舊刑訴法第三八七條が代人の過失によつて上訴期間を徒過した場合上訴權回復の請求權なきものとしたのは違憲ではない。
代人の過失によつて上訴期間を徒過した場合に上訴權回復の請求權を却下したことの合憲性
舊刑訴法387條,憲法37條1項
判旨
弁護人等の代人の過失によって上訴期間を徒過した場合に、本人に上訴権回復の請求を認めない規定は、憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
旧刑事訴訟法387条(現行法362条に相当)において、代人の過失によって上訴期間を徒過した場合に、本人に「自己又は代人が責めることのできない事由」(不責性)があるとは認めず、上訴権回復を否定する運用が憲法に違反するか。
規範
上訴権回復の要件に関し、代人の過失を本人の過失と同視し、代人の過失によって期間を徒過した場合には上訴権回復を認めないとする法制は、適正な手続を定める刑事訴訟法の合理的な制約の範囲内であり、憲法に違反するものではない。
重要事実
被告人の代人(弁護人等)が、不注意等の過失によって法定の上訴期間内に上訴の手続きを行わなかったため、上訴期間が徒過した。被告人側は、代人の過失によって上訴の機会を失うことは不当であり、上訴権回復を認めない規定は憲法違反であると主張して特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和36(し)22 / 裁判年月日: 昭和36年6月7日 / 結論: 棄却
刑訴第三六二条が代人の過失によつて上訴期間を徒過した場合上訴権回復の請求権がないものとしたのは、違憲でない。
あてはめ
代人は本人のために訴訟行為を行う権限を付与された者であり、その訴訟上の行為や不作為の効果は本人に帰属するのが原則である。代人の過失を本人の過失と同視して期間徒過の責任を問うことは、訴訟手続の画一的・迅速な進行を確保する上で合理的な根拠がある。したがって、代人の過失がある場合に、本人の不責性を否定し上訴権回復を認めないとしても、憲法の保障する適正手続や裁判を受ける権利を侵害するものではないと解される。
結論
代人の過失による期間徒過について上訴権回復を認めないことは違憲ではなく、本件特別抗告は棄却される。
実務上の射程
現行刑事訴訟法362条の「自己又は代人が責めることのできない事由」の解釈においても、弁護人の過失は「代人の責めるべき事由」に該当し、上訴権回復は認められないとする実務慣行の憲法上の根拠となる。
事件番号: 昭和37(し)34 / 裁判年月日: 昭和37年10月9日 / 結論: 棄却
一、原決定において、申立人が上告申立の手続を依頼したAは、刑訴三六二条所定の申立人の代人に該当するとしたのは相当である(後記註参照)。 二、刑訴規則第二二二条所定の判決結果の通知がなされなかつたという一事をもつては、上訴権回復請求の理由とならないことは当裁判所の判例(昭和二九年(し)第三号昭和二九年九月二一日第三小法廷…
事件番号: 昭和28(し)10 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条の裁判を受ける権利の侵害を主張しても、その実質が単なる訴訟法違反の主張にすぎない場合は、刑訴法405条の特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対し、憲法32条(裁判を受ける権利)の違反を理由として特別抗告を申し立てた事案。しかし、その主張の具体的な内容は、原審の…
事件番号: 昭和27(し)16 / 裁判年月日: 昭和27年8月30日 / 結論: その他
大審院のした決定であつても、大審院のその後の決定で既に変更されている以上、右変更前の決定と相反する判断をしたとの主張は、刑訴第四〇五条第三号の上告理由として不適法である。
事件番号: 昭和28(し)20 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】上訴権回復の請求が認められるためには、被告人が自ら上訴手続をとり得ない程度の病状等にあることを要し、単なる病状の存在のみでは足りない。 第1 事案の概要:被告人は、上告提起期間内に上告手続をとらなかった。その後、当時の病状により手続が不可能であったとして上訴権回復の請求を申し立てた。原審は、被告人…