一 被告人が公判期日に出頭しなければ、判決の宣告ができない事件につき、被告人不出頭のまま判決の宣告をした瑕疵があつても、上訴提起期間は判決宣告の日から進行する。 二 右の場合において、控訴申立書と題する書面に、被告人が判決宣告の翌日判決通知書を受けた旨並びに右判決に不服を申し立てるについては上訴権回復の請求に関する刑訴法第三六二条ないし第三六五条をも理由とする旨の記載があるときは、右申立書は本来の控訴の申立のほかに、もし控訴申立書が法定の期間内に裁判所に到達しなければ、上訴権回復の請求をする旨の意思表示をも含むものと解すべきである。 三 右一の場合において、被告人が宣告の日の翌日判決の通知を受けたときは、その通知が被告人に到達するまでは被告人自身又は代人の責に帰すべからざる事由によつて上訴権の行使を妨げられていたものというべきである。
一 判決宣告手続に違法がある場合と上訴提起期間の起算点 二 控訴申立書と題する書面の意思解釈―上訴権回復の請求の意思表示をも含むと解された事例 三 自己又は代人の責に帰すべからざる事由によつて上訴権の行使を妨げられたと認められた事例
刑訴法285条2項,刑訴法286条,刑訴法358条,刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法411条1号,罰金等臨時措置法7条2項,罰金等臨時措置法3条1項各号
判旨
被告人の出廷なしに宣告された有罪判決において、被告人が判決通知を受けるまでの間は「自己又は代人の責めに帰すべからざる事由」により上訴をすることができなかったものと認められ、上訴権回復の請求が認められる。
問題の所在(論点)
被告人が不出廷のまま違法に宣告された判決につき、判決通知を受けるまでの期間が、刑訴法362条にいう「自己又は代人の責めに帰すべからざる事由によって、上訴の提起期間内に上訴をすることができなかった」場合に該当するか。
規範
刑事訴訟法362条の「自己又は代人の責めに帰すべからざる事由」とは、上訴権者がその責めに帰すべき事由によらずに法定の上訴期間内に上訴を提起することができなかった場合を指す。被告人の出廷が判決宣告の要件であるにもかかわらず、これに反して不出廷のまま判決が宣告された場合、被告人が判決の通知を受けるまでは、客観的に上訴権の行使を妨げられていたものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和37(し)34 / 裁判年月日: 昭和37年10月9日 / 結論: 棄却
一、原決定において、申立人が上告申立の手続を依頼したAは、刑訴三六二条所定の申立人の代人に該当するとしたのは相当である(後記註参照)。 二、刑訴規則第二二二条所定の判決結果の通知がなされなかつたという一事をもつては、上訴権回復請求の理由とならないことは当裁判所の判例(昭和二九年(し)第三号昭和二九年九月二一日第三小法廷…
重要事実
被告人は道路交通法違反(一方通行逆走)の罪で起訴されたが、第1審裁判所は、刑訴法286条により被告人の出廷がなければ判決宣告ができない事案であるにもかかわらず、被告人が不出廷のまま有罪判決を宣告した。判決宣告日は昭和37年6月26日であり、判決の通知が被告人に到達したのは翌27日であった。被告人は同年7月9日に控訴申立書を郵送し、同11日に裁判所に到達した。控訴提起期間の満了日は宣告日から起算して7月10日であったため、形式上は期間を徒過していたが、書面には上訴権回復を求める趣旨の記載も含まれていた。
あてはめ
本件では、法定の刑が罰金5万円以下であり、刑訴法285条、286条により被告人の出廷なくして判決を宣告することは許されない事案であった。それにもかかわらず不出廷のまま宣告がなされた以上、判決の効力自体は否定されないものの、被告人がその事実を覚知し得る判決通知を受けるまでは、被告人側の責めに帰すべき事由なく上訴権の行使を妨げられていたといえる。したがって、通知が到達した6月27日の翌日から刑訴法363条2項の期間(14日)内に上訴権回復の請求をなした本件は、適法な要件を具備していると評価される。
結論
被告人が判決通知を受けるまでの期間は「責めに帰すべからざる事由」に該当するため、上訴権回復の請求を許容すべきである。これに基づき、控訴申立を棄却した原決定は取り消される。
実務上の射程
手続違背により被告人不在で宣告された判決に対する救済手段として、上訴権回復の規定を柔軟に適用した事例である。答案上は、判決宣告の有効性を前提としつつ、手続保障の観点から「責めに帰すべからざる事由」を広く解釈する際の根拠として活用できる。特に不出廷判決などの特殊な訴訟状況における期間徒過の救済論点において重要となる。
事件番号: 昭和44(し)22 / 裁判年月日: 昭和44年10月1日 / 結論: その他
控訴審において被告人に公判期日(判決宣告期日を含む。)の通知をすることなく、被告人が出頭しないまま公判を開廷することは違法である。
事件番号: 昭和39(し)30 / 裁判年月日: 昭和39年7月17日 / 結論: その他
上訴申告書が上訴申立期間の最終日に速達郵便に付され、該郵便物が法令上即日管轄裁判所に配達さるべき時間内に配達受持局に到達したにもかかわらず、翌日配達された場合、右期間の徒過は、上訴権者又はその代人の責に帰することはできない。
事件番号: 昭和36(し)22 / 裁判年月日: 昭和36年6月7日 / 結論: 棄却
刑訴第三六二条が代人の過失によつて上訴期間を徒過した場合上訴権回復の請求権がないものとしたのは、違憲でない。
事件番号: 昭和38(し)45 / 裁判年月日: 昭和38年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所が抗告審としてした決定に対しては、その裁判所に異議の申立てをすることはできない。したがって、抗告審の決定を不服としてなされた異議申立てを不適法として棄却した原判決は正当である。 第1 事案の概要:申立人は、高等裁判所が抗告審として下した決定(原々決定)に対し、当該高等裁判所へ異議の申立て…