上告期間起算日について誤記のある送達報告書に依拠し十分な職権調査を尽くさないでされた高等裁判所の上告却下決定に対しては、上告期間内に上告の提起があつたことを理由として、民訴法四二九条、四二〇条一項九号の規定により、再審の申立をすることができる。
上告期間起算日について誤記のある送達報告書に依拠し十分な職権調査を尽くさないでされた高等裁判所の上告却下決定に対する不服申立方法
民訴法396条,民訴法366条,民訴法429条,民訴法420条1項9号
判旨
送達報告書の誤記を看過し、不変期間内になされた上告を期間経過後として却下した決定には、判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱した再審事由(現行民訴法338条1項9号類推)が認められる。
問題の所在(論点)
送達報告書の誤記により期間内に提起された上告を不適法として却下した決定に対し、判断遺脱を理由とする再審の申立てが認められるか。
規範
裁判所が不変期間の遵守の有無を判断するにあたり、送達報告書に依拠して十分な職権調査を尽くさず、真実は適法な期間内になされた上告等を期間経過後として却下した場合には、判決に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱したものとして、決定に対する再審の申立て(現行民訴法349条、338条1項9号)を認めるべきである。
重要事実
申立人は控訴審判決につき、昭和42年5月3日に正本の送達を受け、同月17日に上告状を提出した。しかし、送達報告書には送達日が同年5月2日と誤記されていたため、原裁判所はこれを信じて上告期間経過後の不適法なものとして上告却下決定をした。申立人はこの決定に対し不服を申し立てたが、原裁判所はこれを特別抗告として扱い、最高裁判所に送付した。
事件番号: 昭和37(ヤ)37 / 裁判年月日: 昭和39年3月24日 / 結論: 破棄自判
適法な期間内に上告理由書の提出があつたにもかかわらず、上告受理通知書の送達日時に誤記のある送達報告書に依拠し、十分な職権調査を尽すことなく、期間徒過の提出と判断して上告却下の判決をした場合は、民訴法第四二〇条第一項第九号の再審理由にあたる。
あてはめ
本件記録上の郵便局長作成の書面等によれば、真実の送達日は5月3日であり、上告状は法定期間内に提出されていた。原裁判所は、誤記のある送達報告書にのみ依拠し、職権調査を尽くさずに却下決定をしており、これは「判決に影響を及ぼすべき重要な事項」である期間遵守の有無について判断を誤り、適法な上告を門前払いした点で判断遺脱に準ずる重大な瑕疵があるといえる。
結論
本件申立ては決定に対する再審の申立てと解すべきであり、再審は不服申立てのある決定をした裁判所の専属管轄に属するため、管轄裁判所である広島高裁岡山支部に移送する。
実務上の射程
期間遵守の有無という訴訟要件の判断に誤りがある場合、形式上は判断を示していても、その前提となる事実誤認が重大であれば338条1項9号の再審事由(判断遺脱)に準じて救済されることを示す。決定に対する再審の管轄(349条、338条)を確認する際にも有用である。
事件番号: 昭和53(ク)371 / 裁判年月日: 昭和54年2月15日 / 結論: その他
控訴状補正命令が受送達者である控訴人に送達されていないにもかかわらず、控訴人本人にその住所において送達された旨の誤つた記載のある送達報告書に基づき高等裁判所裁判長が控訴状却下の命令をしたときは、右控訴人は、控訴状却下命令に対し、民訴法四二九条、四二〇条一項九号の規定により、再審の申立をすることができる。
事件番号: 昭和61(ク)345 / 裁判年月日: 昭和62年7月2日 / 結論: その他
上告理由書提出期間内に上告理由書が提出されていたにもかかわらず、その提出がないと誤認して上告の申立を却下した決定に対する不服の申立は、特別抗告の申立ではなくして再審抗告の申立と解すべきである。
事件番号: 昭和45(ク)220 / 裁判年月日: 昭和45年9月30日 / 結論: その他
当事者の予想しえない郵便遅配のため上告期間経過後に到達した上告の申立につき、高等裁判所が追完の事由の存否の職権調査を尽くさないで上告却下の決定をしたときは、右決定に対し、民訴法四二九条、四二〇条一項九号の規定により、再審の申立をすることができる。