第一審の有罪判決に対し被告人弁護人から適式の控訴申立書の提出がなく、ただ控訴申立期間内に控訴審における弁護人選任届が裁判所に提出されただけでは、控訴申立があつたものということができない。
控訴申立があつたものと認められない一事例。−控訴申立期間内に弁護人選任届のみ提出された場合−
刑訴法372条,刑訴法373条,刑訴法374条
判旨
控訴申立期間内に控訴審における弁護人選任届を裁判所に提出したとしても、適式の控訴申立書の提出がない限り、控訴の申立てがあったとは認められない。
問題の所在(論点)
控訴申立期間内に控訴審の弁護人選任届を提出することが、刑事訴訟法における適法な控訴の申立て(同法372条、374条等)として認められるか。
規範
控訴の申立ては、刑事訴訟法上の法定の方式(控訴申立書の提出)に従ってなされる必要があり、書面の形式的な内容が単なる弁護人の選任を通知するにとどまる場合は、不服申立ての意思表示としての効力を有しない。
重要事実
第一審の有罪判決に対し、被告人の弁護人は控訴申立期間内に控訴審における弁護人選任届を裁判所に提出した。しかし、期間内に適式な控訴申立書が提出されることはなかったため、原決定は控訴の申立てがないものと判断した。
事件番号: 昭和37(し)34 / 裁判年月日: 昭和37年10月9日 / 結論: 棄却
一、原決定において、申立人が上告申立の手続を依頼したAは、刑訴三六二条所定の申立人の代人に該当するとしたのは相当である(後記註参照)。 二、刑訴規則第二二二条所定の判決結果の通知がなされなかつたという一事をもつては、上訴権回復請求の理由とならないことは当裁判所の判例(昭和二九年(し)第三号昭和二九年九月二一日第三小法廷…
あてはめ
刑事訴訟法において控訴は書面によってなされるべきところ、弁護人選任届は特定の弁護士を代理人に選任した事実を証明する書面にすぎない。本件では期間内に選任届のみが提出されており、判決に対する不服を申し立てる意思を明確に示した控訴申立書が存在しない。したがって、手続の明確性を重視する刑事訴訟手続において、選任届の提出をもって控訴申立書の代用とすることはできないと解される。
結論
控訴申立期間内に弁護人選任届のみが提出され、適式の控訴申立書がない場合は、控訴の申立てがあったとはいえない。
実務上の射程
訴訟行為の方式主義に関する判例であり、弁護人の選任と不服申立てという別個の手続的意義を厳格に峻別する。実務上、期間制限のある申立てにおいては書面のタイトルや内容が法定の要件を満たしているかが厳格に問われるため、形式不備の救済可能性を否定する文脈で参照される。
事件番号: 昭和28(し)10 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条の裁判を受ける権利の侵害を主張しても、その実質が単なる訴訟法違反の主張にすぎない場合は、刑訴法405条の特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対し、憲法32条(裁判を受ける権利)の違反を理由として特別抗告を申し立てた事案。しかし、その主張の具体的な内容は、原審の…
事件番号: 昭和30(し)1 / 裁判年月日: 昭和30年10月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の提出最終日を弁護人に通知すべき義務は、当該最終日の指定当時において既に選任されている弁護人に対してのみ認められる。したがって、指定後に選任届が提出された弁護人に対しては、裁判所は改めて最終日の通知を行う必要はない。 第1 事案の概要:被告人は控訴を申し立てたが、裁判所が控訴趣意書の提出…
事件番号: 昭和44(し)22 / 裁判年月日: 昭和44年10月1日 / 結論: その他
控訴審において被告人に公判期日(判決宣告期日を含む。)の通知をすることなく、被告人が出頭しないまま公判を開廷することは違法である。
事件番号: 昭和31(し)49 / 裁判年月日: 昭和32年6月12日 / 結論: 棄却
拘置所長あてに送達された起訴状の謄本が、誤つて同姓同名の他の在監者に交付され、被告人がその交付を受けなかつた場合には、起訴状の謄本の送達がなかつた場合と同様に、公訴の提起はさかのぼつてその効力を失う。