一 所論のような場合(關東大水害による交通杜絶の爲め出廷し能はずとして公判期日延期の申請を電報でなした場合)であるからと言つて上告審における公判期日の延期申請を必ず許さねばならぬ憲法上の根據は全然これを發見することができない。 二 水害に依る交通杜絶を理由として公判期日の延期申請を電報で爲したにも拘わらず、裁判所は之を許さず當日の公判に於て裁判の言渡は後刻宣告すと申渡した上後刻更に公判期日を開いて被告人も辯護人も召喚されない法廷で決定を宣告したため被告人が右決定の宣告を知ることが出來ずしたがつて法定の期間内に上訴をなすことが出來なかつたとしても、之を以て刑訴法第三八七條所定の「自己又ハ代人ノ責ニ歸スヘカラサル事由ニ因リ上訴ノ提起期間内ニ上訴ヲ爲スコト能ハサリシ」ものと言うを得ない。
一 水害による交通杜絶を理由とする公判期日延期の申請と憲法上の許可義務 二 公判期日の延期申請を却下し被告人及び辯護人を召喚しないで決定を宣告した場合と刑訴法第三八七條
刑訴法322條,刑訴法387條
判旨
上告審における公判期日の延期申請が認められなかったとしても、それを憲法違反とする根拠はなく、旧刑事訴訟法における上訴権回復の要件である「自己又は代人の責に帰すべからざる事由」には当たらない。
問題の所在(論点)
上告審における公判期日の延期申請が認められなかったことが、憲法上の権利侵害に当たるか。また、かかる事態が上訴提起期間を徒過した際の「自己又は代人の責に帰すべからざる事由」に該当するか。
規範
上告審における公判期日の延期申請を許容すべき憲法上の義務は存在しない。したがって、延期申請が容認されなかったことを理由に上訴提起期間を徒過したとしても、それは旧刑事訴訟法387条(現行法362条相当)にいう「自己又は代人の責に帰すべからざる事由」による上訴権の回復事由には該当しない。
重要事実
事件番号: 昭和23(つ)11 / 裁判年月日: 昭和23年9月3日 / 結論: 棄却
裁判所法第七條第二號によれば、最高裁判所は日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に關する法律第一八條の如く法律が特に最高裁判所に抗告を申立てることができる旨を定めている抗告についてのみ裁判權を有するものであることは既に當裁判所の判例とするところである。しかるに本件抗告は前記應急的措置に關する法律第一八條に規定する…
抗告人は、東京高等裁判所が昭和22年9月27日になした上告棄却の決定に対し、刑事訴訟応急措置法18条に基づき特別の申立て(抗告)を行った。抗告人は、上告審において公判期日の延期申請が認められなかった等の事情を主張したが、本件抗告が提起されたのは同年10月20日であり、同法18条2項が定める5日の期間を大幅に経過していた。この期間徒過が正当化されるか(上訴権回復の事由があるか)が争点となった。
あてはめ
抗告人の主張する「公判期日の延期申請の不許可」という事情について検討するに、憲法上、裁判所にそのような延期申請を必ず許容しなければならない義務を課す根拠は存在しない。そうである以上、延期が認められなかったことをもって、期間内に上訴(本件では抗告)を提起できなかったことが本人の責任に帰し得ない事由によるものとはいえない。したがって、本件抗告は法定期限を徒過した手続違背のものと評価される。
結論
本件抗告は法定期限を徒過しており、かつ上訴権回復の事由も認められないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
本判決は旧法下の事案であるが、裁判所の期日指定に関する裁量権を認め、公判期日の延期不許可を直ちに憲法違反や上訴権回復事由(現行刑訴法362条)としない点で現行実務でも参照される。適正手続の観点から防御権が侵害される特段の事情がない限り、期日延期の不許可は適法な訴訟運営として維持されることを示唆している。
事件番号: 昭和23(つ)32 / 裁判年月日: 昭和24年5月18日 / 結論: 棄却
しかし、最高裁判所に對しては、刑訴應急措置法第一八條のように、特に最高裁判所に抗告を申立てることを許された場合の外は、抗告をすることが許されないものであることは既に當裁判所の判例とするところである。(昭和二二年(つ)第七號、同年一二月八日第一小法廷決定)
事件番号: 昭和23(つ)8 / 裁判年月日: 昭和23年9月13日 / 結論: 棄却
最高裁判所に對しては刑訴應急措置法第一八條のように特に最高裁判所に抗告を申立てることを許された場合の外抗告をすることは許されないものであることは既に當裁判所の判例とするところである。(昭和二二年(つ)第七號、昭和二二年一二月八日決定)
事件番号: 昭和24(つ)96 / 裁判年月日: 昭和25年4月21日 / 結論: 棄却
舊刑訴法第三八七條が代人の過失によつて上訴期間を徒過した場合上訴權回復の請求權なきものとしたのは違憲ではない。
事件番号: 昭和22(つ)1 / 裁判年月日: 昭和23年1月26日 / 結論: 棄却
裁判所法第七條第二號によれば、最高裁判所は、特に最高裁判所の權限に屬するものと定められた抗告(刑訴應急措置法第一八條)についてのみ裁判權を有するものである。