原決定が引用する申立人提出の上訴期間回復申立書には申立人は賍物故買被告事件について、第二審の有罪判決のあつたことは、昭和二四年一二月二六日大阪高等檢察庁檢事から申聞けられた旨の記載があるので原決定が申立人はその時前記第二審判決のあつたことを知つたものと認め同日を以つて申立人又はその代人が上訴の提起期間内に上訴を爲すことのできなかつた事由は止んだものと判斷したのは正當である。してみれば申立人の本件特別抗告の理由とするところは、憲法違反とはいうれども、その實質は舊刑訴法上の問題であつて憲法問題ではないから、刑訴應急措置法第一八條の特別抗告の適法な理由とならない。
上訴權回復請求の事由の止んだ一事例
舊刑訴法387條,舊刑訴法388條
判旨
上訴権回復の請求において、上訴をすることができなかった事由が止んだ日とは、判決の言渡しがあったことを具体的に知った日を指す。また、所在調査により居所が判明しているにもかかわらず公示送達による審理を行ったことは審判手続の法令違反を構成するが、それは非常上告の対象であり、上訴権回復の適否とは別問題である。
問題の所在(論点)
上訴権回復請求において「上訴をすることができなかった事由が止んだ時」をいつと解すべきか。また、不適切な公示送達による審理は上訴権回復の理由となるか。
規範
上訴権回復請求の適格は、自己または代人の責に帰すべからざる事由により上訴期間内に上訴できなかった場合に認められる。この事由が「止んだ日」とは、客観的な障害の解消のみならず、被告人が判決の存在を現実に認識した時点を基準として判断すべきである。
重要事実
被告人は保釈中に制限住居に居住していたが、裁判所は誤った宛先への送達不能を理由に、所在調査で判明した新居所への送達を試みることなく公示送達を決定した。被告人は公判期日を知らぬまま控訴審で有罪判決を受けた。その後、検事から判決の事実を告げられたが、それから上訴提起期間を経過した後に上訴権回復の請求を行った。
事件番号: 昭和44(し)22 / 裁判年月日: 昭和44年10月1日 / 結論: その他
控訴審において被告人に公判期日(判決宣告期日を含む。)の通知をすることなく、被告人が出頭しないまま公判を開廷することは違法である。
あてはめ
被告人は検事から判決の言渡しがあったことを告知されており、その時点で自ら判決の事実を認識したといえる。申立書にもその旨の記載があることから、同日をもって「事由が止んだ」と認めるのが相当である。それ以降に生じた期間の経過は被告人の責任に帰すべきであり、期間経過後の請求は不適法となる。なお、裁判所が居所を把握しながら公示送達を行った点については、審判手続の法令違反に該当するが、これは非常上告等で争うべき事項であって、上訴権回復の期間計算を左右するものではない。
結論
被告人が検事から判決の事実を告げられた日を「事由が止んだ日」とした原決定は正当であり、その日から期間を徒過した本件請求は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法第362条以下の「上訴権回復」の要件である「事由が止んだ日」の認定基準を示す。また、送達の瑕疵がある場合でも、判決の存在を知った後は速やかに法的措置をとるべき義務があることを示唆しており、手続違反があっても直ちに無期限に上訴権が回復されるわけではない点に実務上の注意が必要である。
事件番号: 昭和37(し)34 / 裁判年月日: 昭和37年10月9日 / 結論: 棄却
一、原決定において、申立人が上告申立の手続を依頼したAは、刑訴三六二条所定の申立人の代人に該当するとしたのは相当である(後記註参照)。 二、刑訴規則第二二二条所定の判決結果の通知がなされなかつたという一事をもつては、上訴権回復請求の理由とならないことは当裁判所の判例(昭和二九年(し)第三号昭和二九年九月二一日第三小法廷…
事件番号: 昭和24(つ)96 / 裁判年月日: 昭和25年4月21日 / 結論: 棄却
舊刑訴法第三八七條が代人の過失によつて上訴期間を徒過した場合上訴權回復の請求權なきものとしたのは違憲ではない。
事件番号: 昭和28(し)20 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】上訴権回復の請求が認められるためには、被告人が自ら上訴手続をとり得ない程度の病状等にあることを要し、単なる病状の存在のみでは足りない。 第1 事案の概要:被告人は、上告提起期間内に上告手続をとらなかった。その後、当時の病状により手続が不可能であったとして上訴権回復の請求を申し立てた。原審は、被告人…
事件番号: 昭和31(し)44 / 裁判年月日: 昭和31年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法定の申立期限を経過した後の控訴棄却決定に対する異議申立については、刑訴法362条等の上訴権回復請求の規定が準用される。したがって、期限後に異議を申し立てる場合には、所定の期間内に上訴権回復の請求をすると同時に異議の申立をしなければならない。 第1 事案の概要:大阪高等裁判所は、被告人の横領事件に…