控訴審において被告人に公判期日(判決宣告期日を含む。)の通知をすることなく、被告人が出頭しないまま公判を開廷することは違法である。
控訴審において被告人に公判期日を通知することなく被告人不出頭のまま公判を開廷することの適否
刑訴法273条2項,刑訴法404条,刑訴法390条
判旨
控訴審において、判決宣告期日の通知を欠いたまま被告人が出頭せずに行われた宣告手続は違法である。この手続違背により上訴期間を徒過した場合は、刑訴法362条の「自己又は代人の責に帰することができない事由」にあたり、上訴権回復が認められる。
問題の所在(論点)
控訴審の判決宣告期日において、被告人に対する期日通知を欠いたまま判決を宣告する手続の適否、および当該手続違背が刑訴法362条の「自己又は代人の責に帰することができない事由」に該当するか。
規範
刑訴法273条2項は、第1回公判期日のみならず全ての公判期日において被告人の召喚を求めている。控訴審では被告人の出頭義務は原則としてない(390条)が、被告人は出頭する「権利」を有するため、召喚は被告人に期日を通知し出頭の機会を与える意義を持つ。したがって、判決宣告期日であっても、通知を欠いたまま被告人が出頭せずに行われた審理・宣告手続は同法273条2項に違反する。
重要事実
被告人に対し、控訴審の第1回公判期日は適法に召喚状が送達されたが、被告人は欠席した。その後、裁判所は被告人および弁護人の立ち会いがないまま、第2回公判期日(判決宣告期日)を指定・告知したが、被告人に対しては召喚状の送達も期日の通知も行わなかった。被告人は判決宣告の事実を知らないまま上訴期間を徒過し、後に別件の手続を通じて判決を知ったため、上訴権回復の請求を申し立てた。
事件番号: 昭和37(し)34 / 裁判年月日: 昭和37年10月9日 / 結論: 棄却
一、原決定において、申立人が上告申立の手続を依頼したAは、刑訴三六二条所定の申立人の代人に該当するとしたのは相当である(後記註参照)。 二、刑訴規則第二二二条所定の判決結果の通知がなされなかつたという一事をもつては、上訴権回復請求の理由とならないことは当裁判所の判例(昭和二九年(し)第三号昭和二九年九月二一日第三小法廷…
あてはめ
本件では、判決宣告期日の通知が全くなされておらず、刑訴法273条2項(404条による準用)に違反する。刑事訴訟において上訴期間は判決宣告の日から進行し、かつ控訴審判決の謄本送達は上訴期間の起算点ではないため、期日通知を欠くことは被告人から上訴の機会を実質的に奪う。したがって、通知を欠いた手続違法によって判決宣告の事実を知り得ず、上訴期間を徒過したことは、被告人の責に帰すべからざる事由による妨げといえる。
結論
控訴審の判決宣告期日の通知を欠いた手続は違法であり、これによる上訴期間の徒過については、刑訴法362条に基づき上訴権回復の請求を許容すべきである。
実務上の射程
控訴審における被告人の出頭権の重要性を強調した判例。答案上は、手続的瑕疵(召喚・通知の欠如)と上訴権の回復(362条)の因果関係を論じる際の根拠として活用できる。特に「宣告から期間が進行する」という刑事訴訟の構造上、期日通知が権利救済に不可欠である点を論理の柱とする。
事件番号: 昭和37(し)50 / 裁判年月日: 昭和38年10月31日 / 結論: その他
一 被告人が公判期日に出頭しなければ、判決の宣告ができない事件につき、被告人不出頭のまま判決の宣告をした瑕疵があつても、上訴提起期間は判決宣告の日から進行する。 二 右の場合において、控訴申立書と題する書面に、被告人が判決宣告の翌日判決通知書を受けた旨並びに右判決に不服を申し立てるについては上訴権回復の請求に関する刑訴…
事件番号: 昭和25(し)21 / 裁判年月日: 昭和25年7月13日 / 結論: 棄却
原決定が引用する申立人提出の上訴期間回復申立書には申立人は賍物故買被告事件について、第二審の有罪判決のあつたことは、昭和二四年一二月二六日大阪高等檢察庁檢事から申聞けられた旨の記載があるので原決定が申立人はその時前記第二審判決のあつたことを知つたものと認め同日を以つて申立人又はその代人が上訴の提起期間内に上訴を爲すこと…
事件番号: 昭和54(し)89 / 裁判年月日: 昭和54年9月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所書記官が行う書類の送達手続に対し、独立した不服申立てを認めるか否かは立法政策の問題に帰する。したがって、刑訴法419条が裁判所書記官の処分に対する不服申立てを制限しているとしても、憲法32条に違反するものではない。 第1 事案の概要:抗告人が、裁判所書記官の行う書類の送達手続について不服を申…
事件番号: 昭和32(し)29 / 裁判年月日: 昭和32年7月30日 / 結論: 棄却
第一審の有罪判決に対し被告人弁護人から適式の控訴申立書の提出がなく、ただ控訴申立期間内に控訴審における弁護人選任届が裁判所に提出されただけでは、控訴申立があつたものということができない。