一 刑訴第三六二条にいわゆる「責に帰することができない事由」とは、上訴不能の事由が上訴権者またはその代人の故意または過失にもとづかないことをいうものである。 二 被告人が刑訴第三八六条第一号の規定による控訴棄却決定の送達を受けた当時病床にあり、医師より絶対安静を命ぜられていたために異議の申立をすることができなかつたというような事由は、被告人の責に帰することができない事由とはいえない。
一 刑訴第三六二条にいわゆる「責に帰することができない事由」の意義 二 上訴権回復請求の許されない一事例
刑訴法362条,刑訴法386条,刑訴法422条,刑訴法428条
判旨
刑事訴訟法362条の「自己又は代人の責めに帰することができない事由」とは、上訴不能の事由が上訴権者等の故意又は過失に基づかないことをいう。被告人が病気で絶対安静の状態であったことや、不服申立期間を誤認していたことは、これに該当しない。
問題の所在(論点)
被告人が病床にあり不服申立が不可能であったこと、及び法律上の期間を誤認していたことが、刑事訴訟法362条の「自己又は代人の責めに帰することができない事由」に該当するか。
規範
刑事訴訟法362条にいう「自己又は代人の責めに帰することができない事由」とは、上訴不能の事由が、上訴権者又はその代人の故意又は過失に基づかないことをいう。
重要事実
被告人は、控訴趣意書の提出遅滞により控訴棄却決定を受けた。その後、被告人は、当該決定の送達時に病気で医師から絶対安静を命じられていたこと、および不服申立期間(即時抗告期間)を14日であると誤信していたことを理由として、上訴権回復の請求を行った。原審がこれを棄却し、その後の異議申立も棄却されたため、特別抗告に至った。
事件番号: 昭和37(し)34 / 裁判年月日: 昭和37年10月9日 / 結論: 棄却
一、原決定において、申立人が上告申立の手続を依頼したAは、刑訴三六二条所定の申立人の代人に該当するとしたのは相当である(後記註参照)。 二、刑訴規則第二二二条所定の判決結果の通知がなされなかつたという一事をもつては、上訴権回復請求の理由とならないことは当裁判所の判例(昭和二九年(し)第三号昭和二九年九月二一日第三小法廷…
あてはめ
被告人は、控訴棄却決定の送達時に病気であり不服申立が不可能であったと主張するが、病床にあること自体は上訴権者等の故意・過失の存否とは別個の事態であり、直ちに「責めに帰することができない事由」には当たらない。また、不服申立期間を14日と誤認した点についても、法令の不知や誤解は上訴権者側の過失に類するものであり、同条の事由を構成しない。
結論
被告人の主張する事由は、いずれも「自己又は代人の責めに帰することができない事由」に該当しないため、上訴権回復の請求は認められない。
実務上の射程
上訴権回復の要件である「責に帰することができない事由」を厳格に解釈する立場を示す。特に、病気による不服申立の困難性や、法律期間の誤解といった主観的・個人的事情は、原則として救済の対象にならないことを論証する際に用いる。答案上は、まず規範を示した上で、これらの事情が過失の欠如を基礎付けるに足りないことを簡潔に指摘する。
事件番号: 昭和31(し)19 / 裁判年月日: 昭和31年5月1日 / 結論: 棄却
原決定が「所論主張のような事由により錯誤に陥り正式裁判の申立をしなかつたとしても、単に検察官の一片の言辞を軽信し失格問題は起らないものと解し略式命令の当選に及ぼす効果について何等の調査もしなかつたのは明かに過失たるを免れないから、かような事由は刑訴三六二条に該当しないものといわねばならない」とした判断は正当であり、従つ…
事件番号: 昭和36(し)22 / 裁判年月日: 昭和36年6月7日 / 結論: 棄却
刑訴第三六二条が代人の過失によつて上訴期間を徒過した場合上訴権回復の請求権がないものとしたのは、違憲でない。
事件番号: 昭和28(し)20 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】上訴権回復の請求が認められるためには、被告人が自ら上訴手続をとり得ない程度の病状等にあることを要し、単なる病状の存在のみでは足りない。 第1 事案の概要:被告人は、上告提起期間内に上告手続をとらなかった。その後、当時の病状により手続が不可能であったとして上訴権回復の請求を申し立てた。原審は、被告人…
事件番号: 昭和28(し)10 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条の裁判を受ける権利の侵害を主張しても、その実質が単なる訴訟法違反の主張にすぎない場合は、刑訴法405条の特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対し、憲法32条(裁判を受ける権利)の違反を理由として特別抗告を申し立てた事案。しかし、その主張の具体的な内容は、原審の…