上告理由書提出期間内に上告理由書が提出されていたにもかかわらず、その提出がないと誤認して上告の申立を却下した決定に対する不服の申立は、特別抗告の申立ではなくして再審抗告の申立と解すべきである。
上告理由書提出期間内に上告理由書の提出がないと誤認して上告の申立を却下した決定に対する不服の申立が特別抗告の申立ではなくして再審抗告の申立であるとされた事例
民訴法419条ノ2,民訴法420条1項9号,民訴法429条
判旨
法定期間内に上告理由書が提出されたにもかかわらず、これを看過してなされた上告却下決定は判断遺脱の再審事由(民訴法338条1項9号類推)を構成し、当該再審申立ては決定をした原裁判所の管轄に属する。
問題の所在(論点)
法定期間内に提出された書面を看過してなされた却下決定に対し、いかなる救済手段が認められるか。また、その申立ての法的性質および管轄裁判所はどこか。
規範
裁判所が有効に提出された上告理由書の存在を看過し、理由書不提出を理由として上告却下決定をした場合、その決定には「判決に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱した」という再審事由(現行民事訴訟法338条1項9号類推)が存在すると解される。この場合、当該不服申立ては再審の申立てと解すべきであり、その管轄は不服申立てのある決定をした裁判所に属する(同法340条1項)。
重要事実
申立人は控訴審判決に対し、法定期間内に上告状および上告理由書を提出した。しかし、東京高裁は上告理由書の提出があったことを看過し、理由書の提出がないとして民訴法(旧法)399条1項2号に基づき上告却下決定を行った。申立人はこの決定を違法として取消しを求める申立てを行ったが、東京高裁はこれを特別抗告とみなして最高裁に送付した。
事件番号: 昭和53(ク)371 / 裁判年月日: 昭和54年2月15日 / 結論: その他
控訴状補正命令が受送達者である控訴人に送達されていないにもかかわらず、控訴人本人にその住所において送達された旨の誤つた記載のある送達報告書に基づき高等裁判所裁判長が控訴状却下の命令をしたときは、右控訴人は、控訴状却下命令に対し、民訴法四二九条、四二〇条一項九号の規定により、再審の申立をすることができる。
あてはめ
本件記録によれば、上告理由書は法定期間内に適法に提出されている。それにもかかわらず、職権調査を尽くさずに理由書不提出としてなされた却下決定は、決定の基礎となる重要事項について判断を遺脱したものといえる。したがって、本件申立ては再審事由を具備した再審の申立てと解するのが相当である。再審の申立ては、不服の対象たる決定をした裁判所の専属管轄に属するため、最高裁ではなく東京高裁が審理すべきである。
結論
本件申立ては再審の申立てと解すべきであり、管轄裁判所である東京高等裁判所に移送する。
実務上の射程
裁判所の明らかな看過により不利益を被った当事者の救済として、決定に対する再審(類推適用)を認める実務上の重要判例である。答案上は、裁判所の過誤による手続打切りに対する救済を論じる際、判断遺脱の再審事由を援用し、管轄が原裁判所にあることを指摘する形で活用する。
事件番号: 昭和45(ク)363 / 裁判年月日: 昭和46年7月22日 / 結論: その他
(省略)
事件番号: 昭和35(ヤ)16 / 裁判年月日: 昭和35年7月7日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】法定の期間経過後に提出された上告理由補充書に初めて具体的に記載された事項については、適法な上告理由とはいえず、これに対して判断を示さなくても判断遺脱の再審事由には当たらない。 第1 事案の概要:再審原告は、上告判決に判断遺脱があるとして再審を申し立てた。しかし、当該上告審において期間内に提出された…
事件番号: 昭和45(オ)1222 / 裁判年月日: 昭和46年7月1日 / 結論: 棄却
一、(省略) 二、裁判所が特定の申立についてするいわゆる立件は、裁判所の内部における事務処理上の手続にすぎないものであつて、それがその申立を審理した口頭弁論の終結後になされたときでも、その申立の訴訟法上の効力に影響を及ぼすものではない。
事件番号: 昭和42(ク)270 / 裁判年月日: 昭和44年2月27日 / 結論: その他
上告期間起算日について誤記のある送達報告書に依拠し十分な職権調査を尽くさないでされた高等裁判所の上告却下決定に対しては、上告期間内に上告の提起があつたことを理由として、民訴法四二九条、四二〇条一項九号の規定により、再審の申立をすることができる。