刑訴第三六二条が代人の過失によつて上訴期間を徒過した場合上訴権回復の請求権がないものとしたのは、違憲でない。
刑訴法第三六二条の合憲性
憲法32条,刑訴法362条
判旨
刑訴法362条にいう「自己又は代人が責めに帰することができない事由」とは、上訴期間徒過が上訴権者又は代人の故意・過失に基づかないことを指す。代人に過失がある場合には、上訴権者本人に過失がなくても上訴権回復は認められず、この解釈は憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
刑訴法362条の「責めに帰することができない事由」に、代人の過失による期間徒過が含まれるか。また、代人の過失を本人の過失と同視して上訴権回復を否定することが憲法に違反しないか。
規範
刑訴法362条の「責めに帰することができない事由」とは、上訴不能の事由が上訴権者またはその代人の故意または過失に基づかないことをいう。したがって、代人の故意または過失により上訴期間を徒過したときは、たとえ自己に故意または過失がなくとも、同条による上訴権回復の請求は許されない。また、代人の過失により上訴権回復を認めないことは、憲法に違反しない。
重要事実
上訴権者(被告人等)が上訴期間内に上訴の手続きをとることができなかった事案において、本人には直接的な過失は認められなかったが、その代人(弁護人等)に過失があって上訴期間を徒過した。これに対し、上訴権者は自己の責めに帰すべき事由がないとして上訴権回復の請求を行ったが、原審で棄却されたため、憲法違反等を理由に特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和39(し)30 / 裁判年月日: 昭和39年7月17日 / 結論: その他
上訴申告書が上訴申立期間の最終日に速達郵便に付され、該郵便物が法令上即日管轄裁判所に配達さるべき時間内に配達受持局に到達したにもかかわらず、翌日配達された場合、右期間の徒過は、上訴権者又はその代人の責に帰することはできない。
あてはめ
本件において、上訴期間の徒過は代人の過失に基づくものである。刑訴法362条は「自己又は代人」と規定しており、代人の行為の結果は本人に帰属するのが法理である。代人の過失を本人の過失と同様に扱うことは、裁判手続の迅速・確定という要請に照らし合理性があり、被告人の防御権を不当に侵害するものではない。したがって、代人の過失がある以上、本人の主観的状況を問わず「責めに帰することができない事由」には当たらないと解される。
結論
代人に過失がある以上、刑訴法362条の要件を満たさないため、上訴権回復の請求は認められない。本件抗告を棄却する。
実務上の射程
刑事手続における弁護人のミス(期間徒過)は、被告人本人にとって致命的な不利益となるが、本判決により救済の道は厳格に閉ざされている。答案上は、362条の解釈として「代人の過失=本人の過失」という帰責構造を明示する際に使用する。弁護人の過失が認められる事案では、直ちに同条の適用を否定する論拠となる。
事件番号: 昭和24(つ)96 / 裁判年月日: 昭和25年4月21日 / 結論: 棄却
舊刑訴法第三八七條が代人の過失によつて上訴期間を徒過した場合上訴權回復の請求權なきものとしたのは違憲ではない。
事件番号: 昭和37(し)34 / 裁判年月日: 昭和37年10月9日 / 結論: 棄却
一、原決定において、申立人が上告申立の手続を依頼したAは、刑訴三六二条所定の申立人の代人に該当するとしたのは相当である(後記註参照)。 二、刑訴規則第二二二条所定の判決結果の通知がなされなかつたという一事をもつては、上訴権回復請求の理由とならないことは当裁判所の判例(昭和二九年(し)第三号昭和二九年九月二一日第三小法廷…
事件番号: 昭和37(し)50 / 裁判年月日: 昭和38年10月31日 / 結論: その他
一 被告人が公判期日に出頭しなければ、判決の宣告ができない事件につき、被告人不出頭のまま判決の宣告をした瑕疵があつても、上訴提起期間は判決宣告の日から進行する。 二 右の場合において、控訴申立書と題する書面に、被告人が判決宣告の翌日判決通知書を受けた旨並びに右判決に不服を申し立てるについては上訴権回復の請求に関する刑訴…
事件番号: 昭和31(し)29 / 裁判年月日: 昭和31年7月4日 / 結論: 棄却
一 刑訴第三六二条にいわゆる「責に帰することができない事由」とは、上訴不能の事由が上訴権者またはその代人の故意または過失にもとづかないことをいうものである。 二 被告人が刑訴第三八六条第一号の規定による控訴棄却決定の送達を受けた当時病床にあり、医師より絶対安静を命ぜられていたために異議の申立をすることができなかつたとい…