一、原決定において、申立人が上告申立の手続を依頼したAは、刑訴三六二条所定の申立人の代人に該当するとしたのは相当である(後記註参照)。 二、刑訴規則第二二二条所定の判決結果の通知がなされなかつたという一事をもつては、上訴権回復請求の理由とならないことは当裁判所の判例(昭和二九年(し)第三号昭和二九年九月二一日第三小法廷決定、最集八巻九号一五一四頁)である。 三、刑訴規則第二二二条の規定は、控訴審には準用がないことも当裁判所の判例(昭和二七年(し)第四二号昭和三三年五月二六日第一小法廷決定、集一二巻八号一六二一頁)である。 註。本件は控訴棄却の判決宣告があつたので申立人は上告申立の手続を訴訟手続の実務に明るいと自称する知人Aに依頼して置いたところ右Aが上告申立をしても無駄だ等と思い且つ刑訴規則を誤解したため法廷期間内に上告の申立ができなかつた事案である。
一、刑訴法第三六二条所定の申立人の代人に該当するとされた事例 二、いわゆる判決通知と上訴権回復事由 三、刑訴規則第二二二条と控訴審への準用の有無
刑訴法362条,刑訴法284条,刑訴法285条,刑訴規則222条,刑訴規則250条
判旨
刑事訴訟法362条の上訴権回復における「自己又は代人の責めに帰することができない事由」に関し、判決結果の通知がなされなかったことは、上訴権回復の正当な理由には当たらない。
問題の所在(論点)
刑訴規則222条に定める判決結果の通知がなされなかったことが、刑訴法362条の「自己又は代人の責めに帰することができない事由」に該当し、上訴権回復の理由となるか。
規範
上訴権回復(刑訴法362条)が認められるためには、上訴期間の不遵守が「自己又は代人の責めに帰することができない事由」によるものでなければならない。裁判所が被告人等に対し、刑訴規則222条所定の判決結果の通知を怠ったとしても、その一事をもって直ちに右事由があるということはできない。
重要事実
事件番号: 昭和44(し)22 / 裁判年月日: 昭和44年10月1日 / 結論: その他
控訴審において被告人に公判期日(判決宣告期日を含む。)の通知をすることなく、被告人が出頭しないまま公判を開廷することは違法である。
申立人は上告申立の手続を弁護士(代人)であるAに依頼していたが、上告期間内に申立てがなされなかった。申立人は、裁判所から刑訴規則222条に基づく判決結果の通知がなされなかったことを理由に、憲法11条(基本的人権の享有)及び32条(裁判を受ける権利)違反を主張して上訴権回復を求めた。
あてはめ
まず、上申手続を依頼されたAは刑訴法362条の「代人」に該当する。次に、刑訴規則222条が定める判決結果の通知は、上訴期間の進行を左右するものではなく、これがなされなかったとしても、直ちに当事者や代人の責めに帰すべきでない事由があるとは評価できない。さらに、同条の規定は控訴審には準用されないとの判例もあり、通知の欠如を理由とする権利侵害の主張は前提を欠く。
結論
判決結果の通知がなされなかったことは、上訴権回復の理由とならない。したがって、本件特別抗告は棄却される。
実務上の射程
上訴権回復の要件である「責めに帰することができない事由」の厳格性を示す。判決結果の不知が裁判所の通知漏れに起因する場合であっても、弁護護人(代人)や本人が自ら判決宣告期日を確認し、期間内に上訴すべき責務があることを示唆している。実務上は、代人の過失は本人と同視されるため、弁護士の過失による期間徒過は回復の理由にならないという文脈で引用される。
事件番号: 昭和36(し)22 / 裁判年月日: 昭和36年6月7日 / 結論: 棄却
刑訴第三六二条が代人の過失によつて上訴期間を徒過した場合上訴権回復の請求権がないものとしたのは、違憲でない。
事件番号: 昭和37(し)50 / 裁判年月日: 昭和38年10月31日 / 結論: その他
一 被告人が公判期日に出頭しなければ、判決の宣告ができない事件につき、被告人不出頭のまま判決の宣告をした瑕疵があつても、上訴提起期間は判決宣告の日から進行する。 二 右の場合において、控訴申立書と題する書面に、被告人が判決宣告の翌日判決通知書を受けた旨並びに右判決に不服を申し立てるについては上訴権回復の請求に関する刑訴…
事件番号: 昭和28(し)10 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条の裁判を受ける権利の侵害を主張しても、その実質が単なる訴訟法違反の主張にすぎない場合は、刑訴法405条の特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対し、憲法32条(裁判を受ける権利)の違反を理由として特別抗告を申し立てた事案。しかし、その主張の具体的な内容は、原審の…
事件番号: 昭和24(つ)96 / 裁判年月日: 昭和25年4月21日 / 結論: 棄却
舊刑訴法第三八七條が代人の過失によつて上訴期間を徒過した場合上訴權回復の請求權なきものとしたのは違憲ではない。