案上は、共犯者の供述の証拠能力や補強証拠の要否を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)101 / 裁判年月日: 昭和23年7月14日 / 結論: 棄却
一 憲法第三七條第一項の規定は偏頗でない公平な組織構成を有する裁判所の迅速な公開裁判を受ける權利を被告人に與えたに過ぎないもので裁判所に對し如何なる刑事被告人に對しても親切にすべての訴訟上の權利を行使する機會を與へるべき義務を負擔せしめた規定ではない。 二 憲法はその第三八條第一項において「何人も自己に不利益な供述を強…
事件番号: 昭和22(れ)136 / 裁判年月日: 昭和22年12月16日 / 結論: 棄却
犯罪事實の一部について證據として本人の自白があるだけで他の證據がない場合でも、その自白と他の證據を綜合して、犯罪事實全體を認定することは、刑訴應急措置法第一〇條第三項の規定に違反するものではない。