控訴状補正命令が受送達者である控訴人に送達されていないにもかかわらず、控訴人本人にその住所において送達された旨の誤つた記載のある送達報告書に基づき高等裁判所裁判長が控訴状却下の命令をしたときは、右控訴人は、控訴状却下命令に対し、民訴法四二九条、四二〇条一項九号の規定により、再審の申立をすることができる。
受送達者及び送達場所につき誤つた記載のある送達報告書に基づいてされた高等裁判所裁判長の控訴状却下命令に対する不服申立方法
民訴法228条,民訴法370条,民訴法420条1項9号,民訴法429条
判旨
送達報告書の虚偽の記載に基づき有効な送達があったと誤認してなされた控訴状却下命令は、再審事由(民訴法338条1項9号)に準ずる「判断の遺脱」があるものとして再審の対象となり得る。
問題の所在(論点)
送達報告書に虚偽の記載があり、実際には有効な送達が行われていないにもかかわらずなされた控訴状却下命令に対し、どのような救済手段が認められるか。また、その場合の管轄裁判所はどこか。
規範
裁判長による控訴状却下命令は、確定した判決と同様の効力を有するが、その前提となる送達手続に瑕疵があり、有効な送達がないにもかかわらず送達があったものと誤認してなされた場合には、命令に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱したものと解される。この場合、当該命令に対しては、民事訴訟法上の再審の規定を準用または類推して、その取消しを求めることができる。
重要事実
申立人に対する印紙追納の補正命令に関し、郵便集配人は送達報告書に「申立人本人に交付した」と記載したが、実際には申立人の父が経営する喫茶店において、父を本人と誤認して交付したものであった。裁判長は、この誤った報告書に基づき、送達から7日以内に補正がないとして控訴状却下命令を発した。申立人は、有効な送達を受けていないとして、特別抗告の形式で当該命令の取消しを求めた。
事件番号: 昭和61(ク)345 / 裁判年月日: 昭和62年7月2日 / 結論: その他
上告理由書提出期間内に上告理由書が提出されていたにもかかわらず、その提出がないと誤認して上告の申立を却下した決定に対する不服の申立は、特別抗告の申立ではなくして再審抗告の申立と解すべきである。
あてはめ
本件では、郵便局長の書面等により、送達報告書の「本人交付」の記載は誤りであり、実際には父に交付されたことが裏付けられている。したがって、申立人に対する補正命令の効力は生じていない。それにもかかわらず、有効な送達があったことを前提になされた却下命令は、命令の基礎となる事実に重大な誤認があり、実質的に「判断の遺脱」があるといえる。本件申立は実質的に再審申立と解すべきである。
結論
本件申立は却下命令に対する再審申立と解すべきであり、再審の訴えは不服申立てのある裁判をした裁判所の専属管轄に属するため(民訴法340条1項)、管轄裁判所である名古屋高等裁判所に移送する。
実務上の射程
控訴状却下命令のように、対立当事者の関与なく一方的に発せられる命令において、送達の瑕疵という手続的基本原則に反する事態が生じた場合、再審事由を類推して救済を認める法理を示している。答案上は、確定した決定・命令に対する準再審(民訴法349条)の文脈で、判断の遺脱(338条1項9号)の有無を論じる際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和42(ク)270 / 裁判年月日: 昭和44年2月27日 / 結論: その他
上告期間起算日について誤記のある送達報告書に依拠し十分な職権調査を尽くさないでされた高等裁判所の上告却下決定に対しては、上告期間内に上告の提起があつたことを理由として、民訴法四二九条、四二〇条一項九号の規定により、再審の申立をすることができる。
事件番号: 昭和33(ク)211 / 裁判年月日: 昭和33年9月5日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、訴訟法により特別に認められた場合に限られ、憲法違反の主張があっても具体的理由の示唆がない場合は不適法となる。 第1 事案の概要:抗告人は、本件抗告において憲法違反を主張して抗告を申し立てた。しかし、その抗告理由の中では、具体的にどのような事由が…
事件番号: 昭和31(オ)358 / 裁判年月日: 昭和33年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において訴えの取下げがあった場合、その部分に関する第一審判決は当然に失効するため、控訴審は残余の部分についてのみ審理・判断を行えば足りる。 第1 事案の概要:上告会社(被告)に対し、金員支払の請求および土地明渡の請求がなされていた事案。控訴審(原審)において、金員支払請求の全部および土地明渡…
事件番号: 昭和33(オ)448 / 裁判年月日: 昭和33年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原審の証拠取捨や事実認定を非難するにすぎない場合、それは適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が引用する第一審判決の事実認定に不服があるとして上告を申し立てた。具体的には、原審の証拠の取捨選択およびそれに基づく事実認定を非難する内容を上告理由として主張した。 …