上訴申告書が上訴申立期間の最終日に速達郵便に付され、該郵便物が法令上即日管轄裁判所に配達さるべき時間内に配達受持局に到達したにもかかわらず、翌日配達された場合、右期間の徒過は、上訴権者又はその代人の責に帰することはできない。
上訴権回復請求が認められた事例。
刑訴法362条,刑訴法411条1号,郵便法60条,郵便規則100条1項,郵便規則100条2項,昭和38年12月28日郵業6633号仙台郵政局郵務部長通達
判旨
上訴申立書を期間内に速達郵便に付し、その期間内に管轄裁判所に到達することを期待すべき相当の理由がある場合には、期間徒過を上訴権者等の「責めに帰することができない」と解すべきである。
問題の所在(論点)
上訴権回復の要件である「自己又は代人の責めに帰することができない事由」(刑訴法362条)の意義。特に、速達郵便の遅延により期間を徒過した場合に、上訴権者側に帰責事由があるといえるか。
規範
刑事訴訟法362条の「自己又は代人の責めに帰することができない事由」とは、上訴権者が上訴申立期間内に速達郵便に付し、当該郵便物が右期間内に管轄裁判所に到達することを期待しうべき相当の理由がある場合を包含する。郵便法規上、速達郵便物は優先送達が義務付けられており、配達受持局に特定の時間(本件当時は午後7時)までに到着したものは即日遅滞なく配達されるべきものとされているからである。
重要事実
本件控訴の申立期限は昭和39年3月12日であった。申立人の依頼を受けた弁護人の妻は、同日午前10時35分、控訴状を書留速達便で郵託した。当該郵便物は、同日午後6時54分に配達受持局である水沢郵便局に到着した。当時の郵便規則および通達によれば、午後7時までに到着した速達郵便物は即日遅滞なく配達すべきものとされていたが、局側の事情により翌13日に配達されたため、期限内に裁判所に到達しなかった。
事件番号: 昭和36(し)22 / 裁判年月日: 昭和36年6月7日 / 結論: 棄却
刑訴第三六二条が代人の過失によつて上訴期間を徒過した場合上訴権回復の請求権がないものとしたのは、違憲でない。
あてはめ
本件において、郵便物は期限当日の午後6時54分に配達受持局に到着しており、当時の最終基準時刻である午後7時前であった。郵便規則によれば、この時間までに到着した速達郵便物は即日遅滞なく配達されるべきものである。したがって、申立人において期限内に裁判所に到達することを期待すべき「相当な理由」があったといえる。局側の懈怠により翌日配達となった結果、期間を徒過したことは、申立人やその代人の責めに帰すべきではない。
結論
控訴申立期間の徒過は、申立人又は代人の責めに帰することができない事由によるものである。したがって、刑訴法362条に基づき、上訴権回復の請求を許容すべきである。
実務上の射程
郵便事情による期間徒過が免責される限界を示す。速達郵便の優先送達義務という法規的根拠に基づき「相当な期待」を認めている点が重要である。答案上は、期間徒過の事由が外部的・客観的不可抗力に近い場合に、362条の要件を充足する根拠として引用する。
事件番号: 昭和37(し)50 / 裁判年月日: 昭和38年10月31日 / 結論: その他
一 被告人が公判期日に出頭しなければ、判決の宣告ができない事件につき、被告人不出頭のまま判決の宣告をした瑕疵があつても、上訴提起期間は判決宣告の日から進行する。 二 右の場合において、控訴申立書と題する書面に、被告人が判決宣告の翌日判決通知書を受けた旨並びに右判決に不服を申し立てるについては上訴権回復の請求に関する刑訴…
事件番号: 昭和30(し)9 / 裁判年月日: 昭和30年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の理由として違憲を主張していても、その実質が単なる訴訟法違反の主張にすぎない場合は、特別抗告の適法な理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告申立人Aが、自己または代人の責めに帰することができない事由によって上訴期間内に上訴できなかったと主張し、憲法違反を理由に特別抗告を申し立てた事案で…
事件番号: 昭和42(す)270 / 裁判年月日: 昭和42年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上訴権回復の要件である「自己又は代人の責に帰することができない事由」とは、不服申立方法の誤信といった主観的な事情は含まれず、外部的な障害や不可抗力による期間の徒過を指す。 第1 事案の概要:被告人は詐欺被告事件の上告棄却決定を受けたが、異議申立期間を徒過した。被告人は、当該決定に対する不服申立方法…
事件番号: 昭和44(し)22 / 裁判年月日: 昭和44年10月1日 / 結論: その他
控訴審において被告人に公判期日(判決宣告期日を含む。)の通知をすることなく、被告人が出頭しないまま公判を開廷することは違法である。